業務分野 | 商標 | Q & A
委任状(POA)についての注意点
会社又は個人が専利(即ち特許・実用新案・意匠を指す)又は商標の出願を代理人に委任するときは、委任状を提出しなければなりません。委任状に関して、台湾で専利又は商標を出願する外国の会社によくある質問をQ&A方式で説明します。
 
1:委任状に決まった書式(フォーマット)がありますか。どこからその関連の書式を取得することができますか。
 
A1:台湾知的財産局のウェブサイトの説明によると、委任状には特に決まった書式はありません。出願人が代理人に委任する場合、提出する委任状には代理の権限及び送達宛先を明確に記載し、出願人及び代理人の双方が署名また押印のいずれかをする必要があります。弊所のウェブサイトに中国語版、英語版、日本語版の専利及び商標の委任状を掲載しておりますので、ご自由にダウンロードしてご利用ください。
 
2:委任状は、公証認証を受ける必要はありますか。また、必ず正本を提出しなければなりませんか。すぐに委任状が提出できない場合、後ほど補正することは可能ですか。
 
A2:台湾知的財産局に委任状を提出する際に、公証認証を受ける必要はありません。また、過去に提出した包括委任状を援用したり、そのコピーを使用することも可能です。すぐに提出できない場合、出願後、主務官庁が定めた期間内に補正することができます。なお、主務官庁は必要と認めるとき(例えば、印影が鮮明でない等)、職権により委任状の正本を提出するよう出願人に要求することがあります。このような状況を避けるためにも、委任状の電子ファイルを電子メールで送信される際には、事前に書類の印影が鮮明であるかを確認しておくことをお勧めします。また、将来的に審査等で必要になったときのために、委任状の正本を郵送されることもお勧めします。
 
3:委任状に押印する印鑑について、何か特別な規定がありますか。
 
A3:委任状に押印された印鑑は、主務官庁から出願案の登録印鑑として扱われるため、将来、同一の出願案について移転、権利設定(例えば、使用権や質権など)の手続きを行う際には、前回主務官庁に登録した同一の印鑑を使用しなければなりません。また、後日、主務官庁が印鑑の判断を行う際に、印影の細部が容易に判別でき、かつ争いが生じることがないように、押印時にはできるだけ、文字と重ならないよう押印することをお勧めします。主務官庁に認められる印鑑、認められない印鑑については、下表の説明をご参照ください。 
 
 
4:出願をする度に必ず新たな委任状を提出しなければなりませんか。委任状に日付を記入する際に、何か留意すべき点はありますか。
 
A4:基本的に、出願人又は会社の代表者が以前包括委任状を提出したことがあり、その後の出願人が同一人である又は会社の代表者に変更がなければ、以前提出した包括委任状を援用して出願することができます。但し、特別な理由(例えば、「包括委任状を発行しない」という内部規則がある)により、包括委任状が作成できず、個別委任状しか提供できない場合は、出願ごとに新たな個別委任状を提出しなければなりません。
 
委任状の日付は、原則として、委任状に実際に署名又は押印した日であり、通常は出願日より前の日付です。出願時に、委任状の作成が間に合わず、後で委任状を補正することを声明した場合は、委任状に記載された日付が出願日より後の日付となることが認められます。 

 

 
 
台湾の商標登録出願及び保護Q&A


台湾の商標登録出願及び保護Q&A


(1)     出願人

誰が商標登録出願できますか。 

 台湾国内外における自然人、法人又はその他の営業主体が商標を使用して自己の営業上の商品又は役務を表示する必要がある場合、その個人、法人又は営業主体の名義で商標登録出願をすることができます。但し、団体商標、団体標章及び証明標章の登録出願の資格については、下記の通り別に規定されています。 

  • 団体商標又は団体標章の出願人は法人格を有する同業組合、協会又はその他の団体に限られる。
  • 証明標章の出願人は他人の商品又は役務を証明する能力を有する法人、団体又は政府機関に限られる。 

 外国人の属する国が、台湾との間で商標の相互保護に関する協定、条約を締結し、又は台湾とともに商標保護に関する国際条約に参加している場合は、商標登録出願ができます。

 

(2)     商標登録の範囲

商標として登録され保護を受けられるものと保護を受けられないものは何ですか。 

 商標法の規定により、商品又は役務の出所を十分指し示すことができ、且つ他人の商品又は役務と区別できる知覚可能な標識は、商標として登録することができます。 

 商標とは、識別力を有するあらゆる標識で、文字、図形、記号、色彩、立体的形状、動き、ホログラム、音声、匂い等、又はこれらを組み合わせたものをいいます。

 

(3)     商標登録主義

登録をせずに商標権を取得することは可能ですか。 

 台湾の商標法の規定により、商標は登録を経なければ商標権を取得することができません。登録されていない商標が、公平交易法の保護対象となるには、著名である必要があります。公平交易法第22条の規定では、事業者による他人の著名な商標を同一又は類似の商品又は役務において、同一又は類似の方法で使用することにより、混同を生じさせる行為が禁じられています。但し、上記規定は、登録済みの商標に対しては適用されません。

 

(4)     登録にかかる時間及び費用

商標登録までには通常どれくらいの時間と費用がかかりますか。どのような場合に、出願してから登録されるまでの時間と費用が増加しますか。商標登録出願する際に、どんな書類を提出しなければなりませんか。 

 商標登録出願から通常89ヶ月ほどで、商標登録査定を受けることができます。一出願一区分の方法で商標登録出願し、且つ当該区分内の指定商品又は指定役務が20項目以内の場合、一般的に順調に登録されるまでにかかる費用は1000米ドル以内(政府料金及び手数料を含む)です。 

 代理人に委任して商標登録出願する場合は、商標出願人が署名した委任状のコピーを提出しなければなりません。一出願多区分の方式で出願する場合、又は商標の審査官から、商品又は役務の名称、又は商標図自体についてオフィスアクションを受けた場合は、商標登録されるまでの時間及び費用が増加する可能性があります。

 

(5)     商品及び役務の分類

どのような分類基準を採用していますか。国際分類の指定商品及び指定役務とどのような違いがありますか。一出願多区分の出願はできますか。費用はどれくらい抑えられますか。 

 台湾の知的財産局(TIPO)は20171月より最新版(第11版)の商品・サービス国際分類表(ニース分類)に準拠しています。ニース分類に記載されている商品又は役務が十分具体的に指定されていれば、大部分の商品又は役務はいずれも台湾において指定して出願することができます。 

 台湾では一出願多区分の出願が認められており、しかも多区分出願は一出願一区分の出願に比べて経済的なメリットが大きいです。出願及び登録の政府料金は、出願件数ではなく、区分数に応じて計算されますが、一出願多区分の出願の手数料は二区分目以降が安く設定されており、しかも商標登録の手数料は出願件数に応じて徴収されます。そのほか、変更、移転、使用許諾や質権設定登記の費用は登録商標毎に政府料金及び手数料が計算されるため、一出願多区分の商標出願が登録査定された後の関連費用も安く抑えられます。

                                                                                                        

(6)     審査手順

商標主務官庁は商標出願の登録の可否についてどのような手順で審査を行い、決定を下しますか。その他の商標との間に潜在的なコンフリクトが存在するかについて審査を行いますか。商標出願人は商標主務官庁が発行した拒絶理由通知書に対して応答することができますか。 

 商標登録出願書類が知的財産局(TIPO)へ提出された後、審査官はまず方式審査を行い、続いて実体審査を行います。審査官は、出願が登録要件を全て満たす場合、登録査定書を発行します。登録要件を満たさない場合、補正通知書を発行し又は先行登録若しくは先願とのコンフリクト等の理由を含む拒絶理由先行通知書を発行してから、拒絶査定を正式に下します。 

 拒絶理由先行通知書が届いた後、台湾国内の出願人の場合は1ヶ月以内に、外国の出願人の場合は2ヶ月以内に意見書を提出しなければなりません。審査官はその意見書に基づき正式に登録査定又は拒絶査定を下します。出願人は拒絶理由先行通知書の応答期間の延長を1回申請することができますが、応答期間の再延長は、正当な理由を提出しない限り認められません。

 

(7)     商標の使用及び登録

商標が登録査定される前に、既に使用していると声明することが要求されますか。商標の使用証拠を提出しなければなりませんか。外国の登録出願をもって優先権を主張することができますか。商標が使用せずに登録された場合、当該登録商標を維持する、又は他人による不使用を理由とした取消の主張に対抗するために、登録商標の使用開始時期について規定がありますか。 

 商標登録には、既に使用していると声明する必要がないため、使用証拠を提出しなくても商標登録を受けることができます。商標が登録された後、商標権者は当該登録商標を継続的且つ適切的に使用しなければなりません。商標権者は登録商標を維持するためにTIPOに対して使用証拠を提出する義務はありませんが、登録されてから3年間継続して使用していない場合、その登録商標は不使用を理由として登録の取消を請求される虞があります。何人も不使用の登録商標に対して取消審判を請求する権利があり、商標権者が商標の使用証拠を提出しなかった場合、当該登録商標は取消されます。 

 台湾と優先権を相互に承認している国において提出された商標出願は、その特定国において最初に出願した日から6ヶ月以内に優先権を主張することができます。

 

8)拒絶査定の救済

出願が拒絶査定された場合、救済手段がありますか。 

 出願人はTIPOが発行した拒絶査定通知書を受け取ってから30日以内に、訴願書を添付して、経済部訴願審議委員会に訴願を提起することができます。出願人は訴願の決定に不服がある場合、さらに知的財産裁判所に行政訴訟を提起することができ、最終的に最高行政裁判所に上告することができます。

 

(9)     第三者による商標登録異議申立

商標登録出願は異議申立のための公告が行われますか。第三者は登録前に出願に対して異議申立をしたり、又は登録査定後にその登録商標に対して取消を請求することができますか。その主な根拠及び手続きは何ですか。ブランドの所有者は、台湾で商標登録を受けていない場合に悪意による先駆け登録出願に対して異議を申し立てることができますか。その異議又は取消に関する手続きにどのくらいの費用がかかりますか。 

 台湾では商標権付与後の登録異議申立制度を採用しています。商標が、登録査定され商標公報(商標掲載公報)に公告された場合、何人も当該商標が公告された日から3ヶ月以内にTIPOに対して異議を申し立てることができます。 

 異議申立人は、異議申立を詳細に裏付ける事実及び理由を明記した異議申立書を提出して、TIPOに対して異議申立をしなければなりません。登録人は当該商標登録が維持されるべき理由を説明した答弁書を提出することができます。双方は互いに意見を充分陳述するまで証拠及び補充理由を提出することができます。その後、TIPOは双方が提出した理由及び証拠に基づき決定を下します。 

 また、この3ヶ月の異議申立期間内に登録された商標に対して異議申立を行わない場合、利害関係者は商標権設定登録日から5年以内に無効審判を請求することができます。異議申立と無効審判請求の事由は不登録事由と類似しており、そのうち主な根拠として先行登録商標、著名商標及び悪意による登録が挙げられます。つまり、ブランドの所有者があらゆる所で同一又は類似の商品又は役務においてその商標を先使用していた場合、たとえ台湾で商標権を取得していなかったり、相当な知名度を確立していなかったとしても、悪意による商標登録を行った商標権者に対して異議申立し又は無効審判を請求することができます。無効審判請求の手続きと異議申立の手続きは類似しています。ただし、無効審判請求に引用される先行登録商標が登録後3年以上経過している場合、無効審判請求人は、無効審判請求前の3年間その商標を指定商品又は指定役務において使用したとする証拠、又は不使用には正当な理由があるという証拠資料を提出しなければなりません。 

 商標異議申立に対する決定が確定した後は、何人も同一の事実について、同一の証拠及び同一の理由をもって、当該商標に対して無効審判を請求することができません。 

 異議申立又は無効審判請求の政府料金は一区分毎にそれぞれ140米ドル及び245米ドルですが、証拠資料のレビュー、異議申立書又は無効審判請求書の作成及び提出、後続の答弁又は意見陳述、補正資料の提出及び報告書類の提供などについて実際にかかった時間に応じて代理人の手数料が加算されることになります。双方ともに異議又は無効審判の過程で答弁及び意見陳述を何度も繰り返し行うことができるため、全ての手続きが終了するまでにかかる費用を正確に見積もることは困難ですが、双方の答弁回数が2回以内の場合、費用はおよそ2200米ドル~4800米ドル(政府料金を含む)となります。

 

(10)商標権の存続期間及び維持

商標登録後、商標権の有効期間はどれくらいありますか。その登録を維持するための条件は何ですか。商標権の有効性を維持するには、当該登録商標の使用が条件として求められますか。求められる場合、どのような使用証拠を提出しなければなりませんか。 

 商標の存続期間は設定登録日から起算して10年ですが、指定期間内に更新料を納付すれば、登録商標の商標権の効力は制限なく維持し続けることができます。更新登録は10年の商標権存続期間満了前6ヶ月以内に、又はその存続期間満了後6ヶ月(猶予期間)以内に申請しなければなりません。登録商標の更新登録を申請するときは、使用証拠を提出する必要はありません。

 

(11)登録の利点

登録の利点は何ですか。 

商標登録は、商標権者に法定排他性を付与するもので、台湾国内のどの地域においても有効です。商標権者は下記の権利を享有します。

  • 登録商標の登録出願時に指定した商品又は役務において専用権を有する。
  • 他人に登録出願時に指定した商品又は役務における登録商標の使用を許諾することができる。
  • 登録商標を売却し、又はそれに質権を(担保として)設定することができる。
  • 混同誤認が生じるのを避けるために、他人が商標を登録商標の指定した商品又は役務において使用することを阻止することができる。
  • 税関に登録商標を侵害する輸出入貨物の差押を請求することができる。
  • 商標権者の同意を得ずに、登録商標を同一又は類似の商品又は役務において使用する侵害者に対して法的措置を講じることができる。 

 換言すると、商標登録は、他人の模倣行為を防ぐとともに、商標権者の市場占有率や利益を保護することを可能にします。

 

(12)ライセンス(使用許諾)

使用許諾登記はその他の商標に対抗することができますか。使用許諾登記を行うメリットは何ですか。登記しなかった場合、何か悪い影響はありますか。 

 はい、対抗できます。一つの商標を複数の被許諾者に使用許諾することができます。 

 登録商標の使用許諾登記の本質は、使用許諾の事実により第三者が損害を被らないようにすることです。商標権者が商標を第三者に移転した場合、未登記の被許諾者はそれにより損害を被る可能性があります。例えば、当該使用許諾が登記されていない場合、第三者は先の使用許諾関係の拘束を受けません。その理由は、被許諾者は本来の商標権者のみに対して権利を主張することができて、第三者に対しては権利を主張することができないためです。

 

(13)移転

何が移転できますか。 

 商標権の移転は、必ず営業や信用とともに移転しなければならないわけではなく、単独で移転することもできるし、商品又は役務の一部のみを分割移転することもできます。商標権の移転は、その他の事業資産とともに移転しなくても効力が発生します。商標権の分割申請は分割移転登記前に完了しなければなりません。

 

(14)移転の書類

移転するときには、どのような書類を提出しなければなりませんか。また、どのような手続きが必要ですか。 

 移転登記の手続きに必要な書類は、譲受人の委任状及び(譲渡人と譲受人の)双方が署名又は捺印した譲渡契約書です。署名又は捺印済みの委任状及び譲渡契約書のコピーで手続きできます。なお、譲渡契約書に使用される署名又は印鑑は、その商標の前回手続きで知的財産局へ提出された様式と異なる場合、別途署名又は印鑑が真実であることを証明する証明書及び代表者の身分証明書(パスポート)のコピーを提出する必要があります。

 

(15)移転の有効性

移転は登記の手続きを経なければ、その有効性が保障されないのですか。 

 TIPOに移転登記手続きすることは義務付けられていませんが、登記することをお勧めします。移転の効力は、双方が譲渡契約書に合意した日又は署名した時から、発生します。

 

(16)担保権

担保権は認められますか。また、どのような手続きが必要ですか。担保権の有効性や強制執行の目的を確保するためには、登記する必要がありますか。 

 商標権者は、商標権に質権を設定することによりその債権者の権益を確保することができます。いかなる質権の設定及び質権の変更又は消滅も、双方の契約関係が成立した時に効力が発生しますが、登記を経ていなければ第三者に対抗することができません。商標権者が複数の債権を担保する場合、債権者の権益を確保するために財産価値により複数の質権を設定することができ、その順位は設定登記順によって決まります。質権者は、商標権者の使用許諾がなければ、当該商標を使用することができません。 

 商標の質権設定登記を申請するときは、下記の資料及び書類を提出しなければなりません。

  • 質権設定の期間。
  • 質権契約書又はその他の証明書類(外国語書面の場合は中国語の訳文を添付する必要がある。関連文書は公証又は認証を受ける必要はない)
  • 委任状(署名付きのコピーのものを添付すればよい)。

 

(17)表示

商標が使用されている又は登録されていることを示すために、どのような文字又は記号が使用できますか。その表示は必ず付さなければなりませんか。その文字や記号を使用する場合と使用しない場合のメリットとリスクは何ですか。 

 TMは未登録の商標であることを意味し、Rは登録済みの商標にしか使用できません。TM又はRを付すことは義務付けられていませんが、それらを付すことをお勧めします。なぜなら、当該表示を付すことにより、消費者に商標として使用していることを容易に知らせることができるからです。

 

(18)商標に係る法執行手続き

前述した異議申立及び無効審判のほかに、商標権者は、権利を守るために、侵害者又は商標を希釈化する者に対して、どのような司法手続き又は行政手続きをとることができますか。専門的な裁判所又はその他の法廷が設置されていますか。刑法に、商標権侵害行為又はそれに類似する犯罪行為に関する規定がありますか。 

 商標権者は侵害の疑いのある者に対して、国境保護措置を講ずることができ、しかも民事又は刑事訴訟を提起することができます。台湾の知的財産裁判所は商標権侵害事件の民事及び刑事の管轄権を有していますが、商標権者は地方裁判所において民事訴訟又は刑事訴訟を提起することもできます。商標法の規定により、商標権者の同意を得ずに同一又は類似の商標を商業目的で使用した場合は、刑事責任を問われます。したがって、商標権侵害行為は刑事訴訟を提起することができる犯罪行為です。

 

19)手続きの形式と時間(流れ)

侵害訴訟の形式は何ですか。 

 台湾の訴訟では証拠開示手続きがないため、原告又は検察官は訴訟を提起する前に、証拠を充分収集しなければなりません。場合によって、法廷での証言が許可され、殆どの場合で、専門家の証人が許可されています。一般的に、侵害訴訟では3名の裁判官により裁判が行われます。知的財産裁判所の審理期間は、民事の侵害訴訟事件の場合は約200日、刑事事件の場合は約100日かかります。 

 刑事訴訟手続きは、通常、原告が警察又は裁判所に告訴をし、或いは警察又は検察官が商標権侵害事実を発見してから、開始されます。その後、警察が証拠調べを行い、被疑者の供述をまとめて供述調書を作成し、事件を検察に送致します。その後、検察官は被疑者を起訴するか否かを決定します。被疑者を起訴することを決定した場合、事件は通常の刑事訴訟手続きに入ります。

 

(20)  立証責任

商標権侵害又は商標の希釈化の立証責任は誰にありますか。 

 民事訴訟では原告が、被告が故意又は過失によって商標権を侵害した可能性が高いことを立証しなければなりません。それに対して、刑事訴訟では検察官が、被告が故意に商標を侵害したことを合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に立証しなければなりません。

 

21)提訴できる資格

誰がどのような条件で商標権侵害の疑いのある違法行為に対して救済措置を求めることができますか。刑事訴訟を提起できる資格があるのは誰ですか。 

 商標権者はあらゆる救済措置を求める権利を持ち、法律の規定により刑事訴訟を提起することができます。専用使用権者はその使用許諾範囲内において、あらゆる救済措置を求めることができ、刑事訴訟を提起することもできます。

 

22)外国における侵害行為

商標の登録国(台湾)以外の地域で発生した侵害行為又は商標の希釈化に対して、権利を主張することができますか。 

 当該侵害被疑商品が外国で製造されたものなのか、販売されたものなのかにかかわらず、台湾で登録されている商標を侵害する商品を輸入する侵害者は、民事及び刑事責任を負わなければなりません。商標権者はその他の国家から輸入された使用許諾を得ていない商品に対して国境保護措置を講じることもできます。

 

23)証拠開示手続き

相手方、第三者又は外国にいる当事者から証拠を取得するために、どのような証拠開示手続き又は措置を講じることができますか。 

 台湾には証拠開示手続き制度がないため、商標権者は、警察に刑事告訴するのが一般的です。警察へ刑事告訴することは警察にとって証拠を収集するのが有利となります。それに、刑事訴訟の原告が商標権者ではなく検察官であるため、商標権者にとっては訴訟費用の節約にもなります。 

 商標権者が何らかの原因で(例えば、故意による侵害の立証が困難である、或いは商標権者が損害賠償を得る目的で)民事訴訟を提起する場合、自ら証拠を収集しなければなりません。効果的な証拠収集方法としては、調査会社に依頼したり、実態調査(due diligence)を行ったり、証拠の公証を行ったり、侵害被疑品のサンプルを購入したりするなどがあります。

 

24)仮処分申立に係る期間

 商標権侵害訴訟において、仮の地位を定める仮処分を申立てた場合、第一審と第二審ではどのくらいの時間がかかりますか。 

 知的財産裁判所の第一審では、仮の地位を定める仮処分を認めるか否かの決定に約6ヶ月かかります(2014年から2016年までで認められた割合は平均約50%)。第二審では、さらに6ヶ月かかます。

 

25)訴訟費用

商標権侵害又は商標の希釈化に対して措置(訴訟の準備、訴訟及び上訴の提起など)を講じる場合、基本的にどれくらいかかりますか。 

 民事訴訟の場合は、訴訟の準備に約5000米ドル~7000米ドルかかる可能性があります。第一審の訴訟費用は約25000米ドル~35000米ドル、第二審の訴訟費用は約20000米ドル~30000米ドルです。 

 現行の判例法の規定によると、敗訴側は裁判費用を負担しなければなりませんが、通常、勝訴側の弁護士費用を負担する必要はありません。

 

26)審級

訴訟にはどういう段階がありますか。 

 訴訟は第一審、第二審及び最高裁判所に分けられます。

 

27)抗弁

商標権侵害、商標の希釈化又は関連するその他の行為で訴えられた場合、どのような抗弁を主張することができますか。 

 下記の抗弁は商標権侵害又は商標の希釈化で訴えられたときに用いることができます。 

善意による先使用の抗弁

 侵害被疑者が当該登録商標の出願日の前に善意により同一又は類似の商標を同一又は類似の商品に使用した場合は、この抗弁を主張することができます。 

フェアユースの抗弁

 侵害被疑者が説明を表示するために商標を使用する場合(例えば、信義則に則って、商品の品質及び性質を表示する)、又は、商品又は役務の機能を発揮させるために必要である場合、この抗弁を主張することができます。 

権利消尽の抗弁

 登録商標が付された商品が、商標権者又はその同意を得た者により台湾国内外の市場において取引され流通した場合、商標権者は当該商品について商標権を主張することができません。但し、商品が市場に流通した後、変質、毀損が発生するのを防ぐため、又はその他の正当な事由がある場合はこの限りではありません。 

 但し、上述した台湾国内の商標権者と外国の商標権者が異なる場合は、現行の判例法の規定により、権利消尽原則の抗弁をすることはできません。

 

28)救済方法

勝訴した当事者は、商標権侵害又は商標の希釈化などの行為に対してどのような救済方法を採ることができますか。どのような刑事上の救済方法がありますか。 

 民事訴訟における商標権者の救済方法は下記の通りです。 

金銭的損害賠償

 商標権者は損害賠償を請求するとき、次に掲げる各項のいずれかを選択し、その損害を計算することができます。

  • 損害を受けた金額及び逸失利益。
  • 権利侵害者が商標権を侵害した行為により得た利益。但し、当該権利侵害者がそのコスト又は必要経費について立証できない場合、当該商品の販売により得た収入の全部を利益額とする。
  • 押収した商標侵害に係る商品の小売単価の1500倍以下の金額。但し、押収した商品が1500個を超える場合は、その総額を賠償額とする。
  • 商標権者が他人に使用を許諾して受け取る使用料(ロイヤリティ)に相当する金額をその損害額とする。

 商標権者は司法機関に対して訴訟を提起することができますが、刑事訴訟中に附帯民事訴訟を提起しない限り、損害賠償を請求することができません。 

差止請求

 裁判所は、侵害であると認める場合、侵害行為の差止を命じる判決を下します。その侵害行為の差止には侵害商品の廃棄が含まれています。

 

29)裁判外紛争解決手続き (ADRAlternative Dispute Resolution)

裁判外紛争解決手続きは利用可能ですか、よく利用されていますか、また強制執行力がありますか。利点とリスクは何ですか。 

仲裁

 仲裁は紛争解決手段の一つですが、商標事件の処理にはあまり利用されていません。その理由は以下の通りです。

  • 司法権の協力なしに、商標権者が侵害及び損害の証拠を取得するのは極めて困難である。
  • 仲裁は刑事訴訟に比べて費用が高額である。 

調停

 双方が合意した場合、裁判所は調停手続きを進めることができ、双方は交渉・和解の条件について話し合うことができます。裁判所は時には調停を利用することがありますが、商標権者と侵害者との間で商標の使用停止及び損害賠償に関して合意に達することは難しいため、ほとんど効果がありません。

 

30)外国の著名商標

外国の著名商標は、台湾国内で使用されていなくても、保護を受けられますか。もし、保護を受けられる場合、当該外国商標は台湾国内において著名商標である必要がありますか。どのような証拠を提出しなければなりませんか。どのような保護を受けることができますか。 

 外国の著名商標は台湾国内においても著名でなければ保護を受けられません。著名であることを証明するために、原則として当該商標が台湾で使用されている関連証拠を提出しなければなりません。但し、当該商標が台湾で使用されていない又は台湾で実際には広く使用されていないとしても、客観的な証拠から、当該商標が外国で広く使用されたことで確立した知名度が台湾にも及んでいることが分かる場合、当該商標は著名であると認められます。したがって、当該商標が使用された地域範囲が台湾と密接な関係があるか否か、例えば、経済、貿易や旅行で頻繁な往来があるか、又は文化・言語が近いか等の要素を考慮して、総合的に判断を下さなければなりません。そのほか、当該商標の商品が、台湾で販売されている新聞雑誌を通じて広く報道されていることや、中国語のインターネット上で広く且つ頻繁に討論されていること等も当該商標の知名度を考慮するときの参考とすることができます。 

 著名商標の使用証拠を提出する場合は、その図の態様及び日付が含まれ、又はその使用された図の態様及び日付を識別できる傍証資料が含まれていなければなりません。当該使用証拠は台湾国内のものに限られません。しかしながら、外国の証拠資料の場合、当該商標の知名度は、台湾国内の関連事業者又は消費者が当該商標を知ることができるかどうかにより判断されます。下記の資料は証拠として使用することができます。

  • 商品・役務の販売レシート(取引回数が少なくとも年に10回)、パンフレット、会社概要及び紹介、マーケティング書類、輸出入書類及び販売統計の明細。
  • 台湾国内外の新聞、雑誌又はテレビ等のマスメディアの広告資料(広告費用を含む)
  • 商品・役務の販売拠点及びその販売ルート又は販売手段(その年間売上高を含む)。
  • 市場における商標の評価、販売額順位、広告額順位又はその営業の関連する業務状況の資料。
  • 商標が使用又は創作された日(例えば、最初に使用された日付)及びその継続使用の証明。
  • 商標の台湾国内外の登録資料。
  • 公信力のある機関が発行した市場調査報告資料。
  • 行政又は司法機関が発行した関連の認定書類(例えば、商標が著名であると認められた裁判所の判決書)。
  • 商標が著名であることを証明できるその他の資料。 

 著名商標が「商標法」及び「公平交易法」の規定により受けられる保護は下記の通りです。 

  • 混同誤認を生じる又は上述した著名商標の識別力もしくは信用を減損する虞がある場合、他人による類似商標の登録又は使用を防止する権利を有する。
  • 公衆に混同を生じさせる又はその識別力もしくは信用を減損する虞がある場合、他人が著名商標の名称又はそれに含まれる文字を、その会社名、商号、標章又はドメイン名、又はその他の他人の営業(又は役務)を表す表徴として使用することを阻止する権利を有する。
商標をデザインする際にはどんな問題点に留意すべきでしょうか?

商標の主なる機能は商品/役務の出所を識別することで、ユニークな商標で関連消費者に「特定商品・役務を表彰するシンボル」と認識させることが可能であるとともに、他人の商品・役務と区別できることが重要です。従って業界で常用されている商品・役務の説明文字や図形を商標として使用しないことを薦めます。
なお自分の商標が他人が先に同一若しくは類似商品・役務に登録・出願している商標と同一若しくは類似を構成する場合は商標不登録事由に該当します。故に出願前、予め代理人に商標調査を依頼し、同一若しくは類似先登録・先願商標の有無を確認することで、先登録・先願商標の存在に妨げられ登録できない事情を防ぐことができます。


 

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