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知的財産重要案例~商標

    知的財産裁判所98年度(訳注、西暦2009年。以下同じ。)刑智上易字第118号 刑事判決

争点:「同一商品・役務」の判断基準

裁判要旨:

 スーパーマーケット或いは百貨店の役務の内容は、あらゆる商品の生産者・販売者に実体的な販路を提供して、同一の場所にその商品を陳列して顧客の異なる需要を満足させることである。故にスーパーマーケットや百貨店では農・畜・水産品、各種食品、飲料、衣服、家具、金物、日用品、薬、化学製品、化粧品、健康娯楽用品や文房具など、ほとんどの生活必需品を取り揃えている。なお、上記場所で販売されている商品に使用されている商標とスーパーマーケットや百貨店に使用されているサービスマークとは必ず同一ということはない。例えば太平洋そごうで販売されている寝具は太平洋そごうのブランドに限らず、国内外各ブランドの寝具である可能性がある。また、カルフールや大潤発(台湾の大手ショッピングモール)で販売されている商品は、必ずしもカルフールや大潤発の商標を用いるというわけではない。

従って社会通念ではスーパーマーケットや百貨店を「多種類商品を購入することができ、かつ、同性質の商品でも異なるブランドが置いてある場所」と認識している。消費者は「スーパーマーケットに入ると、各種ブランドの商品があり、商品の包装標識から商品の生産者を知ることができる」ばかりでなく、「スーパーマーケットは消費者が商品を選択・購入するために、生産者から入荷した商品を陳列する場所に過ぎない」と認識している。千単位で数えられるほど多数のブランドの商品を見るとき、消費者はスーパーマーケットを「消費者が選択するため商品を提供する場所」と認識して、あらゆるブランドの商品を全部スーパーマーケットや百貨店の産品と認識する人はいない。

このため、たとえスーパーマーケットや百貨店の登録商標が他人の商品に使用されている商標と同一若しくは類似を構成していても、両者の間に関連があると誤認する人はいない。即ち社会通念や市場交易状況から見れば、同一・類似商標で表彰されている商品を見て、消費者は当該商品とスーパーマーケットに提供されている商品とが同一若しくは関連のある出所より由来すると誤認することはまずない。

 本件の被告は「誠品家具」という商店名称で家具類商品のみを販売している。一方、告訴人の使用している「誠品」商標は書籍・文房具の分野においては著名商標であり、百貨店でもこの商標を使用している。しかし百貨店の「販売商品の種類の多さ」や「第三者の出店により各種商品を販売する運営方式」により、消費者は百貨店を各類商品の提供場所として認識し、当店の商標と当店に販売されている単一商品の商標とを混同する人は非常に少ないと思われる。告訴人の有する「誠品」商標の指定役務はスーパーマーケット、百貨店で、商品内容は特定されていない。従って係争商標を特定された家具商品の店舗看板に使用した被告の使用行為は前掲の使用事情とは明らかに異なっており、被告が主・客観上商標法第81条に違反する意思があるとは認定できない。

    知的財産裁判所98年度民商上字第18号 民事判決

争点:商標侵害の損害額の計算

裁判要旨:

商標法第61条(訳注:第63条の誤植と思われます)第1項、第2項の規範体系及び修正理由から見れば、商標権侵害の損害賠償責任は損害賠償理論の骨子である「損失補填」から逸脱していない。同条第1項第3号では商標権者の実際損害額に対する挙証責任を免除するため、侵害品の小売価額の倍数で実際の損害額と認定し法定賠償額を定める。一方、立法者も倍数計算で算出された法定賠償額が明らかにバランスを失う場合を考えて、裁判所に同条第2項により賠償を酌量減軽させる権利を付与している。これで商標権者が実際蒙った損害額のとおりに損害賠償が得られ、商標権者の不当利得や侵害者に対する懲罰に化する可能性を避けられる。

商標権侵害の損害賠償範囲を判断する際には、加害者の侵害状況と権利者の損失内容に基づき判断すべきである。従って加害者の経営規模、侵害品の数量、侵害行為の期間、模倣商標と被害商標との同一・類似程度及び正規品の性質、特色、市場における流通状況並びに加害者が商標権者の創作・維持してきた商標権に対する侵害行為の損害範囲及び損害程度をも考慮要素として考え入れなければならない。

    知的財産裁判所98年度民商上易字第1号 民事判決

争点:商標権者の業務上信用・名誉の減損賠償

裁判要旨:

商標法第63条第3項では侵害により業務上信用・名誉が減損された場合、商標権者は合理的金額の追加補償を請求することができるとしている。いわゆる「業務上信用・名誉」はのれん、信頼を指す。同条のいう「業務上信用・名誉の減損」は普通加害者が同一・類似商標の表示されている粗悪な模倣品で消費者を欺瞞して混乱させ、被害者の商品・役務は粗悪品であると誤信させて被害者の業務上信用・名誉を減損させたことを言う。但し加害者の商品が粗悪品でない場合、同一・類似商標を同一・類似商品若しくは役務に使用することで、消費者が混同して当該商品を被害者の商品若しくは被害者の関係企業、加盟企業、使用権許諾関係を有する企業と誤認し、被害者に営業上の損失を与える可能性(同条第1項の損害賠償請求の規定範疇)があっても、必ずしも被害者の商品・役務の業務上信用・名誉を減損させるわけでない。

このため、被害者が商標法第63条第3項に基づき加害者に損害賠償を請求するとき、加害者の商標に対する侵害行為がその業務上信用・名誉を減損させたことに対し挙証しなければならない。さもないとその請求を受け入れることができない。

    知的財産裁判所98年度刑智上易字第40号 刑事判決

争点:商標の善意使用と生産・販売規模に対する制限

裁判要旨:

 商標法第30条第1項では「次に掲げる条件の何れかに該当する場合は、他人の商標権の効力に拘束されないものとする。…(3) 登録商標の出願日以前から善意に同一又は類似商品・役務において登録商標と同一又は類似商標を使用している場合。但しその商標が既に使用されている商品又は役務に限って適用するものとする。登録商標の商標権者は適切な区別標識の付加を要求することができる」とされている。

この部分は修正前商標法の第23条第2項の規定である。商標法修正当時、行政院が立法院に提出した修正草案で同条の但書を「但しその商標が既に使用されている商品又は元生産・販売規模に限って適用するものとする」と改正したが、立法院は二読手続きの際に「元生産・販売規模に限って」部分を削除した。従って同条の「既に使用されている商品又は役務」は元生産・販売規模に対する制限という意味を有しないことは明らかである。

しかし「元生産・販売規模」はいったいどんな意味を有するか。店舗数に対する制限、それとも出店地理区域に対する制限か。言い換えれば、善意の先使用者は商品・役務を提供する店舗の支店を出店することができるか。異なる地理区域で出店することができるか。

 識者の間では、二読手続きの際に元生産・販売規模が削除されたことは店舗数に対する制限を無くしたいだけで、出店地理区域に対する制限を無くしたいわけではないので、新しい店舗が元店舗よりあまりにも遠すぎる場合は善意の合理使用として認めるべきでないという考えがある。しかし立法趣旨から見れば、「元生産・販売規模に限って」という文章が立法段階で意図的に削除された以上、「既に使用されている商品又は役務」という用語の制限範囲を「元生産・販売規模」に拡大するのは解しがたいと本裁判所は考えている。つまり「元生産・販売規模」という用語が立法段階において削除されたことは、生産・販売規模に対し制限するつもりがないと考えられる。従って修正後の商標法の「既に使用されている商品又は役務」という用語は地理区域や生産・販売規模に対する制限の無いことと解すべきである。

「生産・販売規模」は元店舗の増床や、元地理区域に支店を出すことや、異なる地理区域で支店を出すことなどあらゆる状況を含む。立法者は前掲の異なる生産・販売規模形態を予想してから「元生産・販売規模に限って」部分を削除したはずである。従って元店舗の増床に限ったり、元地理区域に支店を出すことに限るなどは明らかに勝手に法に無い制限を増やすことで、法的根拠の無い解釈に属する。

 商標権者の保護例外として善意先使用者に関する商標法規定に適用する者の中では、善意先使用者が不知により商標を出願登録しそこねて第三者に先越された例がかなりある。他人の不知を利用して勝手に商標を登録した者の権利を優先的に保護するようなことをすれば、善意の先使用者は業務を発展することができなくなる。これは人民の労働基本権及び生存権を不当に制限するだけでなく、信義誠実の原則に反する恐れもある。従って同条では地理区域や販売規模に対する明文制限がない場合、罪刑法定主義により同条を拡張解釈して善意の先使用者の権利を過度に制限すべきでもなく、刑法の適用を拡張すべきことでもない。

    知的財産裁判所98年度民商上字第8号 民事判決

争点:商標の使用

裁判要旨:

 商標は自分の生産、製造、加工、選別、卸売若しくは仲買にかかわる商品を表彰して、一般の購買者に当該商標が表示されている商品を認識させ、商標に基づき商品の由来及びその信用・名誉を判別させる機能を有する。上記機能により、商標法の立法目的である「消費者の利益を保証し、市場の公平競争を守りながら工商企業の正常なる発展を促進する」を達成させることが望まれている。

商標の使用目的は商品・役務の提供者が競争市場において自分の商品・役務の由来や品質をアピールし、かつ、他人の提供する同一若しくは類似商品・役務と区別させるためにある。従って一般消費者に異なる商品由来を認識、区別させるという商標の基本目的を達成させるために、どのような構成内容であっても、商標は必ず「関連消費者に商品・役務を表彰する標識と認識されることができ、かつ、商標によって他人の商品・役務と区別することができる」ほどの識別力を有さなければならない。前掲の識別及び市場競争の目的のため、又、第三者の競争市場への参入を妨げないため、商標専用権者は登録後積極(商標法第57条第1項第2号)かつ正確的に自分の登録商標を使用する必要がある。商標法第6条の言う合法使用者は、消費者に認識されやすく、かつ、誤認されないため商標全体を指定商品に使用すると共に、商標が表示されている商品をわが国の市場に流通、輸出、若しくは商標を以って販促行為を行わなければならない。

商標は登録により、他人の同一若しくは類似商品・役務における同一又は類似商標の使用を排除できる権利を取得する。よって権利者は商品を販売するため商品本体若しくはその包装・容器に商標全体を使用する必要があり、勝手に商標を分割、変換若しくは別途商標に記号を付加することができない。商標の不完全利用に至っては商標法第58条の規定に合致し、自分の商品の表彰として用いて、進んで消費者の権益を保障しなければならない。上記要件を満たさない不完全利用は商標法立法目的の達成のため、商標の登録取消事由に該当する可能性があるとされる共に、法定保護範囲も相応的に縮小することになる。

    知的財産裁判所98年度刑智上易字第36号 刑事判決

争点:「二次的意義(訳注:Secondary meaning)」による商標識別力の取得

裁判要旨:

一般消費者は商標を手に持って商品と照合しながら購入するのではなく、商標に対するおぼろげな印象で異なる時間・場所で購入行為を繰り返す。従って消費者にとって、商標のわずかな違いで商品を区別することは非常に難しい。

押収された紳士用皮製品は告訴人の有する「BURBERRY」商標ではなく自社の有する登録商標「ZODENCE」を使用しており、関連消費者に告訴人の商品と混同誤認させる可能性がないと本件の被告は主張した。しかし争点となった商標1のチェック模様は前述の通りに「二次的意義」により識別力を取得し、告訴人の長時間にわたる使用により、商品の交易上における識別標識になっている。関連消費者はその特定の色取りや縞模様の設計に基づき、告訴人の産品であることを認識することができる。

告訴人の生産する紳士用財布の外側は無地で、裏地若しくは仕切りは争点となった商標のチェック模様を大面積に使用している(原審の資料に添付された告訴人が公判期日において提出した当社の生産した革製品の写真を参照)。一方、押収された証拠のシリアルNo.1から9までの革製品を見ると、いずれも黒地の外観で、裏地若しくは仕切りに争点となる商標と類似するチェック模様が大面積に施されている。全体的構図意匠は明らかに告訴人の紳士用財布シリーズと類似していて、関連消費者が商品を購入するときに、押収された革製品を告訴人の会社の製品若しくは告訴人の会社と関係があると認識することになる。

押収された革製品の外観における「ZODENCE」標識に至っては、革製品の全体的外観を見ると、標識部分の占める面積がかなり小さい上、裏地と同じ色取りの縞模様で囲まれている(捜査資料第77ページから第83ページ及び第244ページを参照)。関連消費者が商品を購入するときには、明らかにこのような些細な差異で商品を区別することができない。従って押収された革製品は関連消費者に混同誤認させる虞がないという被告の弁解は取るに値しない。

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