中国 改正『オリンピック
標識保護条例』、2018年7月31日より施行
【出典:中国政府網】
オリンピック標識の保護は、「オリンピック憲章」が要求するオリンピック開催国の義務であり、オリンピック競技大会招致報告や開催都市契約などの関連文書の重要な部分でもある。中国は、2008年北京オリンピックの開催にあたり、2002年に『オリンピック標識保護条例』(以下、『条例』という)を制定し実施した。2022年北京冬季オリンピックの招致成功に伴い、現行の条例は、もはや2022年北京冬季オリンピックの開催準備要件を満たすことができなくなり、オリンピックの標識の範囲、確認と保護などの関連規定について改正する必要が出てきた。
一、範囲の調整
『条例』では、オリンピック標識及び権利者の範囲について調整を行い、現行条例に規定された2008年北京オリンピック関連の標識を、中国国内のオリンピック競技大会の招致、開催のための関連標識にまで拡大し、権利者を中国国内のオリンピック競技大会の招致、組織機構にまで拡大した。同時に、オリンピック競技大会、パラリンピック競技大会ともに等しく保護するという理念に基づき、パラリンピック競技大会の関連標識にまで保護を拡大し、パラリンピック競技大会の関連標識の保護については、本条例を参照し執行することを規定した。
二、使用許諾の調整
権利者による権利行使と保護を促進するため、現行の条例に規定されたオリンピック標識権利者によるオリンピック標識及びその使用許諾契約の国務院工商行政管理部門への届出や、公告手続きを、改正『条例』では、権利者はオリンピック標識を国務院知識産権主管部門に提出し、当部門がこれを公告し、商業目的のためにオリンピック標識を使用する場合は、権利者と使用許諾契約を結ばなければならず、権利者は許諾契約書において、使用を許諾するオリンピック標識の種類、被許諾者、使用許諾に係る商品またはサービス項目、使用期間、使用地域の範囲などの情報を速やかに開示しなければならないとの規定に改めた。
三、有効期間の調整
オリンピック標識の範囲を、中国国内のオリンピック競技大会招致、開催の関連標識に拡大した後、時間の経過で状況が変化し、市場価値を失ったオリンピック標識が蓄積されて、後続の商標出願の妨げとなることを避けるために、『条例』では、オリンピック標識の有効期間と更新手続きについて、オリンピック標識の有効期間を10年とし、期間満了時に更新できるとの規定を新設した。このような規定であれば、オリンピック標識の保護が持続可能となるだけでなく、任意に撤退することもできる。
四、保護措置
オリンピック標識の保護を強化するために、『条例』では下記のことを規定した。
1.オリンピック標識専有権に対する侵害行為を、類似標識の使用にまで拡大する。許諾を得ずに、商業目的のためにオリンピック標識を無断で使用しまたは人に誤認を生じさせるに足る類似標識を使用した場合は、オリンピック標識専有権の侵害となる。
2.行政の処罰力を強化し、オリンピック標識専有権の侵害行為に対する罰金額を引き上げる。
3.ステルスマーケティングに対して規制を行う。オリンピックに関連する要素を利用した活動が、オリンピック標識権利者との間に後援またはその他の支援関係があると人に誤認を生じさせるに足るのもので、不正競争行為を構成する場合は、不正競争防止法により処理する。
中華人民共和国国務院令第699号により、改正後の
『オリンピック標識保護条例』は2018年7月31日より施行する。改正後の
条文は以下の通りである。
第1条 オリンピック標識の保護を強化し、オリンピック標識権利者の合法的権益を保障し、オリンピック・ムーブメントの発展を促進するために、本条例を制定する。
第2条 本条例にいうオリンピック標識とは、次のものをいう。
(一)国際オリンピック委員会のオリンピック五輪マーク、オリンピック旗、オリンピックモットー、オリンピック・エンブレム、オリンピック賛歌。
(二)オリンピック、オリンピア、オリンピック競技大会及びその略称などの固有名称。
(三)中国オリンピック委員会の名称、エンブレム、標識。
(四)中国国内のオリンピック競技大会を招致申請する機構の名称、エンブレム、標識。
(五)中国国内で開催されるオリンピック競技大会の名称及びその略称、マスコット、賛歌、トーチのデザイン、スローガン、「開催都市の名称+開催年」などの標識、及びその組織機構の名称、エンブレム。
(六)『オリンピック憲章』と関連のオリンピック競技大会開催都市契約に定めたその他の中国国内で開催するオリンピック競技大会に関連する標識。
第3条 本条例にいうオリンピック標識権利者とは、国際オリンピック委員会、中国オリンピック委員会と中国国内のオリンピック競技大会を招致申請する機構、中国国内でオリンピック競技大会を開催する組織機構をいう。
国際オリンピック委員会、中国オリンピック委員会と中国国内のオリンピック競技大会を招致申請する機構、中国国内でオリンピック競技大会を開催する組織機構との間の権利分割は、『オリンピック憲章』及びオリンピック競技大会開催都市契約に従って決定する。
第4条 オリンピック標識権利者は、本条例によりオリンピック標識について専有権を有する。
何人も、オリンピック標識権利者の許諾を得ずに、商業目的のためにオリンピック標識を使用してはならない。
第5条 本条例にいう商業目的のための使用とは、営利を目的として、以下の方法でオリンピック標識を使用することをいう。
(一)オリンピック標識を商品、商品の包装または容器並びに商品の取引文書に使用すること。
(二)オリンピック標識をサービス項目に使用すること。
(三)オリンピック標識を広告宣伝、商業展示、営業的な上演及びその他の商業活動に使用すること。
(四)オリンピック標識を付した商品を販売、輸入、輸出すること。
(五)オリンピック標識を製造または販売すること。
(六)営利目的でオリンピック標識を利用するその他の行為。
第6条 本条例の第5条の規定を除く、オリンピック・ムーブメントに関連した要素を利用した活動が、オリンピック標識権利者との間に後援またはその他支援関係があると人に誤認を生じさせるに足るもので、不正競争行為を構成する場合は、『中華人民共和国不正競争防止法』により処理する。
第7条 県級以上の地方市場監督管理部門は、本条例の規定により、その行政区域内のオリンピック標識保護業務に責任を負う。
第8条 オリンピック標識権利者は、オリンピック標識を国務院知的財産権主管部門に提出し、国務院知的財産権主管部門がこれを公告する。
第9条 オリンピック標識の有効期間は、公告の日から起算して10年とする。
オリンピック標識権利者は、有効期間満了前12ヶ月以内に更新手続きを行うことができる。有効期間は1回の更新につき10年延長するものとし、当該オリンピック標識の前回の有効期間満了日の翌日から起算する。国務部知的財産権主管部門は、オリンピック標識の更新について公告しなければならない。
第10条 オリンピック標識権利者の許諾を得て、商業目的のためオリンピック標識を使用する場合、オリンピック権利者と使用許諾契約を結ばなければならない。オリンピック標識権利者は、使用を許諾するオリンピック標識の種類、被許諾者、使用許諾に係る商品またはサービス項目、使用期間、使用地域の範囲などの情報を速やかに開示しなければならない。
被許諾者は、使用許諾契約で約定したオリンピック標識の種類、使用許諾に係る商品またはサービス項目、使用期間、使用地域の範囲内において、オリンピック標識を使用しなければならない。
第11条 本条例の施行前に、既に法律によりオリンピック標識を使用している場合は、もとの範囲内において引き続き使用することができる。
第12条 オリンピック標識権利者の許諾を得ずに、無断で商業目的のために無断でオリンピック標識を使用し、または人に誤認を生じさせるに足る類似標識を使用し、オリンピック標識専有権を侵害して、紛争が生じた場合、当事者が協議を行って解決する。協議をせず、または協議が不調となった場合、オリンピック標識権利者または利害関係者は、人民法院に訴訟を提起することができ、また市場監督管理部門に処理を請求することもできる。市場監督管理部門が処理するにあたり、侵害行為にあたると認定した場合、直ちに侵害行為の差し止めを命じ、侵害商品及び侵害商品を製造するための器具または商業目的のために無断でオリンピック標識を製造するための器具を没収し廃棄する。違法所得が5万元以上の場合、違法所得の5倍以下の罰金を併科することができ、違法所得がない場合または違法所得が5万元未満の場合、25万元以下の罰金を併科することができる。当事者は、処理の決定に不服がある場合、『中華人民共和国行政復議法(行政不服審査法)』に基づき、行政復議を請求することができ、また直接『中華人民共和国行政訴訟法』により、人民法院に訴訟を提起することもできる。処理を行った市場監督管理部門は、当事者の請求に応じて、オリンピック標識専有権侵害の賠償額について調停を行うことができる。調停が不成立となった場合、当事者は、『中華人民共和国民事訴訟法』により、人民法院に訴訟を提起することができる。
オリンピック標識を利用して詐欺などの活動を行い、犯罪を構成する場合は、法律によりその刑事責任を追及する。
第13条 オリンピック標識専有権を侵害する行為に対して、市場監督管理部門は法律により調査し処理する権限を有する。
市場監督管理部門は、既に取得した違法が疑われる証拠或いは告発に基づいて、オリンピック標識専用権の侵害が疑われる行為を調査し処理する際、以下の職権を行使することができる。
(一)オリンピック標識専有権の侵害に関する状況を調査するために、関係当事者に尋問すること。
(二)侵害活動と関連のある契約書、インボイス、帳簿及びその他の関連資料を閲覧し、複製すること。
(三)当事者のオリンピック標識専有権を侵害した疑いのある活動場所に対して現場検証を実施すること。
(四)侵害活動と関連のある物品を検査すること。オリンピック標識専有権の侵害を証明する証拠となる物品については、封印または差押をする。
市場監督管理部門が法律により前項に定める職権を行使するとき、当事者は協力、連携しなければならず、拒否、妨害をしてはならない。
第14条 輸出入貨物においてオリンピック標識専有権の侵害が疑われる場合、税関は、『中華人民共和国税関法』と『中華人民共和国知的財産権税関保護条例』に定められた権限及び手続きを参照して調査し処理する。
第15条 オリンピック標識専有権侵害の賠償額は、権利者が侵害行為を制止するために支払った合理的な支出を含む、侵害行為で被った損失または侵害者が侵害により得た利益に基づいて確定する。被侵害者の損失または侵害者の得た利益を確定するのが困難な場合、当該オリンピック標識の使用許諾料を参照して合理的に確定する。
オリンピック標識専有権を侵害する商品であることを知らずに販売し、当該商品が、自ら合法的に入手したことを証明し且つ供給者を説明できる場合、賠償責任を負わない。
第16条 オリンピック標識は、本条例により保護を受けるほか、『中華人民共和国著作権法』、『中華人民共和国商標法』、『中華人民共和国専利法』、『特殊標識管理条例』などの法律、行政法規の規定により保護を受けることもできる。
第17条 パラリンピック競技大会に関する標識の保護については、本条例を参照して執行する。
第18条 本条例は、2018年7月31日より施行する。
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