知的財産裁判所 台湾のRowanaとドイツのRimowaの商標は類似するとの判決
当事務所(連邦)の代理するドイツの有名スーツケースブランド「Rimowa」は、台湾メーカーが「Rowana」を商標としてスーツケースを販売していたことを知り、消費者に混同誤認を生じさせる恐れがあると判断して、民事訴訟を提起した【事件番号:103(2014)年度民商訴字第40号】。知的財産裁判所は2015年8月2日に台湾メーカー敗訴の判決を下し、ドイツメーカーへ335万元余りの賠償金を支払うことを命じた。全案件は上訴することができる。
原告と被告のそれぞれの登録商標は下表のとおりである。
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原告(ドイツRimowa)
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被告(台湾Rowana)
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商標図
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登録番号
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第446263号
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01621829(商標異議申立審理中)
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出願日
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1988.8.5
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2013.7.31
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登録日
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1989.6.16
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2014.1.16
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指定商品
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各種アタッシュケース、スーツケース、メイクボックス、ブリーフケース
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かばん、リュックサック、革スーツケース、アタッシュケース、スーツケース、旅行用衣類収納バッグ、機内持ち込み用スーツケース、ボストンバッグ、ブリーフケース、トランク、登山用ザック、手提げバッグ、メイクボックス、かばんのショルダーストラップ、キャスター付きショッピングバッグ、スポーツバッグ、ベビー用品収納バッグ、ペット用品バッグ、ヨガリュック、キャンバスリュック。
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商標図
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登録番号
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第442894号
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01563171(取消審判審理中)
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出願日
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1988.11.26
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2012.7.6
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登録日
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1989.5.16
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2013.2.1
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指定商品
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撮影機材かばん
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かばん、リュックサック、革スーツケース、アタッシュケース、スーツケース、旅行用衣類収納バッグ、機内持ち込み用スーツケース、ボストンバッグ、ブリーフケース、トランク、登山用ザック、手提げバッグ、メイクボックス、かばんのショルダーストラップ、キャスター付きショッピングバッグ、スポーツバッグ、ベビー用品収納バッグ、ペット用品バッグ、ヨガリュック、キャンバスリュック。
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商標図
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登録番号
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01608889(商標異義申立審理中)
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出願日
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2013.4.30
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登録日
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2013.11.16
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指定商品
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かばん、リュックサック、革スーツケース、アタッシュケース、スーツケース、旅行用衣類収納バッグ、機内持ち込み用スーツケース、ボストンバッグ、ブリーフケース、トランク、登山用ザック、手提げバッグ、メイクボックス、かばんのショルダーストラップ、キャスター付きショッピングバッグ、スポーツバッグ、ベビー用品収納バッグ、ペット用品バッグ、ヨガリュック、キャンバスリュック。
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一、原告の主張
(一)原告の商標は著名商標
原告が登録した2件の「Rimowa」商標は、当初の代表者のフルネームの最初の2文字の組み合わせからなる文字商標で、1937年に初めてアルミ製のスーツケースを売り出し、現在世界中で販売されており、1931年からドイツ、アメリカ、WIPO等の地区で登録されている。2010年から台湾で巨額の宣伝費用を投じて販売が開始され、現在、台湾に14か所の販売拠点があり、すでに著名商標となっている。インターネットの検索エンジンの結果でも全て係争商標が表示される。
(二)被告の商標の実際の使用様態は登録と異なる
被告が登録した商標は蝶結びの図形と、中国語の「諾瓦納」の文字を有するが、実際の使用時には意図的にこれらを除去した上で楕円形の外枠を加え、原告の商標と極めて類似した意味や印象を持たせている(実際の使用様態については下表のとおり)。これは、商標権の適切な行使ではなく、商標登録取消事由に該当するだけでなく、被告の消費者に混同誤認を生じさせようという意図も表している。
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原告(ドイツRimowa)
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被告(台湾Rowana)
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実際の使用様態
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(三)両者の間に関連企業関係、授権関係、加盟関係が存在すると消費者に誤認を生じさせる
被告は、原告の商標とかなり類似した図形を、原告の商品と同一種類の旅行かばんなどの商品に使用しており、消費者にとって、両者の間に関連企業関係、授権関係、加盟又はその他の類似した関係が存在するとの混同誤認を極めて生じやすい。
(四)消費者に既に混同誤認を生じさせ信用に影響を与えているため、2,500万元の損害賠償金を請求
さらに、被告の商品の販売ルートはテレビショッピングチャンネルであり、消費者が被告の商品を原告のものと誤認し、原告に対しショッピングチャンネルの広告内容に基づいた割引を求める電話を原告は何度も受取っている。被告のこのような原告の信用に乗っかり、悪意をもって便乗するという不正競争行為は、既に原告の商標権を侵害している。原告は警告書を送付するとともに知的財産局に被告の商標の登録廃止を請求したが、被告は、インターネット、テレビメディアを通じて販売し幅広く非常に深く影響を与えており、消費者の混同誤認の状況は深刻であるため、被告の各種類の販売総額35,550元に1,500倍を乗じて計算し、最終的に2,500万元を請求する。
二、被告の主張
(一)両者の商標図は類似していない
被告の商標は飼っていたアロワナ(Arowanafish)から着想を得たもので、原告の商標を剽窃したものではない。台湾人の英語レベルによれば、二つの商標は読み方が異なるため混同誤認の虞は生じない。被告は商標の字体を変更しておらず、単に識別力のない外枠を加えたのみであり、これは業界で習慣になっている表示方法に該当する。しかも、簡単な線と単純な幾何学的図形には識別力がないため、原告は専用を主張することができず、被告の商標が枠を加えたことで原告の商標と類似するということにならない。
(二)原告の商標は著名商標ではない
原告が提出した証拠資料は内容が重複しており、市場の評価及び販売ランキングも多くなく、公信力のある機関が発行した証明書や市場調査報告もない。
(三)両者の商標は各々強烈な識別力を有しており、商標の信用に対しマイナスな連想を生じない
被告は商標法に基づき商標専用権を取得するとともに、知的財産局の登録査定決定の信頼に基づき商標を使用している。枠の追加は、商標の主要部分の変更ではなく、依然として同一性を有しており、原告の商標を模倣する意図はない。スーツケース商品上に金属製の楕円形プレートで商標を表示することはメーカーの慣用の方法であり、原告には被告に対し使用差し止めを請求する権利はない。
(四)原告が主張する損害賠償金の計算方法は高すぎる
原告は、被告が販売する15項目の商品の総額に1,500倍を乗じて賠償金額を計算しており、小売単価の22,500倍で計算した賠償金の最高額と同じである。そうすると、原告が差押えた商品の数量が1,500件以上ではなくても全ての商品を1,500倍で計算できることになり、これは商標法の規定に違反しており、原告には不当利得の疑いがある。景品、組み合わせ商品、重複的商品は排除すべきであり、かつ、定価ではなく実際の販売価格での計算が合理的である。
三、知的財産裁判所の判決:
(一)係争商標は著名商標である
原告は台湾に旗艦店など14か所もの販売拠点を構え、2013年には台湾記念版機内持ち込み用スーツケースを発売し、多くの著名人に愛され且つ宣伝されており、また、係争商標の販売には巨額の広告費用が投じられ、新聞や雑誌、インターネットなど多くのメディアでも報じられた。台湾での売上高は急速に成長し、係争商標は登録出願前に既に著名な商標となっている。
(二)被告の商標が枠を加えて使用したことは原告の商標権を侵害している
1.被告の商標図に枠を加えた使用は、デザイン構想がほぼ同じである。客観的に消費者に両者の商標の商品は出所が同一の系列商品である、或いは、異なるものの関連のある出所であると誤認させるに足るものであるため、類似に該当する。
2.被告の商標の、腕時計を指定商品としているものについては、商品の類似程度が低いため、混同誤認の虞はない。ただし、被告の商標の腕時計以外のその他の、原告と同一又は類似する指定商品は、消費者に混同誤認を生じさせる可能性があるため、商標権侵害に該当する。
(三)原告は被告に対し侵害の差止め及び排除を請求できる
被告が原告の係争商標と類似した枠の付加された商標図を腕時計以外の商品に使用することは、関連消費者に混同誤認を生じさせる虞があり、原告の商標権を侵害し、且つ原告が警告書で使用の差し止めを請求した後も依然として継続して使用した。したがって、腕時計以外の商品について、原告は侵害の差止め及び排除を請求することができる。
(四)損害賠償金額の計算
原告は、原告が被った損害の範囲に応じて推算した法定損害賠償を主張しており、法的根拠がある。被告の関連行為と商品の具体的は販売ルートなど全ての情状を斟酌し、腕時計以外の商品販売額に100倍を乗じて計算した金額を損害賠償とするのが適当である。 |