米国最高裁判所判決:
商標の先使用は事実問題で陪審団が判断すべき
一、判決の概要(Hana Financial, Inc. v. Hana Bank, Supreme Court No. 13–1211, January 21, 2015)
先使用の商標と後登録の商標の提供する役務の出所が同一であるとの商業的印象を消費者に与えるか否かは、法律上の問題ではなく事実上の問題に属すため、陪審団が認定すべきである。
判決の全文については下記ページをご参照ください。
http://www.americanbar.org/publications/preview_home/13-1211.html
二、事実
(一)係争商標
1. 名称:Hana Financial(文字+図形商標)
2. 分類:第36類(金融サービス:ファイナンシャルサービス、担保貸付、ファイナンシャルリース、国際貿易融資、不動産融資、投資顧問サービス等)
3. 出願のベース:実際の使用(Actual Use)。使用開始日:1994年8月15日。商業的使用開始日:1995年4月1日。
4. 出願番号:74720201
5. 出願日:1995年8月25日
6. 公告日:1996年4月23日
7. 登録番号:1987227
8. 登録日:1996年7月16日
9. 出願人/所有権者:Hana Financial, Inc.
(二)原告の主張
原告のHana Financial, Inc.は1995年から今日まで「Hana Financial」商標を使用しているが、被告のHana Bankは2002年から「Hana Bank」商標を使用し始めた。したがって、原告の「Hana Financial」商標の先使用日は「Hana Bank」商標の使用日よりもかなり早く、原告が優先的地位を享受すべきであり、被告は「Hana」が含まれる商標を継続して使用してはならない。
(三)被告の主張
被告Hana Bankの商標は以下のとおり。米国における最先の使用日は1994年7月13日。
商標図
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HANA BANK
(文字商標)
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分類
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36
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出願日
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2001年2月27日
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出願番号
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76216452
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76216454
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76216453
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出願人
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Hana Bank Co. (Korea)
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(三)カルフォルニア州裁判所の判決
カルフォルニア州裁判所は、商標において先登録と先使用のどちらが優先的地位を得られるかは、この二つの商標が、その提供する役務の出所が同一であるとの商業的印象を消費者に与えるか否かを考慮すべきであり、この問題は「法律的問題」ではなく「事実的問題」に属すため、裁判官ではなく陪審団が認定すべきとした。
調査の結果、陪審団は、「被告Hana Bankの「Hana Bank」商標の先使用日は、1994年7月13日に遡ることができ、原告の商業的使用開始日である1995年4月1日よりも前である。原告の商標のほうが登録は先であるが、使用は被告の商標のほうが先である。したがって、被告は原告の商標権を侵害していない。原告の主張する「権利侵害」の訴えを棄却する。」とした。
(四)第九巡回区控訴裁判所判決
原告は陪審団が判断すべきではないと考え控訴したが、第九巡回区控訴裁判所は、商標使用は事実的問題に属すため、陪審団が判断すべきとのカルフォルニア州裁判所の見解を支持した。
(五)最高裁判所の判決
最高裁判所は、2015年1月21日、タッキングは一般消費者の視点から同一か否かを判断するもので、事実的問題に属すものであり、したがって、タッキングを陪審団が判断するのは妥当であるとした第九巡回区控訴裁判所の見解を支持するとの判決を下した。
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