中国が特許案件数で2011年度世界一に(2)
また、中国の外国への発明特許出願数も大幅に増加した。2007年から2008年にかけて、中国は米国、ヨーロッパ、および日本への特許出願数が、それぞれ14.1%,33.5%、および15.9%も増加し、該三国における出願数平均増加率よりも、はるかに高い値を示した。
また、特許出願の分野からみると、近年、中国のコンピューター、電話、およびデジタルコミュニケーションシステムなど、ハイテク分野で革新的に進歩した。
1998年から2008年の11年間で、中国はコンピューター(デジタル)分野の特許出願増加率が48.6倍にもなった。目下のところ、中国は実用新案出願が2009年の出願数の半分を占める状況だが、中国の発明特許の出願とその査定比率から見れば、中国の特許の品質が向上していることが分かる。
分野
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全世界特許出願数
(万件)
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全世界増加率
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中国特許出願数
(万件)
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全世界に占める比率
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全世界でのランク
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情報テクノロジー
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61.0938
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28%
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4.2766
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7%
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5
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電機設備、電機工程
電機エネルギー
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58.523
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13%
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4.6818
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8%
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4
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分析、計測、コントロール技術
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55.6865
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20%
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3.3399
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6%
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5
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通信
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54.1788
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12%
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4.6761
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9%
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5
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音楽、映像技術
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47.8231
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28%
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3.8258
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8%
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4
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消費商品および設備
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44.1094
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12%
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2.2055
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5%
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6
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化学エンジニア
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24.5589
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-7%
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3.1927
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13%
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2
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農産品、食品加工機械および設備
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10.9976
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12%
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5499
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5%
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7
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表2:2000年から2004年に至るまでの中国のハイテク分野における特許出願数および世界ランキング
中国の経済発展の重点が、農業、工業から革新型の業種に徐々に移りつつあり、中国の特許は、技術分野ですでに他の主な特許強国と肩を並べるようになった。表2から分かるように、中国は化学エンジニアの分野で発明特許出願数が、米国に続いて第二位となった。また、中国は、多くの分野の特許出願数が世界で第4、5位になっており、ヨーロッパや韓国と殆ど差がない。
中国特許出願数の著しい増加やその革新力増強の原因について探ってみると、中国は2006年より明らかに革新型国家を建立するという目標を掲げ、2008年に《國家知識産權戰略綱要(ガイド)》を発布した後も引き続き多項に渡り自主的革新を奨励する措置をとってきた。
また、中国政府は研究開発費を大幅に上げ、2020年にはGDP比で2.5%に達する予定であり、同様に中国の経済発展企画は、GDPの年度増幅率を2010年以前は7.5%、2020年までは7%以上を維持する予定であり、今後数年は、中国の研究開発への投資も大幅に増加し、これによって革新を奨励する動きが益々活発になると予想される。
第三の原因として、中国は一連の財政政策を開始させ、企業に研究開発力をつけ、自主的革新を強化するよう奨励したことが挙げられる。中国の知識産権局は2006年に《專利費用減緩辦法》を公布し、特許出願人および特許権利人が特許費用を支払うのが困難な場合、国家知識産権局に費用を低減するよう請求することができるとしている。2009年に中国財政部が公布した《資助向國外申請專利專項資金管理暫行辦法》には、中央政府により設立された一億元の専門資金は、海外に特許出願する出願人の資金を援助するために使用されるとしている。
2008年、中国の科学技術部(いわゆる科学庁)は、財政部と税務総局の連合で公布した《高新技術企業認定管理辦法》において、基準を満たすハイテク企業は、税金徴収の優待政策を享受する申請ができると規定している。そのうち、一定の数の核心的な自主的知識産権を有することが、ハイテク企業として認定される基準の一つとされている。
第4の原因は、物質面での奨励であり、中国各省や市レベルの政府は常々出願人に資金援助を提供する形で特許出願を奨励していることである。
非常に興味深いことに、米国のサイト、LiveScience.comは、2010年11月11日に、上記のトムソン・ロイターグループの見解と異なる一文を発表している。該記事によると、革新的分野において、中国はアメリカのライバルであると考えるのは、「自己の幻想」にすぎず、実際のところ、ここ数十年全速力で走ってきたものの、今は(成長は)元の正常な速度に戻っており、米国は自身の競争力について心配する必要はないとしている。
中国では、研究論文の数が増加したものの、その品質は依然として低いという問題を解決すべく奮闘中である。5千部の中国語季刊誌のうち、その三分の一は、研究生と教授が学業または職位の進級のためだけに論文を発表している。ある心臓病学者は、85%から90%の中国語の発行誌は、「情報汚染」であるとし、また、論文の独創性(つまりオリジナルであるか)も疑わしいとした。
しかしこのような状況でも、中国のハイテク分野の研究開発分野での支出が快速に増加してきたことは否定できない。統計によると、中国では、国内生産総額に対する研究開発への支出が、1996年では0.6%だったが、2007年には1.5%と激増している。米国では、2007年の国内生産総額に対する研究開発の支出の比率は2.7%と比較的高いが、日本、韓国はこの数字と比べても低い。また、研究開発分野での支出金額を見ると、米国は他を全く寄せ付けない地位を確保している。2007年、こうした米国の支出は3,730億米ドルに達し、全世界の研究開発総支出額の三分の一以上にあたる。それに比べて、中国は1,020億米ドルで、米国、日本についで三位である。つまり、短期的にみれば、米国は、まだ中国が米国を追い越すという心配をする必要はないとの見通しである。
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