中国の専利法は、1992年、2000年にそれぞれ第一回、第二回に修正され、第三回の修正が終了した後、2008年12月27日の第11期全国人大常委会が、修正した《中華人民共和國專利法》を通過させることを表決した。新法は、2009年10月1日から実施されている。新法は専利の敷居を高くし、国際専利の出願を後押ししたが、中国本土の専利の品質を改善できるかどうか、期待して観察したい。
第三次専利法の修正において、最大の差異点は、新規性の標準を以前の「相対的新規性」から、「絶対性新規性」に改めたことである。言い換えれば、以前の法の規定により、発表、公開されていない技術で、国外で既に使用が公開された、もしくは既に相応する産品の販売があったとしても、中国国内ではまだ使用、公開されていない、もしくは相当する商品の販売がなければ、「相対的新規性」の標準に合致し、中国で専利を受けることができた。しかし、新法の実施後は、前述の国外で既に使用が公開された、もしくは既に相当する産品が販売されていると、専利を受けられなくなり、いわゆる「がらくた専利」の防止となっている。
第二の重要な変革は、渉外代理機構をなくし、今後中国知識産権局に専利または商標を出願するとき、指定された渉外代理機構を介して手続きする必要がなくなったことだ。しかしながら、新法では、出願人がもし代理人を替えたい場合、原代理人に対する解雇文、原代理人のサインを添付する必要があると規定しており、もし原代理人が同意しない、もしくは原代理人が見つからない場合は、出願人と新代理人にとって面倒な事態になりうる心配があり、これが第一の争点である。
第三の争点は、中国の新専利法第20条の規定は、如何なる組織または個人が、中国で完成した発明または実用新案を外国に出願する場合も、事前に国務院の専利行政部門を介して、三ヶ月の秘密審査を行う必要があることである。この規定は外国企業に絶大な影響を与え、新法は、外国への専利出願は、中国で先に出願する必要があるとの規定を削除し、出願人は直接外国専利に出願することができるが、事前に国務院専利行政部門を介して秘密審査を行う必要がある。
この新しい規定により、審査が益々厳格になるだけでなく、3ヶ月の秘密審査期間中も専利の新規性が失われるおそれが予想される。違う角度から見れば、元々は、外国に出願する専利出願人を考慮していたが、中国に同時に出願する場合、本来《工業産業権保護パリ公約》の規定に従って、同時に中国国内と国外の専利を出願する。しかし、新法の3ヶ月の秘密審査期間の規定により、こうした出願案が、審査批准を通過できないため外国に出願できない、もしくは、3ヶ月の審査期間のせいで、外国出願案が新規性を失うことになる可能性がある。新法の規定は、本来は中国の企業が海外に出願するのを推進するためであるはずが、実施後、逆効果を生んでしまう恐れがある。
第四の重要な項目の修正は、専利薬の「強制許可」を追加したことである。しかし、この内容は、実際は修正前の実施方法の中に既に存在していて、単に法律等級を上げ、実施方法から専利法の中の規定に格上げしただけである。強制許可が多方面での利益の協調や均衡にかかるため、その規範を専利法の中に入れた為、実務上でも安易に使用できないようになった。
第五の修正の重点は、意匠専利に対する保護強化であり、「許諾販売」の概念を導入し、以前の法の規定により、権利人は、第三者が権利侵害をする商品を生産、展示しているのを発見しても、権利侵害者が営利目的の行為でなければ権利人は阻止することができなかった。新法は、専利権利人が許可する場合を除き、その他の者は全てあらゆる形式を用いても、その専利を利用することはできないと規定しているので、前述の非営利目的での権利侵害産品を生産、展示する行為に対し、専利権利人は、合法的に権利を主張することができる。
最後の修正重点は、「一案件二出願」の開放である。一つの専利で同時に実用新案と発明に出願できるとし、実用新案は実質審査が必要としないので、出願人は早めに専利を取得することができ、続けて発明専利の審査の結果を待ち、発明専利の審査で査定されるのを待ってから、先に取得した原実用新案専利を放棄し、効力がより強い発明専利を取得することができる。