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中国:馳名商標認定作業細則および司法関連の解釈について

中国国務院は、200865日に「国家知識産権戦略ガイド」(以下《ガイド》と略称)を公布し、このガイドの内容を実現するため、商標戦略の実施を推進し、馳名(著名)商標の認定標準を改め、馳名商標の認定作業における制度化、規範化、格式化、法治化を更に進め、商標権利人の合法的権益を確実に維持し保護するよう促進している。中国の国家工商総局は、2009424日に「国家工商総局馳名商標認定作業細則」(以下《細則》と略称)を公布し、公布日から早速施行する。
 

《細則》とは、
1、総則 
2、馳名商標の出願認定の審査および審定
3.復審および査定 
4、監督および法律責任 
5.附則
の5章に分かれ、総計33条である。

《細則》規定: 馳名商標の認定作業の目的とは、商標権の保護強化である。

企業が行う商標戦略を先導し、自主的商標の使用、商標内容を豊かにし、商標知識産権の創作および保護を重視し、商標の知名度を上げ、自主的な知識産権および有名ブランドを持ち、国際競争力を有する優勢企業として形成し、企業および社会の経済発展を促進し、革新型国家の建設を推し進める。

以上の目的を達成する為、商標局、商標評審委員会は、厳格かつ正確に法により馳名商標を認定し、正確に世論を導き宣伝し、馳名商標の認定および保護の健全な発展を促進し、企業が合理的な商標戦略を実施できるよう支援しなければならない。

《細則》には、馳名商標の認定に、考慮すべき要素および証拠資料、商標の管理過程中および商標異議申し立て過程中の審査、商標異議復審、商標争議過程中の審査および審定などが列挙されている。そのうち、公衆への影響が比較的大きい規定として、馳名商標の認定は、以下の要素を考慮すべきではあるが、該商標は以下の全ての要素を満たすことは必須ではないとする。

1. 公衆による該商標の認知程度
2. 該商標使用の継続期間
3. 該商標のあらゆる宣伝作業の継続時間、程度、その地理範囲
4. 該商標が馳名商標として保護を受けた記録
5. 該商標が馳名と言えるその他の要素

また、商標局局長が主催する会議や、商標評審委員会委務会が馳名商標の認定に関して討論する際、中央紀委、監査部駐国家工商行政管理総局紀検チーム、および監査局は、人員を派遣して監督することができる。馳名商標の認定の審査期間中は、あらゆる組織、個人も、商標局、商標評審委員会に対し、情況を反映し、意見を提出することができる。

細則の規定に呼応し、最高人民裁判所は426日に、更に、《馳名商標保護の民事紛糾案件にかかる審理に関する法律応用におけるいくつかの問題点の解釈について》(以下《解釈》と称する)公布した。この細則は、20095月1日から施行している。また、《解釈》に定義される馳名商標は、中国で関連公衆が周知の商標である。

馳名商標の認定で考慮すべき要素について、《解釈》第10条の規定は少々異なり、「被告が類似商品上に原告の有する馳名登録商標と同じ、または近似の商標、或いは企業の名称を使用することを原告が禁止するよう請求するものについては、人民裁判所は、案件の具体的情況により、総合的に以下の要素を考慮した上で裁判するべきである。」とする。

1. 馳名商標の顕著な程度
2. 告訴された商標または企業名称の商品との関連公衆中に、該馳名商標が認知されている程度
3. 馳名商標の商品使用と、告訴された商標または企業名称の商品使用との関連程度
4. その他の関連要素

最高人民裁判所知識産権利審判廷裁判官の分析は以下のとおりである。
《解釈》においては、馳名商標の定義に「商標の市場での評判、名誉」の要素を含まず、「商標の市場での評判、名誉」を、馳名商標を認定するための事実の一つとしている。《解釈》の第5條第1款第5項には、「当事者が商標は馳名であると主張するものは、案件の具体的情況により、以下の証拠を提供し、商標権が侵害された、または、不正当競争行為が発生したとき、その商標が既に馳名に属していたことを証明しなければならない。」と規定している。

1.該商標を使用する商品のシェア、営業地域、および収益税額など
2.該商標の持続使用時間
3.該商標の宣伝またはプロモーション活動の方法、継続時間、程度、資金投入および地域範囲
4.該商標がかつて馳名商標として保護された記録
5. 該商標が受けた市場での評判
6. 該商標が既に馳名に属することを証明するその他の事実

最高人民裁判所は、当事者が馳名商標の司法による認定を容易に獲得するのを防止する為に、司法実務上、商標の馳名は、商標権が侵害された案件又は不正競争行為の法律要件事実を構成する場合のみに限って馳名商標を認定する必要があるとする。よって、馳名商標の司法認定は、各案件における馳名商標を保護するために法律要件の事実認定を行うものであり、馳名商標であるかどうかは、事実認定の範疇に属し、法律の問題ではない。

長年に渡り、中国では馳名商標に関しては、認定が氾濫しているという問題がずっと存在していたため、今回、《解釈》の第13条において「馳名商標の保護に関する民事紛争案件において、人民裁判所は、馳名商標の認定は、案件の事実と判決の理由としてのみ記入され、判決主文には記入されないとした。なお、調停方式による審理判決においては、調停書中に商標馳名の事実は認定されない。」と規定されている。これは、当事者が司法過程により馳名商標を認定され、その他の不正な利益を追求することを避けるためである。

 

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