フランスとシンガポールのワニ、中国で再度商標権争う
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フランスのワニ商標
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シンガポールのワニ商標
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シンガポールとフランスは、中国における「ワニ」の商標使用権について、10年間も争奪戦を繰り広げている。最近フランスは、北京市の一中国裁判所でもシンガポールのワニの商標登録に対し行政訴訟を提起し、もう一つの「ワニ戦争」が展開している。
1984年にフランス側は、眼鏡等4種類の製品において、中国で「LACOSTEおよびその図柄」の商標登録を申請し始め、登録された後、4種類の商標も領土延伸保護を取得し、その専用権の期限は20年である。一方、シンガポールと中国が国交を結んでから、シンガポールのワニは、1993年に眼鏡等の商品について中国に「CARTELO+CROCODILEおよび図柄」の商標登録を申請し、商標局が初歩審定し、公告したが、後にフランス側が異議申し立てを提出した。中国の商標局は、フランスのワニの異議申し立てを受け取ってから、2003年8月に裁定を行い、シンガポールのワニの商標登録を取消した。これに、シンガポール側は不服を示し、商標評審委員会は復審を申請した。商評委も、2008年7月23日に裁定を行い、これら二つのワニは、近似を構成しない商標であると認め、シンガポールのワニの登録申請を許可した。フランス側は、これを不服とし、北京市の一中裁判所に行政訴訟を提起し、商標評審委の異議復審裁定を撤回するよう要求した。
実際には、シンガポールとフランスのワニの係争は、1960年代から既に開始している。当初、フランスのワニが日本に進出の準備をしていたが、ワニの商標はその時既にシンガポール人により登録されていた。談判交渉により、シンガポールのワニ商標が譲歩に同意し、双方が「両方のワニの向きは異なるので、混同誤認には至らない」として、シンガポールは、フランスのワニが日本で登録されるのを許可し、ビジネスには競争がつき物であり、市場による自由な発展に任せるとした。1983年には、双方が協定し、以下のように規定した。
1. アジアの、シンガポール、マレーシア、インドネシア、ブルネイ、台湾等では、双方のブランドが共存しており、双方は、未解決の法律上の紛糾、法的処置、分岐、紛争および要求など全て終結し、解決するべきである。
2. 双方は、第三者の侵入を抑えるよう力をあわせるべきである。
3. フランス側はシンガポール側に「過去のワニ商標保護および防御費用の補償金」として、総額150万米ドルを支払う意志がある。
4. 双方が、各自の系列商標が関連市場で併存しても混同誤認に至らないと認め、できれば世界の他の地域でも互いに協力することができる。
協議にサインをした後、シンガポール側は、協議に厳格に従い、すでに先に登録された商標のインド、パキスタン、韓国、および中東などの国家ではフランスのワニの登録商標を許可した。だが、フランスは、この協定にサインした際に、1984年に中国でワニの商標を登録していることを故意に隠し、該協議は、中国を含まないことになり、双方のワニの商標は10年来、中国で紛争が絶えず、現在すでに5つの案件が、裁判所で審理されている。
中国では、フランスのワニマークは比較的早期に登録されたが、シンガポール側は、商標の問題が止む事なき紛糾を起こすのを避けるため、自主的に巨額の資金を費やしてフランスのマークと明らかに区別される商標を使用したと指摘している。しかし、シンガポール側が大量に広告を投入して知名度を獲得した際、フランス側は、商標の混同誤認の虞れがあるとして、シンガポール側の権利侵害を指摘した。シンガポールは、全力を尽くし、公平な競争となるよう努力し、両方のワニのマークが世界市場で併存する事を容認することが、消費者の選択権を保護し、消費者により多くの商品を選択する機会を与えるのだとし、フランス側は、誠実な信用および公平競争の原則に背き、法律を利用することにより、市場を独占する目的を達成しているのだと指摘した。
公平に言えば、双方によるワニの戦いの結果は、フランス側にとっては、北京の一中級裁判所の判決がフランス側の敗訴とすれば、シンガポール側はせいぜい中国で商標登録を獲得するだけだが、シンガポール側にとっては、北京の一中級裁判所の判決がシンガポール側の敗訴となれば、中国市場を退くしかなく、生存に関わる大問題である。結果如何によっては、中国の反独占法に対する解釈や効力の認定に挑戦することとなる。即ち、知識産業権の過度な保護のため、貿易の自由度が低下し、少数企業が独占支配することになり、消費者にとってよくない影響が出る可能性がある。 |