欧州連合執行委員会は、2008年1月30日に、台湾経済部知的財産局が「フィリップスのCD-R(一回書き込み可能ディスク)」専利を強制的に(他社に)授権させることを許可した案件について、貿易の公平性に違反すると認定し、二ヶ月内に該強制ライセンスを廃止するか、もしくは専利法を改正するよう台湾側に要求し、さもなければ世界貿易組織WTOに貿易紛争を提出するとした。
欧州連合執行委員会は、当初台湾政府がライセンスを与えるよう強制することを許可した際、専利権に対する合理的なライセンス料を裁定しないと共に、國碩(台湾企業名)も、フィリップスに何らかのライセンス料を今だに全く支払っていないこと、また、國碩は今でも光ディスクの販売を欧米各地で続けて、現地の税関で差し押さえられていることを指摘した。欧州連合は、そうした強制ライセンスの付与を先例に、中国やインド等の国も同じようにする場合、全世界の知的財産権の貿易保護機制が崩壊するのを恐れているのである。つまり、台湾では、強制ライセンス制度によって、フィリップスに、台湾業者から得るライセンス料を引き下げさせようとの意図があると認めている。また、台湾専利法には「特定の産業のための理不尽な改正をする」疑いがあり、台湾政府は、TRIPsの規範に対する解釈にいくつかの誤解があるとし、政府が民間企業の専利ライセンスの交渉に介入することは、すでに強制ライセンス付与を産業政策の道具としており、こうした強制ライセンス付与は、国際貿易上、「厳重な悪例」に属する。これ以外にも、強制ライセンス付与を許可した後に、國碩がそれらの強制的に付与されたライセンスにより生産された光ディスクを欧米各地に販売して、強制的に得たライセンスは本国にのみ適用するという市場の規定に違反しているのを知りながら、台湾は、監督の責務を怠り放任したと指摘した。
欧州連合は台湾政府の不当な決定により、フィリップスが前述強制ライセンス付与の件で、2004年から2007年の間の損失は数千万米ドルに上るとし、もし、國碩が将来支払う和解金が前述の金額より少ない場合は、フィリップスは、台湾裁判所に数千万米ドルの損害賠償を請求できるとした。
こうした欧州連合の強烈な告発に対し、台湾経済部は、欧州連合の見解を尊重し、WTOの紛争解決プロセスの枠のもと、欧州連合との談合を進めるとした。経済部によると、2004年に知的財産局が強制ライセンスを許可する以前に、欧州連合総本部、オランダ政府、フィリップス総本部との協議を進めていたが、知的財産局内部は、既に該案件のための専案委員会を成立させ、審査を進行させていて、経済部に、該案件を厳重、慎重に審議したことを示した。これ以外にも、知的財産局が強制ライセンスの裁定をする前に、該案件で、かつて、アメリカ国際貿易委員会も、フィリップスが専利(特許)権を濫用したという疑いを初公判で認定したという事実を提出した。国際的に、WTO会員が、WTO規範に対し違った解釈をすることがよく有り、WTOの成立から今日に至るまで、紛争解決機構は、397件の紛争案を既に受理しており、今回の強制ライセンス付与の件が、最後にどのような結果になるのか、協議を重ねる必要がある。
WTOの規定により、台湾と欧州連合は60日以内に、問題解決のための談合を行い、それでも合意が得られない場合は欧州連合が該案件をWTO紛争解決機構に提出するとした。そうした場合、台湾は国際的訴訟の被告と見なされ、一千万米ドル近くの公金を費やして、国際的訴訟を片付けなければならなくなり、欧州連合の「他国への今後の見せしめ」の対象とされる可能性がある。目下、台湾がこの難題を解決する方法は二つあり、一つは専利法大76条の規定を改正すること、もう一つは、台湾と欧州連合が文書を取り交わす方式で上述の貿易紛争を解決し、この両国間の協議内容を立法院に送付し確認させることである。
台湾は、今回の問題で、民主的態度により産業発展の保護を実現する必要があり、そうして始めて国際貿易および外国人の投資を奨励できる。政府が、国内産業を援助し、外国企業の専利を強制的に徴収するよう圧力をかけるのでは、との心配を外資企業にさせ、台湾の産業が後退するのは避けなければならない。さもなければ、中国はすさまじい速さで進む発展で圧力をかけ、台湾の生存余地を縮小し、台湾産業の発展を援助するどころか阻止しようと働きかけるだろう。