中国 最高人民裁判所と最高人民検察院が共同で《最高人民裁判所、最高人民検察院による知的財産権侵害刑事事件の処理における具体的な法律適用の若干問題に関する解釈(三)》を公布、2020年9月14日より施行
近年、知的財産権に係る新しいタイプの犯罪事件が増加していることに鑑みて、最高人民裁判所と最高人民検察院は、司法解釈によりこれを明確化、規範化するために、2020年9月13日に共同で《最高人民裁判所、最高人民検察院による知的財産権侵害刑事事件の処理における具体的な法律適用の若干問題に関する解釈(三)》(以下、《解釈》という)を公布した。《解釈》は9月14日より施行された。
この度公布された《解釈》は計12条からなり、第11条の規定によると、《解釈》が施行された後、前に公布された司法解釈及び規範的文書と一致しない場合には、《解釈》を基準とする。
《解釈》のポイントは下記の三点である。
一、営業秘密侵害罪の認定、量刑の基準及び損害の計算
第3条において、営業秘密侵害罪の「窃取」、「その他の不正な手段」等の認定が明確化された。
第4条において、営業秘密侵害罪の量刑の基準が明確化されて、「営業秘密の権利者が被った損失額又は営業秘密侵害によって得た違法所得が30万人民元以上の場合」などの三つの状況のいずれかに該当するときには、「営業秘密の権利者に重大な損失を与えた」と認定しなければならず、権利者が被った損失額又は営業秘密侵害によって得た違法所得が250万人民元以上のときには、「特に重大な結果を生じた」と認定しなければならないと規定された。
第5条において、六種類の損失額計算方法が規定されるとともに、営業秘密の権利者が、事業運営、事業計画の損失を軽減するため又はコンピュータ情報システムのセキュリティなどを回復するために支出した救済費用も損失として計上することが規定された。
第6条において、訴訟に関係する者又は訴外人が、刑事訴訟手続中において秘密保持が必要な営業情報の証拠・資料について秘密保持措置を講じるよう申立てた場合、訴訟参加者に秘密保持承諾書に署名させるなど必要な秘密保持措置を講じなければならず、秘密保持義務に違反したときは、法律により相応の責任を負うと規定された。
二、登録商標詐称罪における「同一の商標」、著作権侵害罪における「著作権者の許諾を得ずに」の認定基準の統一化
第1条において、「登録商標の字体、アルファベットの大文字と小文字又は文字の横書き・縦書きの配置を変えたが、基本的に登録商標と僅かな差異しかない場合」、「登録商標の色を変更したが、登録商標の顕著な特徴を表現することに影響しない場合」などの計六つの状況は、刑法第213条に定める「その登録商標と同一の商標」と認定できると明確に規定された。
また、著作権侵害罪における「著作権者の許諾を得ずに」の認定については、第2条において、係争作品、係争録音製品の種類が多く且つ権利者が分散している事件において係争複製品が不法に出版、複製発行されたものであることを証明する証拠があり、且つ出版者、複製発行者が著作権者、録音製品製作者の許諾を得たとする関連証拠資料を提供できない場合は、刑法第217条に定める「著作権者の許諾を得ずに」「録音製作者の許諾を得ずに」であると認定できると規定された。
三、知的財産権侵害犯罪に刑罰を適用する状況及び量刑の基準を規範化
第8条において、「主に知的財産権侵害を業とする場合」「違法所得の引渡しを拒否した場合」などの四つの状況のいずれかに該当するときは、事情を斟酌して厳しく処罰することができ、執行猶予を適用しないと規定された。
第9条において、「罪を認めた場合」「権利者の了承を得た場合」などの四つの状況のいずれかに該当するときは、事情を斟酌して軽い刑罰とすることができると規定された。
第10条において、知的財産権侵害の犯罪については、犯罪による違法所得の額、権利者に与えた損失額などの情状を総合的に考慮して、法律により罰金に処さなければならないと規定されたほか、科される罰金額の基準も明確化された。
〔参考資料〕中国最高人民裁判所・最高人民検察院プレスリリース |