北京知識産権法院が
外国の当事者による公証・認証資料の提出に補正期間を設けた「知的財産権行政事件事前登録」を試行
【出典:京法網事】
▓ 現行の法律規定
「外国又は港澳台(香港、マカオ、台湾)の当事者が国家知識産権局の下した商標又は専利に関する行政決定、裁定に不服がある場合、決定書、裁定書を受け取った日から、商標の場合は30日以内、専利の場合は3ヶ月間以内に、北京知識産権法院に訴訟を提起しなければならない。」
「原告が訴訟を提起するときは、公証・認証を経た身分証明書、代表者の身分証明書、授権委任状などの書類を提出しなければならない。」
▓ 実務上困難な点
北京知識産権法院の裁判官助手は「商標法を例にとると、中国の商標法に規定された出訴期間は30日であるが、調査の結果、大多数の国と地域の当事者は、公証・認証手続きだけで確実に30日以上かかることが分かった。そのため、当事者が法定の出訴期間内に公証・認証手続きを完了して立案を完成させることは困難であり、出訴期間内に訴訟を提起できないということは、原告が訴訟する権利を直接喪失するという深刻な法的リスクに直面することを意味している。」と述べた。
▓ 最高人民法院の意見
外国の公証・認証を「3ヶ月以内に補充提出すれば出訴期間は超えないものとする」措置を設けることで、外国主体の訴訟の権利を平等に保障する。
指定期間内に法律に規定された条件に合致するよう補正した場合、人民法院は立案を登録しなければならない。公証・認証のみが欠けており、その他の訴訟資料は揃っている事件について、外国又は港澳台の原告は北京知識産権法院に事前登録して、出訴期間内において訴訟提起の日付を事前に確定することができる。原告が事前登録後3ヶ月以内に公証・認証手続きを完了して法院に提出した後、法院は正式に立案する。
外国又は港澳台の当事者が訴訟において中国の当事者と同じ待遇を受けられることは、内国民待遇原則に合致する。これが事前登録を試行する主な動機である。
▓ 執行状況
北京知識産権法院は、2014年末の設立以来、積極的に事前登録を試行してきた。過去に、北京知識産権法院は事前登録を取り扱う際、外国又は港澳台の原告が提出した書面の訴訟資料を同時に受け取っていた。知識産権法院の設立に伴い、北京知識産権法院は文書の電子スキャンを実施し、2019年3月15日から書面による訴訟資料を受理しなくなった。その後1か月以内に、北京知識産権法院は512件の事前登録を取り扱った。
ある側面では、原告は訴訟資料の原本を取り戻し自ら保管することで、手続きがより安全且つ便利となった。他の側面では、法院は手続きの最適化、司法資源の節約、司法効率の向上が可能となった。北京知識産権法院は当事者の名称、事前登録の登録日及び訴状番号等の情報によって、電子ファイルの中から当事者が事前登録のときに提出した資料を迅速に見つけることができるので、効率が大幅に向上した。
▓ 6つの注意事項
北京知識産権法院は外国又は港澳台の当事者による立案の事前登録について、6つの注意事項を発表した。
★ポイント:内容が真実且つ正確で、形式が規範を満たしていること
- 外国の訴訟主体が他人に委任して訴訟する場合、法律の規定により法人又はその他の組織に委任することができない。
- 外国の訴訟主体の身分証明は必ずしも「法定代表者」である必要はなく、受任者が外国の訴訟主体を代表して訴訟に参加する権限があることを証明できる「代理授権身分証明」などの証明資料であってもいい。
- 外国の訴訟主体が提出した公証内容は、訴訟主体が真実に存在する状況及び真意を示すものでなければならない。
- 外国の訴訟主体が提出する公証・認証の書面資料の形式は規範に合致しなければならない。製本されていない又は割印がされていない又は自ら開封したことで、裁判官が書類の真実性を確認できない等の状況を避けなければならない。
- 外国の訴訟主体が提出する翻訳資料は、北京市高級人民法院が指定する翻訳機関が翻訳しなければならず、翻訳の内容は客観的で、真実且つ正確であり、形式上規範に合致しなければならず、割印がないなどの状況を避けなければならない。
- 手続きに不備があったときに、補正のタイミングを逸しないためにも、外国の訴訟主体は迅速に公証・認証の手続きを行う必要がある。
|