中国中興通訊（ZTE）に対する制裁解除
先行きは依然不透明

　2018年6月7日米商務部は、中国第2位の通信機器メーカーである中興通訊と和解した。中興通訊が17億ドル（17億ドルの内訳は、2017年3月の合意で決めた3億6100万ドル、10億ドルの罰金及び預託金4億ドル）の罰金を支払い、6月8日に交わした21ページの合意内容に基づいて、中興通訊が30日以内に取締役会を刷新し、高級副総裁以上の経営幹部を全面的に交代すると同時に、不正行為に関与した上級管理職または職員を解雇した後、制裁が解除され、米国企業との取引きが再開される見通しであった。しかしながら、1ヶ月も経たないうちに、先行きに懸念が出始めた。

　この事件は、中興通訊が米国のイラン及び北朝鮮に対する禁輸措置に違反したことに起因している。2017年3月に中興通訊は米司法部、商務部と和解が成立し、10億ドルの罰金と合意に違反した場合の3億6100万ドルの追加罰金の支払い、管理職の入れ替え並びにその他の条件を遵守することに合意した。しかし、その後、中興通訊が事件に関与した管理職を処分しないどころか、賞与を全額支給したことが発覚し、中国が米関係当局に虚偽の説明をし、合意に違反したため、2018年4月16日に米企業による自社の主要技術及び部品の中興通訊への販売を7年間禁止することを発表した。

　中興通訊には、これまで合意に違反した前例が有ったため、米商務部は、中興通訊が罰金を支払うほか、4億ドルを米国が指定した銀行の預託口座に入金するまで、米企業による中興通訊への部品供給禁止措置を解除しないと発表した。

　しかしながら、中興通訊は、米商務部が発表した上記内容に対して即時に説明や対応をしなかった。その理由として、和解合意に、中興通訊は関連告発を否定する行動や公開声明を直接的にも間接的にも行ってはならない旨があった可能性がある。

　和解合意によると、中興通訊は合計17億ドルの罰金を支払わなければならず、そのうち4億ドルは米国の銀行口座に10年間預託される。この期間中に、中興通訊が合意を遵守しなかった場合、このお金は没収される。10年間違反がなければ、この保証金は中興通訊に返還される。

　また、2018年6月8日に交わした合意内容によると、中興通訊は中国政府の中興通訊に対する所有権と支配権（政府保有株と民間保有株を含む）の状況を米商務部に詳しく報告しなければならず、また、商務部は30日以内に、特別チームを派遣し、中興通訊とその世界各地の子会社が合意内容を遵守するかどうかを10年間監視する。合意内容ではさらに、米政府がより容易に中興通訊の製品が法規に準拠しているかを確認するための手段を持つことに中興通訊が同意し、且つ中興通訊が180日以内に、ウェブサイトにて、同社の製品に使用されている米国部品の数を中国語と英語で発表しなければならないことについて特に言及している。

　上記の和解条件は中興通訊にとって非常に厳しいものの、中興通訊はコア部品を米国に依存しており、米国は中興通訊のスマートフォンの最大の海外市場で、その通信機器の主要部品の25％以上を米国企業からの供給に頼っているため、中興通訊は生き残るために、それらの条件を飲まなければならない。実は、中興通訊の合意違反の情報が出て、米議員は、中興通訊が米国の国家安全保障を脅かしているとして、同社への制裁措置に関する法案の検討を決めた。しかし、トランプ大統領が中興通訊に対する制裁緩和を示唆したことで、中興通訊は起死回生の機会を得たが、超党派の議員が依然として強く反対した。

　米上院は、トランプ大統領と中興通訊との制裁解除に関する合意を阻止するために、6月19日に中興通訊へのハイテクチップ販売を再び禁止する内容が盛り込まれた「国防権限法案（NDAA）」を可決した。この法案は上院で可決されたものの、下院ではまだ可決されていないため、正式な米国の法律になってない。それでも、中興通訊に既に深刻な影響を与え、株価が急落した。

いずれにしても、米商務部の中興通訊に対する罰金額は、417億台湾ドルにも達し、過去最高を記録した。今後NDAAが成立しなくても、中興通訊が難関を突破するためには、この巨額の罰金を支払わなければならない。これについて、新華社は、「これは中興通訊が契約を違反したことに対して支払うべき代価なのである。2ヶ月近くの交渉で、このような結果となったが、この結果を大切にすべきである。この事例は中国のみならず、全てのグローバル企業にとって教訓的価値がある」との論評を報じた。