中国国務院『知的財産権の
対外譲渡に関する作業弁法(試行)』を公告
【出典:国家知識産権局ウェブサイト】
中国国務院弁公庁は、知的財産権の対外譲渡の秩序を規範化するために、2018年3月18日に、『知的財産権の対外譲渡に関する作業弁法(試行)』(以下『弁法』という)(国弁発〔2018〕19号)を公布した。中国ではここ数年、専利の数量と品質が向上したことで、外国への知的財産権の譲渡が年々増えている。国家知識産権局が発表した統計データによると、2017年の中国の知的財産権使用料の輸出額は40億ドルを超えた。
主要なコア技術については、知的財産権の対外譲渡過程で、国家の安全保障に関わるコア知的財産権の譲渡行為に対して厳格な審査を行わなければ、中国の重要分野のコア技術の自主開発と制御性に影響を及ぼし、大きな経済損失を生じさせ、中国の自主イノベーション力の育成及び国際競争の優位性に重大な悪影響を与えるおそれがある。
そのため、『弁法』では、技術輸出、外国投資家による国内企業の合併・買収などの活動において、国家の安全保障に関わる知的財産権の対外譲渡行為に対して審査を行うことを規定した。審査内容には、知的財産権の対外譲渡が中国の国家安全保障及び重要分野の主要なコア技術のイノベーション発展力に与える影響が含まれている。『弁法』では、知的財産権の対外譲渡の審査範囲、審査内容、審査メカニズムや審査細則などその他の事項も規定しており、関連の審査業務は、知的財産権、貿易、科学技術、農業、林業などの部門にも及ぶ。
多くの国でも、国家の安全保障に関わる知的財産権の対外譲渡行為を厳格に管理しているため、この種の審査と制限は、国際条約と国際慣例に沿うものである。『貿易の技術的障害に関する協定』には、明確に「いかなる国もその根本的な安全保障上の利益を保護するための必要な措置を講じることを妨げられるべきではない」と規定されている。
自国の総合的な利益を保護するために、世界の主要国は、基本的に知的財産権の対外移転・譲渡に対して整備された審査制度を構築している。アメリカはその代表的な国の一つで、一般的なテクノロジー及びテクノロジー商品の対外移転・譲渡は、アメリカ商務省が管理している。企業の合併・買収など経営上の必要から受動的な知的財産権の移転・譲渡が発生した場合は、対米外国投資委員会が知的財産権の対外移転・譲渡の審査・監視管理を担当する。EUや日本などにも類似した審査制度がある。
中国商務部のデータによると、2017年に中国が実際に利用した外資は8,775.6億人民元で、過去最高を記録し、当年度で外資を最も利用した国の一つとなった。したがって、完備された知的財産権の対外譲渡審査メカニズムの構築は、中国の投資環境に影響を与えないだけではなく、逆により良いビジネス環境を作り上げるための具体的な措置となる。
『知的財産権の対外譲渡に関する作業弁法(試行)』の全文は以下の通りである。
知的財産権の対外譲渡に関する作業弁法(試行)
全体的な国家安全保障構想を徹底的に実施し、国家の安全保障制度体系を改善し、国家の安全保障と重要な公共利益を維持し、知的財産権の対外譲渡の秩序を規範化するために、国家安全保障、対外貿易、知的財産権など関連の法律法規に基づいて、本弁法を制定する。
一、審査範囲
(一)技術輸出、外国投資家による国内企業の合併・買収などの活動において、本弁法に規定される専利権、集積回路配置図設計専有権、コンピュータソフトウェア著作権、植物新品種権などの知的財産権を外国に譲渡する場合、本弁法に従って審査を行わなければならない。前記知的財産権には、その出願権も含まれる。
(二)本弁法において知的財産権の対外譲渡とは、中国の組織または個人がその国内の知的財産権を外国の企業、個人またはその他の組織に譲渡することをいい、権利者の変更、知的財産権の実質的な管理者の変更及び知的財産権の独占的実施許諾を含む。
二、審査内容
(一)知的財産権の対外譲渡が中国の国家安全保障に与える影響。
(二)知的財産権の対外譲渡が中国の重要分野の主要なコア技術のイノベーション発展力に与える影響。
三、審査メカニズム
(一)技術輸出における知的財産権の対外譲渡に関する審査
1. 技術輸出活動において、輸出する技術が、中国政府が明確に『中国輸出禁止輸出制限技術リスト』で輸出制限している技術で、専利権、集積回路配置図設計専有権、コンピュータソフトウェア著作権などの知的財産権に関わるものについては、審査しなければならない。
2. 地方貿易主管部門は、技術輸出事業者が提出した中国輸出制限技術申請書を受け取った後、それが専利権、集積回路配置図設計専有権、コンピュータソフトウェア著作権などの知的財産権の対外譲渡の場合、関連書類を地方知的財産権管理部門に転送しなければならない。地方知的財産権管理部門は関連書類を受け取った後、譲渡予定の知的財産権に対して審査し、書面の意見書を作成して、地方貿易主管部門にフィードバックすると同時に、記録のため国務院知的財産権主管部門に報告をしなければならない。
3. 地方貿易主管部門は、地方知的財産権管理部門が作成した書面の意見書に基づいて、『中国人民共和国技術輸出入管理条例』など関連の規定に従って審査決定を下さなければならない。
4. コンピュータソフトウェア著作権の対外譲渡については、地方貿易主管部門と科学技術主管部門が、『中国人民共和国技術輸出入管理条例』、『コンピュータソフトウェア保護条例』などの関連の規定に基づいて審査を行う。対外譲渡するコンピュータソフトウェア著作権が、コンピュータソフトウェア登録機関に登録されている場合、地方貿易主管部門は審査の結果を即時にコンピュータソフトウェア登録機関に通知しなければならない。審査の結果、譲渡不可となった場合、コンピュータソフトウェア登録機関は通知を受け取った後、所有権の帰属の登録変更手続きを処理してはならない。
5. 植物新品種権の対外譲渡については、農業主管部門と林業主管部門が『中華人民共和国植物新品種保護条例』などの関連規定に基づいて、職責に従って審査を行う。審査内容のポイントは、譲渡予定の植物新品種権が、中国の農業の安全保障、特に食料と種苗業の安全保障に与える影響である。
(二)外国投資家による国内企業の合併・買収の安全審査における知的財産権の対外譲渡の審査。
1. 外国投資安全審査機関は、外国投資家による国内企業の合併・買収について安全審査を行う場合、合併・買収の安全審査範囲内に属し且つ知的財産権の対外譲渡に係るものについては、譲渡予定の知的財産権の種類に応じて、関連書類を関連主管部門に転送し意見を求めなければならない。専利権、集積回路配置図設計専有権に関わるものは、国務院知的財産権主管部門が担当し、コンピュータソフトウェア著作権に関わるものは、国家著作権主管部門が担当し、植物新品種権に関わるものは、国務院の農業主主管部門と林業主管部門がそれぞれ職責に応じて担当する。
2. 関連主管部門は速やかに審査を行い、書面で意見書を作成して、それを外国投資安全審査機関にフィードバックしなければならない。外国投資安全審査機関は、関連主管部門が作成した書面の意見書を参考にして、関連の規定に従って審査決定を下さなければならない。
四、その他の事項
(一)関連主管部門は、審査細則を制定して、審査書類、審査の流れ、審査期限、業務責任などを明確にしなければならない。
(二)知的財産権の対外譲渡審査の最終決定が下された後、知的財産権の所有権の帰属に変更が生じた場合、譲渡の当事者双方は関連の法律法規に従って変更手続きをしなければならない。
(三)関連主管部門の職員は知的財産権の対外譲渡に係る双方の営業秘密を保持しなければならない。
(四)知的財産権の対外譲渡が国防安全保障に関わる場合、国の関連規定に従って処理し、本弁法は適用しない。
(五)本弁法は発表の日から試行する(注:2018年3月18日から試行)。
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