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中国 専利権侵害
に対する懲罰的賠償の追加を予定

  

【出典:北京青年報】

 

 中国の李克強首相は、2018年の政府活動報告において、「知的財産権保護を強化し、権利侵害に対する懲罰的賠償制度を実施する」と述べた。中国の政府活動報告に「権利侵害に対して懲罰的賠償制度を実施する」ことが盛り込まれたのは今回が初めてである。第13期全国人民代表大会第1回会議で可決された最高人民法院の活動報告でも「知的財産権の審判における懲罰的賠償措置の適用を検討し、権利侵害のコストが低く、権利維持のコストが高いなどの問題解決に注力する」ことが示された。

 中国で1993年に公布執行された『消費者権益保護法』は、特別法の形で初めて懲罰的賠償制度を定めたもので、これは中国の民法の大きな進展であった。20138月の第12期全国人民代表大会常務委員会で可決した改正『商標法』では、知的財産権分野で始めて懲罰的賠償メカニズムが導入され、法定賠償額の上限が大幅に引き上げられた。

 現在、専利など知的財産権の保護方面の法律は十分整備されていないため、権利侵害事件の多くは最終的に訴訟という方法で解決されるが、賠償額は原告が主張する金額より明らかに低く、権利侵害者に対する制裁度が不十分であるため、侵害行為の再発を防ぐのは難しい。権利侵害者の行為は犯罪レベルに達しないものが多く、予防効果を達するために権利侵害者に対し厳しい処罰を与えることはできない。たとえ、罰金のような行政手段を用いたとしても、権利侵害行為者に相応の処罰を受けさせることは難しい。

 最近進められている専利法改正は、専利権保護に対して特に行われる特別改正である。立法部門は、「充填原則」(被害者の全ての損失を補填する)のみに頼るのは、悪意による権利侵害を抑止し、権利侵害行為で被った損害を補填するには不十分であると判断し、今回改正される『専利法』では、増加する専利権侵害行為に対処するため、海外の懲罰的賠償制度を参考にして、専利権侵害の損害賠償額の引き上げを予定している。

 中国で現在実施されている損害賠償制度は、主に損失補償を原則としており、『消費者権益保護法』と『商標法』を除くその他の法律は未だに懲罰的賠償制度を規定していない。『消費者権益保護法』と『商標法』は特別法に属しており、懲罰的賠償制度をその他の損害賠償分野、特に専利の知的財産権の法律分野にまで拡大させることが喫緊の課題である。また、懲罰的賠償制度の確立により、主観的に軽率、無視の態度で他人の知的財産権を侵害する不法行為に対して懲罰的賠償を課せるようになれば、加害者に対する懲罰が実施しやすくなり、被害者が癒され、それにより社会の公正・正義を実現することができる。

 また、懲罰的賠償制度の構築は、専利権侵害行為を効果的に制裁し、悪質な侵害行為の発生を減少させることができる。懲罰的賠償制度の適用は、専利権侵害などの行為があったときに、被害者の損失を補償できるだけではなく、権利侵害者に対しより大きな経済的圧力をかけることによって、制裁の効果が発揮され、不法行為の再発を防止することもできる。

 懲罰的賠償制度は、権利侵害者に対して懲罰と制裁の作用がある。それは主に故意または悪意の権利侵害行為に対して懲罰を実施して、不法行為者に対し、より重い経済的負担を課すことで、制裁の目的を達成するのである。懲罰的賠償制度は権利侵害を防止する機能を果たすことができ、それには主に二つの意味がある。一つは、ある知的財産権侵害事件の特定の権利侵害者が不法行為を継続的にまたは繰り返して行うことを防止するもので、特殊予防と呼ばれており、もう一つは、その他の潜在的な権利侵害行為の発生を予防するもので、一般予防と呼ばれている。懲罰的賠償は取引を促進する機能もあり、市場取引を促進することができる。その理由は、潜在的権利侵害者に取引を行った方が権利侵害を行うよりも費用対効果が高いことを認識させ、潜在的権利侵害者に取引を行うように促すことができるからである。

 中国は懲罰的賠償制度を専利権侵害の損害賠償責任の一部とみなして、民事特別法を制定する際に、『消費者権益保護法』などの立法経験を参考にして、特別法における懲罰的賠償の適用について明確な規定を定める予定である。改正後の『専利法』では、専利権を故意に侵害した場合、法院は情状、規模及び損害の結果を考慮して、賠償額を最高3倍に引き上げることができる。専利権者が、相手が故意に権利侵害をしたこと、例えば、一度権利侵害をしており且つ敗訴したことなどを証明できれば、法院は権利侵害者側に懲罰的賠償の判決を下すことができる。

 中国の専利権侵害に対する懲罰的賠償制度の確立は、中国の民法の大きな進展である。これによって権利者に正面から権利侵害行為に対処するよう、そして社会全体が積極的に模倣取締活動に参加するよう促すことができる。これもまた市場経済条件下で専利などの知的財産権分野での権益保護に対する喫緊の必要性に応じたものであり、市場経済と社会発展のために緊急に必要とされていることである。

 このほかに、第13期全国人民代表大会第1回会議では、重要な科学技術関連の任務に従事する科学研究者に対して、将来、柔軟性のある報酬制度と奨励措置を講じ、科学研究者に研究成果の所有権及び長期実施権を与えることを検討することについても言及された。

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