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上海知識産権法院
が初めて専利権の悪意放棄及びその
損害賠償事件を認定
 

 【出典:上海知識産権法院】

 最近、中国の上海知識産権法院は、ある専利(特許、実用新案、意匠)権紛争事件を結審した。当該事件の意義は、悪意の放棄行為の「悪意」について定義し、悪意の放棄によって専利権が存在しなくなった場合、合法的な権益を侵害するか否かについて司法判断を下した点である。

 

  これは、実用新案権の帰属紛争事件から生じた後続の紛争事件である。事件の原因は実用新案権の帰属紛争である。 

 

  本件は、上海一級中級法院が原告勝訴の判決を下した後、被告が上訴を提起せず、原告が訴訟で自己の実用新案権を取り戻したことから、事件全体の紛争は終結するはずだった。しかしながら、原告が、判決の発効後に、判決書に基づいて国家知識産権局に実用新案権者、考案者の登録変更を申請した際に、問題が発生した。訴訟がまだ進行している時に、被告が国家知識産権局に表一の実用新案権を放棄する声明を提出し、国家知識産権局が審査の結果、当該申請を許可したため、係争実用新案は、「権利者が自らの意思によって放棄した」ことで、権利が消滅してしまったのである。

 中国の『専利(特許、実用新案、意匠)審査ガイドライン』の関連規定によると、専利権者は正当な理由がない限り、専利権放棄の声明の取消を要求してはならないが、専利権の真の所有者(発効した法律文書を提出して証明しなければならない)は、専利権の真の所有者以外の者が悪意で専利権の放棄を要求した後、専利権放棄の声明の取消を要求することができる。

 国家知識産権局は、「上記の規定により、原告は発効した法律文書を提出して当該実用新案権が真の所有者でない者の悪意により放棄されたことを証明しなければならない。上記の実用新案権帰属紛争事件の判決書は、実用新案権の帰属のみを確認したものであり、被告が悪意により実用新案権を放棄したかどうかについては認定していない。したがって、原告の実用新案権放棄の声明の取消に関する請求を棄却する」とした。

 これについて、被告は「実用新案権を放棄する行為は、当該実用新案権が関わる実用新案権帰属紛争事件の判決が下される前であり、当時、自分はまだ当該実用新案権の権利者で、当該実用新案を精査した結果、当該実用新案権には進歩性がないことが判明したため、放棄した。実用新案権帰属紛争事件の判決が下される前に、自己の実用新案権を放棄したことには正当な理由がある」と主張した。

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 原告は、国家知識産権局に被告による実用新案権放棄声明の取消し請求を棄却された後、再度上海知識産権法院に、被告が「電動オーガーバルク飼料搬送設備用位相順序保護継電器回路」実用新案を悪意により放棄したことの確認を求め、且つ国家知識産権局に当該実用新案権の回復を申請するために支払った手数料、委任した専利代理機関への代理費用及び本訴訟の代理費用の計12,000人民元の損失の賠償を求める訴訟を提起した(最近の判決のため、データベースでは検索できない)

 上海知識産権法院は再度審理した後、「原告の本件における訴訟請求は、実質的に、被告が本件の実用新案権を放棄する行為には悪意があることを確認した上で、被告の行為によって被った経済的損失に対する賠償を求めるものである。本件の争点は、被告が本件の実用新案権を放棄した行為が原告の合法的権益を侵害したか否か、及び原告が主張する関連費用を賠償すべきか否かにある。

 本件では、係争実用新案はすでに存在せず、原告は実用新案権または実用新案出願権を権利の基礎として被告に損害賠償を主張することはできないが、既に発効した先行実用新案権帰属紛争事件の判決書により、原告は本件の実用新案技術について合法的権益を享有する。この種の合法的権益を侵害する行為は実用新案権を侵害する行為ではないが、権利侵害行為であることには変わらない。被告が原告のこの種の合法的権益を侵害したかどうかを判断する場合、権利侵害行為の構成要件の観点から本件の事実を総合的に評価すべきである」とした。

法院の見解は下記のとおりである。

1. 原告は被告との実用新案権帰属紛争において、訴訟審理中に被告が自らの意思によって本件の実用新案権を放棄する行為を行い、その行為によって、原告は実用新案権帰属紛争事件の判決書の発効後に、実際に本件の実用新案権を獲得できず、また国家知識産権局に消滅した実用新案権の回復申請をした際に障害が生じたため、本件の訴訟を提起した。

2. 原告は本件の実用新案権の回復申請のために、相応する手数料、実用新案権の回復を専利代理機関に委任した費用、及び本件の訴訟代理費用を余分に支出した。

3. 本件は権利侵害判断の行為要件、損害結果要件、因果関係要件を全て備えており、被告が自らの意思で実用新案権を放棄したことには主観的責任があるかどうかが鍵となる。これに対し、法院は錦農が本件の実用新案権を放棄した日、理由、及び関連する事件の審理状況の3つの観点から、被告の主観的責任について評価し、「被告が本件の実用新案権帰属紛争の審理過程で本件の実用新案権を放棄した行為は、正当な理由を欠いており、主観的に悪意があり、明らかに責任がある。本件の実用新案権を放棄する行為は、原告の関連する合法的な権益の侵害に該当する」と認定した。

4. 『中華人民共和国権利侵害責任法』の関連規定により、原告が実用新案権を回復させるために支払った手数料、実用新案権の回復を専利代理機関に委任した費用及び本件の訴訟代理費用の何れも被告が本件の実用新案権を放棄した行為によって発生した費用、支出である。前記費用は実際に支払われており、金額も合理的な範囲を超えていない。したがって、原告の関連費用の支払いを求める訴えを認めることができる。 

 

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