中国
改正『不正競争防止法』、
2018年1月1日より施行
【出典:北大法宝】
中国で『不正競争防止法』の改正が行われた。改正後の条文は下記の通りである。
中華人民共和国主席令(第七十七号)
改正『中華人民共和国不正競争防止法』は、2017年11月4日中華人民共和国第12期全国人民代表大会常務委員会第30回会議で可決された。ここに改正後の『中華人民共和国不正競争防止法』を公布し、2018年1月1日より施行する。
中華人民共和国主席 習近平
2017年11月4日
中華人民共和国不正競争防止法
(1993年9月2日第8期全国人民代表大会常務委員会第3回会議にて採択、2017年11月4日第12期全国人民代表大会常務委員会第30回会議にて改正。)
目次
第一章 総 則
第二章 不正競争行為
第三章 不正競争の疑いがある行為に対する調査
第四章 法的責任
第五章 附 則
第一章 総 則
第一条
社会主義市場経済の健全な発展を促進し、公平な競争を奨励し保護し、不正競争行為を制止し、事業者と消費者の合法的な権益を保護するため、本法を制定する。
第二条
事業者は、生産経営活動において、自由意思、平等、公平、信義誠実の原則に従い、法律及び商業倫理を遵守しなければならない。
本法において不正競争行為とは、事業者が生産経営活動において、本法の規定に違反して、市場の競争秩序を攪乱し、その他の事業者又は消費者の合法的な権益を害する行為をいう。
本法において事業者とは、商品の生産、経営又は役務の提供(以下、「商品」には役務も含む)に従事する自然人、法人及び非法人組織をいう。
第三条
各級人民政府は、措置を講じて不正競争行為を制止し、公平な競争のために良好的な環境と条件を作り出さなければならない。
国務院は、不正競争防止業務の協力メカニズムを構築し、不正競争防止に係る重要な政策を研究、決定し、市場競争秩序の維持に係る重大な問題を協力して処理する。
第四条
県級以上の人民政府の工商行政管理職責を履行する部門は、不正競争行為に対して調査し処分を行う。法律、行政法規にその他の部門が調査し処分を行うことが規定されている場合は、その規定に従う。
第五条
国は、全ての組織及び個人が不正競争行為に対して社会監督を行うことを奨励し、支援し、保護する。
国家機関及びその職員は、不正競争行為を支持したり、庇護したりしてはならない。
業界団体は、業界の自律を強化し、会員が法律に従って競争するよう指導し、規範化し、市場競争秩序を維持しなければならない。
第二章 不正競争行為
第六条
事業者は、次に掲げる混同行為を実施して、他人の商品である又は他人と特定の関係が存在すると誤認させてはならない。
(一)他人の一定の影響力のある商品名称、包装、装飾などと同一または類似する標識を無断で使用する。
(二)他人の一定の影響力のある企業名称(略称、屋号などを含む)、社会組織名称(略称などを含む)、氏名(ペンネーム、芸名、訳名などを含む)を無断で使用する。
(三)他人の一定の影響力のあるドメイン名の主要部分、ウェブサイト名称、ウェブページなどを無断で使用する。
(四)他人の商品である又は他人と特定の関係が存在すると誤認させるに足るその他の混同行為。
第七条
事業者は、取引の機会又は競争の優位性を獲得するために、財物またはその他の手段により、次に掲げる組織又は個人に賄賂を行ってはならない。
(一)取引相手の従業員
(二)取引相手から委託を受けて関連業務を行う組織又は個人
(三)職権又は影響力を利用して取引に影響を与える組織又は個人
事業者は、取引活動において、明示する方式で取引相手に値引きを提供し、または、仲介人に手数料を支払うことができる。事業者は取引相手に値引きを提供したり、仲介人に手数料を支払ったりした場合、事実の通りに記帳しなければならない。値引きや手数料を受けた事業者も事実の通りに記帳しなければならない。
事業者の従業員が賄賂を行った場合、事業者の行為であると認定しなければならない。ただし、事業者が、その従業員の行為は事業者のために取引の機会又は競争の優位性を獲得することと関係がないことを証明する証拠を有する場合はこの限りでない。
第八条
事業者は、その商品の性能、機能、品質、販売状況、顧客の評価、受賞歴などを偽り、又は誤解を生じさせる商業宣伝をして、消費者を欺き、誤導してはならない。
事業者は、虚偽の取引などの方法により、その他の事業者が虚偽の又は誤解を生じさせる商業宣伝をすることを幇助してはならない。
第九条
事業者は、次に掲げる営業秘密を侵害する行為を実施してはならない。
(一)窃盗、賄賂、詐欺、脅迫、又はその他の不正な手段で権利者の営業秘密を取得すること
(二)前項の手段により取得した権利者の営業秘密を開示し、使用し、または使用を他人に許諾すること
(三)約定に違反し、または権利者の営業秘密保持の要求に違反して、その把握した営業秘密を開示し、使用し、または使用を他人に許諾すること
第三者が、営業秘密権利者の従業員、元従業員又はその他の組織、個人が前項に掲げる違法行為を行ったことを明らかに知り又は知るべきであったにも関わらず、依然として当該営業秘密を取得し、開示し、使用し、又は使用を他人に許諾した場合は、営業秘密を侵害したとみなす。
本法において営業秘密とは、公衆に知られておらず、商業的価値を有し、且つ権利者が相応の秘密保持措置を講じた技術情報及び経営情報をいう。
第十条
事業者が実施する懸賞景品付販売においては、次に掲げる状況が存在してはならない。
(一)設定された賞の種類、引換条件、賞金額又は賞品など、懸賞景品付販売の情報が不明確で、引換に影響を与えること
(二)懸賞景品付であると偽り又は故意に内定者に賞を当選させる欺瞞の方法により懸賞景品付販売を行うこと
(三)抽選式の懸賞景品付販売において最高賞の金額が五万人民元を超えること
第十一条
事業者は、虚偽の情報又は誤導的情報を捏造し、流布して、競争相手の営業上の信用、商品の名声を害してはならない。
第十二条
事業者は、インターネットを利用して生産経営活動に従事する場合、本法の各項の規定を遵守しなければならない。
事業者は、技術手段を利用してユーザーの選択に影響を与え又はその他の方法により、次に掲げるその他の事業者が合法的に提供するネットワーク商品又は役務の正常な運営を妨害、破壊する行為を行ってはならない。
(一)その他の事業者の合意を得ずに、その事業者が合法的に提供するインターネット商品または役務の中に、リンクを挿入して、強制的に特定のサイトへジャンプさせること。
(二)その他の事業者が合法的に提供するインターネット商品又は役務を変更、閉鎖、アンインストールするよう、ユーザーを誤導し、欺瞞し、強迫すること。
(三)その他の事業者が合法的に提供するインターネット商品又は役務に対して、悪意により、互換性をなくさせる。
(四)事業者が合法的に提供するインターネット商品または役務の正常な運営に対して、妨害、破壊するその他の行為。
第三章 不正競争の疑いがある行為に対する調査
第十三条
監督検査部門は、不正競争の疑いがある行為を調査する場合、次に掲げる措置を講じることができる。
(一)不正競争の疑いがある行為が行われた営業場所に立ち入り検査を行う。
(二)調査を受ける事業者、利害関係者及びその他関係のある組織、個人に質問し、関連状況の説明又は調査の対象行為に関するその他の資料を提供するよう要求する。
(三)不正競争の疑いがある行為と関連のある契約書、帳簿、伝票、文書、記録、業務書簡及びその他の資料を照会し、コピーする。
(四)不正競争の疑いがある行為に関連する財物を差押、押収する。
(五)不正競争の疑いがある行為の事業者の銀行口座を照会する。
前項に規定する措置を講じる場合、監督検査部門の主要責任者に対し書面で報告して、許可を得なければならない。前項第四号、第五号に規定する措置を講じる場合は、区を設けている市級以上の人民政府監督検査部門の主要責任者に書面で報告して、許可を得なければならない。
監督検査部門が不正競争の疑いがある行為を調査する場合、『中華人民共和国行政強制法』及びその他の関連法律、行政法規の規定を遵守し、且つ調査処分の結果を速やかに社会に公開しなければならない。
第十四条
監督検査部門は、不正競争の疑いがある行為を調査する場合、調査を受ける事業者、利害関係者及びその他関連する組織、個人は関連する資料又は状況を事実の通り提供しなければならない。
第十五条
監督検査部門及びその職員は、調査の過程で知り得た営業秘密に対して守秘義務を負う。
第十六条
不正競争の疑いがある行為に対して、いかなる組織及び個人も監督検査部門に通報する権利があり、監督検査部門は、通報を受けた後、法律により速やかに処理しなければならない。
監督検査部門は、通報を受理するための電話番号、住所又は電子メールアドレスを社会に公開し、且つ通報者の秘密を保持しなければならない。通報者が実名で通報し且つ関連する事実及び証拠を提供した場合、監督検査部門は処理の結果を通報者に告知しなければならない。
第四章 法的責任
第十七条
事業者が本法の規定に違反し、他人に損害を与えた場合、法律により民事責任を負わなければならない。
事業者の合法的な権益が不正競争行為によって損害を被った場合は、人民法院に訴訟を提起することができる。
不正競争行為により損害を被った事業者への賠償金額は、権利侵害により被った実際の損失に基づいて確定する。実際の損失を計算するのが困難な場合は、権利侵害人が権利侵害により得た利益に基づいて確定する。賠償金額には、事業者が権利侵害行為を制止するために支払った合理的な支出も含まなければならない。
事業者が本法第六条、第九条の規定に違反しており、権利者が権利侵害により被った実際の損失、権利侵害者が権利侵害により得た利益を確定するのが困難である場合、人民法院は権利侵害行為の情状に基づいて、権利者に三百万人民元以下の賠償をする旨の判決を下す。
第十八条
事業者が本法第六条の規定に違反して混同行為を行った場合、監督検査部門は、違法行為の停止を命じ、違法商品を没収する。違法経営額が五万人民元を超える場合は、違法経営額の五倍以下の罰金を併科することができ、違法経営額がない又は違法経営額が五万人民元未満の場合は、二十五万人民元の罰金を併科することができる。情状が深刻な場合は、営業許可証を取消す。
事業者が登記した企業名称が本法第六条の規定に違反する場合は、速やかに名称の変更登記の手続きをしなければならない。企業名称が変更されるまで、元の企業登記機関はその名称を統一社会信用コードで代替する。
第十九条
事業者が本法第七条の規定に違反して他人に対し賄賂を行った場合、監督検査部門は、その違法所得を没収し、十万人民元以上三百人民元以下の罰金を科する。情状が深刻な場合は、営業許可証を取消す。
第二十条
事業者が本法第八条の規定に違反し、その商品について虚偽の又は誤解を生じさせる商業宣伝をし、又は虚偽の取引などの方法により、その他の事業者が虚偽の又は誤解を生じさせる商業宣伝をすることを幇助した場合、監督検査部門は、その違法行為の停止を命じ、二十万人民元以上百万人民元以下の罰金を科する。情状が深刻な場合は、百万人民元以上二百万人民元以下の罰金を科し、営業許可証を取消すことができる。
事業者が本法第八条の規定に違反し、虚偽広告をした場合は、『中華人民共和国広告法』の規定により処罰する。
第二十一条
事業者が本法第九条の規定に違反し、営業秘密を侵害した場合、監督検査部門は、違法行為の停止を命じ、十万人民元以上五十万人民元以下の罰金を科する。情状が深刻な場合は、五十万人民元以上三百万人民元以下の罰金を科する。
第二十二条
事業者が本法第九条の規定に違反し、懸賞景品付販売を行った場合、監督検査部門は、違法行為の停止を命じ、五万人民元以上五十万人民元以下の罰金を科する。
第二十三条
事業者が本法第十一条の規定に違反し、競争相手の営業上の信用、商品の名声を害した場合、監督検査部門は、違法行為の停止、影響の除去を命じ、十万人民元以上五十万人民元以下の罰金を科する。情状が深刻な場合は、五十万人民元以上三百万人民元以下の罰金を科する
第二十四条
事業者が本法第十二条の規定に違反し、その他の事業者が合法的に提供するインターネット商品又は役務の正常な運営を妨害し、破壊した場合は、監督検査部門が違法行為の停止を命じ、十万人民元以上五十万人民元以下の罰金を科する。情状が深刻な場合は、五十万人民元以上三百万人民元以下の罰金を科する。
第二十五条
事業者が本法の規定に違反して不正競争に従事し、自発的に違法行為による危害の結果を除去又は軽減するなどの法定の状況がある場合、法律により行政処罰を法定範囲内で又は法定範囲を超えて軽減する。違法行為が軽微で速やかに是正し、危害の結果が生じなかった場合は、行政処罰を科さない。
第二十六条
事業者が本法の規定に違反して不正競争に従事し、行政処罰を受けた場合、監督検査部門は信用記録に記入するとともに、関連する法律や行政法規の規定により公示する。
第二十七条
事業者が本法の規定に違反した場合は、民事責任、行政責任及び刑事責任を負わなければならず、その財産が支払いに足りない場合は、民事責任を優先的に負うものとする。
第二十八条
監督検査部門の本法に基づく職責履行を妨げたり、調査を拒否又は妨害したりした場合、監督検査部門が是正を命じ、個人に対しては、五千人民元以下の罰金を科し、組織に対しては五万人民元以下の罰金を科すことができ、かつ公安機関が法律により治安管理処罰を科すことができる。
第二十九条
当事者が監督検査部門のなした決定に対し不服がある場合は、法律により行政復議を請求し又は行政訴訟を提起することができる。
第三十条
監督検査部門の職員が職権を濫用し、職務を怠慢し、私利により不正を働き又は調査過程において知り得た営業秘密を漏洩した場合、法律により処分する。
第三十一条
本法の規定に違反して、犯罪を構成した場合は、法律により刑事責任を追及する。
第五章 附 則
第三十二条
本法は2018年1月1日より施行する。 |