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中国商務部が『知的財産権
濫用の独占禁止に関するガイドライン』
など5つのガイドラインを制定


【出典:商務部ウェブサイト】

 

 中国商務部は、経済発展の新常態に適応し、「一帯一路」戦略を徹底させ、市場の競争秩序を維持し、消費者の利益を守るために、5つの関連するガイドラインを制定した。

一、厳格で公正な法執行、市場の公正な競争環境の構築

 ここ数年、世界的に合併・買収取引の規模は益々拡大している。2016年の世界の合併・買収取引総額は、約24.1兆人民元、中国の合併・買収市場の取引総額は約5.2兆人民元で、世界市場の約22%を占めている。そのうち、2016年、商務部が結審した事業者結合の独占禁止案件に係る取引総額は約6.1兆元で、世界の合併・買収取引額の25%を占めている。大型の合併・買収ケースが増加し続け、市場は益々集中し、市場競争に対する悪影響が増している。

 したがって、中国商務部は、集中度が高い市場での合併・買収の動向に細心の注意を払い、競争を排除または制限する重要案件に対しては、禁止又は制限的条件を付ける措置を取っている。2013年から20178月末時点で、事業者結合の届出は1,483件、立案(受理)は1,390件、結審は1,408件であった。結審した案件のうち、禁止が1件、条件付承認が14件であり、厳格に法律に基づいた公正な法執行をして、市場の公正な競争を保護した。具体的な事例は下記の通りである。

  • 20146月、中国は、マースクライン、MSCCMA CGMの三社によるネットワーク結成を禁止し、世界トップ3の大手海運会社が、密接なアライアンスを結成することにより、アジア・ヨーロッパ航路のコンテナ輸送サービス市場において、競争の排除・制限が生じるのを回避した。
  • 20144月、中国は、マイクロソフトによるノキアの携帯事業の買収を条件付きで承認し、中国のスマートフォン市場の公正競争と消費者の利益を守った。
  • 201510月、中国は、ノキアによるアルカテル・ルーセントの買収を条件付きで承認し、無線通信の標準必須特許ライセンス市場の公正な競争を保護した。
  • 20167月、中国は、アンバイザー・ブッシュ・インベブが保有する49%の華潤雪花株を手放すという条件付で、アンハイザー・ブッシュ・インベブによるSABミラーの買収を承認し、中国のビール市場の公正な競争と膨大な数の消費者の利益を保護した。
  • 20174月、中国は、デュポンの水稲用殺虫剤、水稲用選択的除草剤などの業務を分離するなどの条件付きで、ダウ・ケミカルとデュポンの合併を承認し、水稲農業化学製品市場の公正な競争、膨大な数の農家などの消費者の利益を保護した。
  • 20174月、中国商務部は、ブロードコムによるブロケード コミュニケーションズ システムズの買収、アボットによるセント・ジュード・メディカルの買収、湖南科力遠新能源株式会社とトヨタ中国などの企業との合弁会社設立、メルクによる安智(AZ Electronics Materials)の買収、サーモフィッシャーサイエンティフィックによる立菲の買収、バクスターによるガンブロの買収、メディアテックによるMスター・セミコンダクターの吸収合併、丸紅によるガビロンの買収、グレンコア・ピーエルシーによるエクストラータの買収案件について条件付で承認し、集中の競争への不利な影響を排除し、半導体、医薬品と医療機器、情報通信、自動車部品、大口農産品と鉱物製品などの市場の公正な競争を維持し、消費者の利益を保護した。

 そのほか、中国は法律に基づいて届出していない案件についても積極的に調査し、独占禁止法による抑止力を強化している。商務部は法律に基づいて届出していない案件の調査力を絶えず強化し、法律に基づいて、キャノンによる東芝メディカルの買収、美年大健康グループ(人間ドックの受診施設)による慈銘体検の買収、ブロックバスターとマイクロソフトの合弁会社設立など17件に対して処罰を科すとともに、ウェブサイトでも処罰決定書を公布して、法執行による抑止力を強化し、『独占禁止法』の権威を維持した。

二、制度構築を強化し、審査業務の規範化を促進する

 独占禁止の法律と制度の構築は、法執行を強化するための基盤である。中国商務部は、法律と制度の構築を非常に重視し、7つの部門規則と規範的文書、及び7つの指導的文書を制定し、完備化した事業者結合の独占禁止の審査のための法律及びその関連制度体系を構築して、法執行の透明性を向上させた。

 法執行の効率を高めるために、中国は既に『事業者結合簡易案件の適用基準に関する暫定規定』を公布し実施しており、また、関連する『事業者結合簡易案件の届出に関する指導意見』を制定して、簡易案件制度を構築し、簡易案件の届出資料に対する要件を減らして、企業の負担を軽減した。

 条件付案件の確定、監督及び執行を規範化するために、中国はまた『事業者結合の制限的条件の付加に関する規定(試行)』及び『監督受託人委託契約書(モデルテキスト)』を公布し実施し、付加条件制度を整備した。このほかに、『事業者結合案件の届出名称の規範に関する指導意見』も公布し実施し、『事業者結合の届出に関する指導意見』などの指導的文書を改訂して、独占禁止の審査制度を更に改善した。

 経済の新常態に適応するために、中国は既に関連部門に対し『独占禁止法』の改正に関する研究作業を展開し、『事業者結合審査弁法』を改正し、更に届出及び審査基準を明確化し、法執行手続きを規範化して、事業者にオープンで透明且つ予測可能な行動規範を提示するよう指示した。

 三、法執行サービスのレベルを向上させ、公正で文明的な法執行の厳格な規範化を促進

 201510月、中国は案件の調査処理メカニズムに対して「フラット化」改革を実施し、段階的な処理メカニズムを、業種に応じた「一本化」メカニズムに変更し、審査プロセスを減らして審査の専門性を強化した。重大で複雑な案件の審査では、審査の結論へ科学的な根拠付けをするために、専門のコンサルティング機関に委託して経済分析を行い、法律及び経済分析、現地調査、シンポジウムなどの様々な調査方法を総合的に使用した。

 案件数が急速に増加したことで、中国は、審査効率の持続的な向上を図るために、簡易案件制度と全プロセスの電子化などの措置の導入を開始した。2016年の初歩的審査段階(30日)の結審案件は324件で、全案件の82%を占め、初歩的審査段階の結審率は2013年の12%に比べ70%増加した。2017年上半期の平均立案期間は2016年通年の水準に比べ19%も短縮し、平均結審期間は2016年通年の水準に比べ11.6%も短縮し、95%の簡易案件は初歩的審査段階(30日以内)に結審した。

 また、中国は自発的なサービス提供の意識を強化し、企業からの届出相談を受け入れてから、企業に立案前相談サービスを提供し、当事者が届出しやすくなるように、届出の電子化を実施し、届出資料を受領して5日以内に全ての補充事項について一回で通知している。法執行の透明性を高めるために、案件の情報公開度を絶えず向上させ、法律に基づいて決定が下された禁止案件、条件付き承認案件の公告及び法律に基づいて届出されてない案件の処罰決定は、全て商務部のウェブサイトに公表するとともに、事実及び法的依拠を説明している。簡易案件に関する情報も全てウェブサイトに公表し、四半期ごとに無条件の承認案件の基本情報を公表しており、2013年から計1,258件が公表された。

四、国際交流を強化し、国際競争分野での発言力を高める

 中国商務部は既に世界の主要国・地域と協力メカニズムを構築しており、現時点ですでに、ヨーロッパ連合、アメリカ、韓国、オーストラリア、日本など10の国・地域と覚書を締結している。

 クロスボーダーの合併・買収の増加に伴い、多くの国・地域に届出を出さなければならなくなった。近年、中国商務部は、アメリカ、ヨーロッパ連合、ドイツ、カナダなどの国・地域の競争当局に協力して、数十以上の重大なクロスボーダー合併・買収案件の法執行協力を実施し、合併・買収取引の確定性を強化し、中国のクロスボーダー合併・買収審査の国際的影響力を拡大してきた。中国は既にアメリカ、ヨーロッパ連合とともに世界三大独占禁止国・地域と呼ばれている。

 中国は現在すでに世界第2位の経済大国、世界の貨物貿易で世界第1位の輸出国及び世界第2位の輸入国であり、外資誘致は、25年連続で開発途上国中トップ、対外投資は5年連続世界トップ3に入っている。近隣諸国を基軸とした自由貿易圏ネットワークが徐々に形成され、多国間・二国間と地域・サブ地域間との協力が広範に展開され、競争ルール体系の構築は多国間・二国間自由貿易協定の重要な課題となっている。現在、中国が、韓国、オーストラリア、グルジア共和国などと取り交わした6つの自由貿易協定において、既に競争に関する章、節、条項が制定された。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの7つの自由貿易協定と経済協定との競争課題の交渉を進めていくうえで、地域間と二国、多国間の経済貿易関係の健全な発展を促進するために、競争分野の国際協力も強化している。

 中国は、アジア太平洋経済協力(APEC)、経済協力開発機構(OECD)、国連貿易開発会議(UNCTAD)など多国間の国際会議及びアメリカ弁護士会、ドイツ国際競争会議などの多国間交流に積極的に参加し、独占禁止の立法及び法執行面の国際実務を把握し、多国間協力プラットフォームを利用して、ほかの国・地域との交流を強化している。

 五、委員会、事務局の統合的な協調を強化し、独占禁止の業務協力を形成する

 中国は、市場競争状況全体の評価を開始し、自動車、鉄鋼などの市場競争状況の評価を完成させた。法執行業務の準備として、41の主要産業分野の工業製品の集中度データベースを構築し、船舶、医薬品、電力、インターネット、自動車、鋼鉄などの主要産業のデータベースを保守、整備した。 

 中国は、すでに『知的財産権濫用の独占禁止に関するガイドライン』、『自動車産業の独占禁止に関するガイドライン』、『独占禁止案件の事業者承諾ガイドライン』、『水平的独占協定のリニエンシー制度の適用に関するガイドライン』及び『独占協定免除の一般的条件及び手続きに関するガイドライン』など5つのガイドラインを制定し、法執行の透明性を向上させ、法執行業務の規範化を促進している。また、宣伝指導を強化するために、2013年からすでに12回の『独占禁止法』の宣伝研修を開催し、企業の独占禁止の法規に対する意識及び独占禁止の法的リスクに対応する能力を強化している。

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