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杭州、寧波の知的財産権法廷が正式に発足


【出典:中国知識産権雑誌】

 201798日、杭州、寧波の知的財産権法廷が、それぞれ杭州と寧波で正式に発足した。浙江省省長は、省全体の法院システムによって近年イノベーション主導型発展戦略の実施が積極的に推進され、知的財産権審判分野の改革とイノベーションが継続的に強化され、知的財産権の司法保護が拡大し、政府の財産権保護の強化において、省全体の法院システムが重要な推進作用を果たしていると評価した。今後、省政府は、知的財産権法廷の設置を強くサポートし、全面的に知的財産権の司法保護を推進する。

 近年、浙江省は国家知的財産権戦略及びイノベーション主導型発展戦略を徹底的に実施し、知的財産権の創造、運用及び管理能力を絶えず向上させており、特許許可件数、一万人あたりの特許保有数、及び登録商標数など、いずれも全国で上位に位置しており、既に起業イノベーション及び知的財産権の先駆的な省となった。

 それに伴い、新技術、新産業、新業態及び新モデルに関連した事件が大数出現し、テクノロジーイノベーションの発展を保護する司法サービスに対するニーズも増え続けている。この5年間、省全体の法院が受理した知的財産権の民事一審事件は7.6万件余りで、長江デルタ地区の全事件数の51.3%を占めている。そのうち専利(特許、実用新案、意匠)は8,364件で、全国法院が受理した事件総件数の1/6を占めている。これら事件には1,759社の大型・中型のハイテク企業が関連しており、事件の対象額は総額7.2億人民元に達した。

 浙江省法院は2000年から知的財産権の審査の専門化を進めている。現在、浙江省内の11の中級法院と33の基層法院が知的財産権事件の管轄権を有し、そのうち義烏法院は、専利関連の事件を審査する権限を持った全国で最初の基層法院である。省全体の約20の事件が最高法院の指導的事例又は知的財産権の典型的事例に選ばれた。それと同時に、浙江省は、知的財産権の「三合一」の審判制度、司法ビッグデータ分析の運用メカニズム、社会多様化紛争解決メカニズムなど、様々な改革イノベーション業務においても、全国で上位に位置しており、規定人数内の裁判官を中心とした知的財産権専門審査チームの編成も基本的に完成した。2011年に、浙江高院の知的財産権審判廷は、世界知的所有権機関から、初めて「中国商標保護金賞」を授与され、中国の法院システムで初めてこの賞を受賞した機関となった。

 北京、上海、広洲知的財産権法院と南京、蘇州、武漢、成都知的財産権専門審判機関の設立によって、専利技術関連事件の集中管轄は、中国知的財産権司法保護体制構築の発展趨勢となった。浙江省の11の中級法院のうち10の中級法院が専利事件の管轄権を有しているが、専利事件の管轄分布は相対的に分散しており、各法院が受理した専利事件の件数は十分ではなく、技術関連事件の審理経験の総括や専門裁判官の育成には不十分であり、高品質且つ高効率な紛争解決の司法体系の構築においても役立つものでなかった。

 2014年から2016年までの間で、杭州、寧波の両地域の中級法院が受理した専利技術関連の一審民事事件の総数は、三年連続省全体の総数の40%を超えた。一方、知的財産権事件の件数が比較的少ない法院の知的財産法廷は、知的財産事件を審理するほかに、その他の民事・商事事件の審理業務も担当していた。

 知的財産権保護メカニズムを更に完備化し、審判資源の配分を最適化し、裁判基準を統一するために、浙江省党委員会、省政府は知的財産権専門審判機関の設立を非常に重要視し強く支持した。浙江省党委員会第13期第4回総会の『決定』で、知的財産権専門審判機関の設立を浙江省の重点改革項目に入れることを検討することになった。

 20178月、最高法院は、杭州中級法院及び寧波中級法院に、知的財産権事件を専門に取扱う機関を設置することを承認した。これら機関は行政区を跨いだ管轄モデル及び知的財産権の民事、行政及び刑事事件の「三合一」の審判システムを実施する。98日から、杭州市上城区(元杭州中級法院育成センタービル)に設置された杭州知的財産権法廷は、正式に下記の事件の審理を開始する。

1)杭州市、嘉興市、湖州市、金華市、衢州市、麗水市の管轄区内で発生した、専利、ノウハウ、コンピュータソフトウェア、植物新品種、集積回路配置図設計、馳名商標の認定及び独占禁止法に係る紛争に関連する第一審の知的財産権民事事件

2)杭州市、嘉興市、湖州市、金華市、衢州市、麗水市の管轄区内で発生した、訴訟対象額が800万人民元以上の商標権、著作権、不正競争、技術契約紛争に関する第一審知的財産権の民事事件

3)杭州市、嘉興市、湖州市、金華市、衢州市、麗水市の管轄区内で発生した、県級以上の地方人民政府がなした著作権、商標、専利、不正競争などに関する行政行為に対して訴訟を提起した第一審の知的財産権行政事件

4)杭州市中級人民法院が管轄すべき第一審の知的財産権刑事事件

5)杭州市管轄区内の基層人民法院が下した第一審の知的財産権の民事、刑事、行政事件の判決を不服とした上訴案件

 寧波市鄞州区寧東路に設立された寧波知的財産権法廷は、正式に下記の事件の審理を開始する。

1)寧波市、温州市、紹興市、台州市、舟山市の管轄区内で発生した、専利、ノウハウ、コンピュータソフトウェア、植物新品種、集積回路配置図設計、馳名商標の認定及び独占に係る紛争に関連する第一審の知的財産権民事事件

2)寧波市、温州市、紹興市、台州市、舟山市の管轄区内で発生した、訴訟対象額が800万人民元以上の商標権、著作権、不正競争、技術契約紛争に関する第一審知的財産権の民事事件

3)寧波市、温州市、紹興市、台州市、舟山市の管轄区内で発生した、県級以上の地方人民政府がなした著作権、商標、専利、不正競争などに関する行政行為に対して訴訟を提起した第一審の知的財産権行政事件

4)寧波市中級人民法院が管轄すべき第一審の知的財産権刑事事件

5)寧波市管轄区内の基層人民法院が下した第一審の知的財産権の民事、刑事、行政事件の判決を不服とした上訴案件

 知的財産権事件の最大の特徴は専門性が高いことであり、杭州、寧波知的財産権法廷は知的財産権事件の専門的な審判機関として、まさに「専門性」が強調されている。杭州と寧波は、行政区を跨いだ管轄法廷を設立するための好条件が揃っている。杭州は最初の国家知的財産権モデル都市であり、2015年には、国家自主イノベーションモデル地区、中国(杭州)クロスボーダー電子商取引総合試験区として承認され、中国のイノベーション環境都市のトップ10にも選ばれた。特許の付与件数は11年連続全国の省都のトップとなり、情報経済の地方経済の成長に対する貢献は50%を超え、35の国家級のインキュベータを有し、30の国家級の育成センターを有し、その数は副省級都市のトップである。杭州中級法院は、2002年に知的財産権審判廷を設立し、浙江省で初めて専利事件を審理する権利を有する中級法院となった。現在、管轄区内では、一般知的財産権の民事事件を管轄する7つの基層法院を有している。2010年以降、杭州の両級法院は、知的財産権の民事事件を計18,959件受理し、年平均増加率は53.4%に達した。2016年には、杭州地区は、知的財産権の民事事件を6,382件受理し、事件数は、省内のほかの地級市を遥かに上回り、省全体の同類事件の総数の31.4%を占めた。杭州中級法院は専利一審の事件を735件受理し、省全体の同類事件の総数の31.8%を占めた。

 寧波市は中国計画単列市(国家社会及び経済発展計画単列市の略称)、世界クラス港都市及び全国最初の「中国製造2025」の試行モデル都市として、都市総合競争力は全国トップ15に入っている。寧波市党委員会、市政府は知的財産権事業を非常に重要視し、知的財産権戦略を徹底的に実施している。2016年には、寧波市全体の専利出願件数は68,244件に、専利権付与件数は40,792件に達した。そのうち、発明の出願件数は19,328件、特許権付与件数は5,669件、全市の一万人当たりの有効発明特許保有数は23件で、いずれも全国平均、全省平均を上回った。寧波中級法院は2005年に知的財産権審判廷を設立し、現在、管轄区内には一般の知的財産権民事事件の管轄権を有する6つの基層法院がある。

 この5年間、寧波の両級法院は、知的財産権事件を計9,934件受理した。そのうち知的財産権の民事事件は、専利事件1,330件を含む8,676件で、知的財産権の刑事事件は1,253件である。寧波地区法院が結審した事件の中には有名な事件が多く、この3年間で、4件の事件が全国知的財産権事件の典型的な50事例のなかに選ばれ、1件が最高法院知的財産権の年度報告で公布された典型的な32事例のなかに選ばれた。寧波中級法院と市の知的財産局などの機関が協力して寧波市の知的財産権を総合的に運用し、第三者を保護するプラットフォームを構築し、「訴訟と調停・仲裁の切れ目のない接続、紛争の多様化解決」を特色とする「寧波モデル」を形成して、1,293件の紛争を解決し、中国最高法院、国家知識産権局の高い評価を得た。 

 杭州知的財産権法廷、寧波知的財産権法廷はそれぞれ杭州中級法院と寧波中級法院の知的財産権廷を基礎として設立され、独立機関の方式で運営され、広域管轄の試行を実施している。法廷はフラット化した審判運営を推進し、法廷長1名、その下に35の審判チームを設けている。関連する補助的な事務作業を遂行するために、知的財産権裁判官に1~2名の裁判官助手及び1名の書記官を配置するように努力している。また、技術調査官が関連する技術事実の解明という重要な役割を発揮できるように、技術調査官室を設置し、フルタイム又はパートタイムの技術調査官を雇用する予定である。

 現在、杭州知的財産権法廷チームは、メンバー6名の裁判官と裁判官助手全員が修士号、博士合の学位を持ち、10年以上審判経験をもっている。寧波知的財産権法廷チームには、35歳以下の若い公安部門の幹部・警官が8名おり、全法廷の公安部門の幹部・警官の60%以上を占めている。近いうちに杭州には912名、寧波法廷には710名の規定人数内の裁判官が一時的に配置される。行政区を跨いだ審判の当事者の負担を軽減するために、杭州、寧波法廷には既に受理専用窓口を設け、行政区を跨いだ受理サービス及び知的財産法廷審問システムを開始した。当事者は訴状を所在地の法院に提出し、出廷することなくオンラインで裁判を開始することができる。

 浙江省の法院は、行政区を跨いだ受理に基づいて、各地区法院にある専利技術関連事件を審判する専門家の力量を十分に利用し、送達、証拠収集、保全、調停、執行などの司法権限を行政区を跨いで委任する方法により一部の司法機能を各地区の中級法院にシフトさせ、省全体の知的財産権の訴訟と調停を繋ぐメカニズムの統合、最適化に注力し、地域間の訴訟と調停を繋ぐ体制を構築し、省全体の法院のシステム化、常態化、制度化した知的財産権審判の協力連動メカニズムを構築し、省全体が一つになり、地域の司法協力を形成し、簡単な専利技術関連紛争を現地で解決し、紛争を徐々に解決することを促進する。 

 同時に浙江省法院は専利技術関連の専門審判人材の選出、動的管理と出向制度を構築する。法廷審判チームの編成過程において、できるだけ管轄区内の既存の核心業務を行っている者を選ぶ。法廷が受理した事件の総件数の変化に応じて、規定人数内の裁判官の省級統括及び科学的配置により、動的管理を行う。省内の専利技術関連事件の審理に精通した規定人数外の裁判官を定期的に出向させる制度を構築し、2つの法廷の専門審判の能力を充実させ、専門的、複合的な知的財産権審判チームを作り上げる。

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