中国 インターネット時代の到来に応じて
著作権でビッグデータを保護
インターネット時代の情報デジタル化により、複製及び再利用が可能となったことで、著作権保護の重要性が浮き彫りとなった。国連が発表した白書『ビッグデータによる発展促進:その挑戦と機会』では、2017年全世界のビッグデータ市場の売上げは500億米ドルに達すると予測されており、また、中国市場情報センターの統計によると、中国のビッグデータの市場規模は、2018年には463.4億人民元に達する見込みである。ビッグデータ市場の成長に伴い、ビッグデータ関連の紛争が絶えず起きており、中国は既にこの問題に気付いて取組みを始め、2017年6月に国家版権局は、「電子版著作権登録証書規範」を公布し、紙本の著作権登録証書の代替として電子方式の著作権登録証書の導入に着手した。
北京市海淀区人民法院中関村法廷及び中国インターネット協会調停センターが共同発表した『ビッグデータと知的財産権司法保護の現状及び展望に関する調査研究レポート』に発表されたデータによると、中国のビッグデータ及び司法実務関連事件において、著作権関連のものが23%を占めている。インターネット時代において、各ウェブサイトには大量のビッグデータ情報が蓄積されており、これらの情報は、主にインターネットプラットフォームがサービスを提供する過程で蓄積した個人ユーザーのデータや、分析して社会に利用される個人データなどの統計データで、これらの情報もまた簡単に他のウェブサイトから取れる。
各主要インターネットプラットフォームには、このようなビッグデータの侵害事件が絶えず発生している。最も典型的なのは、アプリケーションのニュースが無断で他のウェブサイトに転載され、転載された際にユーザーコメントも一緒に切取られ、これらのコメントの内容が転載される度に拡散されていくことだ。中国の搜狐(SOHU.com)は、中国の大手ポータルサイトで、販売情報を主に提供するサイトを展開しているが、生のユーザー関連データを提供するために、現地に行って撮影したり、調査したり、周辺環境の実地確認もしたりして、VR製品を作成し、それと同時にこの製品に対し購入意思のあるユーザーコメントも蓄積しているが、もし他ウェブサイトが搜狐のデータ全てを切り取ってシェアした場合、ユーザーコメントも一緒にシェアされることになる。
問題は、これらユーザーコメントを含む原始データの権利の主体が、一体誰なのか。権利が侵害された後、訴訟をいかに提起するか。自分の権益を守るために訴訟の主題をいかに選択するか、である。現在、中国の司法の実務では、現行の法律規定が十分整備されていないため、これらの問題に対して明確の方向性がない。
ビッグデータの処理プロセスは主に4つの段階に分けられる:
- 収集及び事前処理:データ収集後、直接使用することができず、ある程度整理してはじめて使用することができる。
- データの保存及び管理。
- データを保存した後に処理及び分析を行う。
- 処理及び分析されたデータが結果という形になった後、データの活用を開始する。
上記の第2段階において、データを収集、整理し、データベースやクラウドデータベースを形成した後、これらの内容は著作権により保護することができる。第4段階において、最終結果が、データの具象化により、主にソフトウェアの形で存在することで、ソフトウェア著作権を適用して保護することもできる。
北京市海淀区人民法院中関村法廷の裁判長は、「ビッグデータの著作権保護法令は主に次の二つに適用される。一つはデータベース著作権の保護、もう一つは、ビッグデータの応用過程で形成されたソフトウェアの保護である」との見解を示した。前者はビッグデータで編集された作品に対する保護である。ポイントはデータ自体ではなく、ビッグデータに現れた独創性、及び独創性が反映された選択、編集、データベースの体系及び構造を保護するのである。後者の保護するビッグデータソフトウェアは、コピーが非常に発生しやすい。ビッグデータソフトウェア作品のソースコードは、コピーや類似の問題が直接発生し、又は、第三者の悪意ある書き換えによって、ビッグデータソフトウェアがブロックされ、さらに権利侵害行為に発展する可能性がある。この過程において、侵害側は、技術中立性の抗弁を提出するかもしれないが、権利侵害の方式は、技術上の中立なのか内容上の中立なのかで異なる。現在この種の紛争に係るビッグデータソフトウェアについて、内容の侵害なのか、技術の侵害なのか、まだ結論が出ていない。これは現段階で最も処理しがたい法律問題であるが、司法実務では、模索研究が続いている。ビッグデータの保護手段はたくさんあるが、ビッグデータの特殊性から、保護の面においては適切な権利と排他性の付与が必要である。それと同時に、ビッグデータ自体のオープン性及び流動性にも配慮しなければならないため、将来司法実務によって関連する問題をはっきりとさせる必要がある。 |