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南京、蘇州、武漢、成都に新たに知識産権法院を設置


【出典:中国企業知的財産権網】

 中国には現在北京、上海、広州の三か所に知識産権法院があり、これらは20148月に開かれた全国人民代表大会常務委員会が『北京、上海、広州における知識産権法院の設置に関する決定』(以下「決定」と略称)に基づいて設置したものである。「決定」によると、設置から3年後に、最高法院が全国人民代表大会常務委員会に対し実施状況を報告しなければならないとある。2017年は3年目となることから、最高法院は上海で作業フォーラムを開き、この三つの知識産権法院はいずれも顕著な効果を上げているとの結論が出された。

 このため、最高法院は南京、蘇州、武漢、成都の4つの都市で、地域を跨いだ一部の知的財産権事件を管轄する専門審判機関を更に設置するよう指示した。現在、南京知識産権法廷、蘇州知識産権法廷はすでに設置された。このことから、中国が全国への知識産権法院/法廷の設置を計画し、知的財産権の司法体制の改革を進めていることが伺える。

現在北京、上海、広州の三つの知識産権法院と四つの専門法廷は、いずれも技術関連の第一審事件を主に審理しているが、将来、知識産権上訴法院が設置された場合、第一審と第二審ともに専属管轄となる。

 知識産権の専門審判機関を設置することは、国家の経済戦力と深く関係している。成都、武漢、南京、蘇州の4つの都市は長江経済ベルトの上流、中流、下流地域に位置しているため、知識産権専門法廷の設立地に指定された。将来、北京知識産権法院は、地域を跨いで北京、天津、河北地区の技術関連事件を審理する見込みである。

 また、この4つの都市の経済発展及び技術イノベーションの基盤は他の都市より良く、専門法廷の設置に対しても積極的である。例えば、江蘇省は「積極的に知識産権法院の設置に取り組む」ことを江蘇省の「『十三五』知的財産権発展計画」に組み込んだ。さらに、江蘇省には、特許出願する企業が2.9万社以上あり、そのうちの73社は国家知識産権局から模範的な競争優位企業に選出され、その数は全国1位である。四川省には、国家知識産権強県パイロットプロジェクト模範県が37県あり、その数は全国一位である。

 中国では知的財産権事件を技術関連事件と一般事件に分けている。技術関連事件には特許、ノウハウ、コンピュータソフトウェア、集積回路配置図設計などが含まれ、一般事件には、商標、著作権、不正競争などが含まれる。知的財産権の種類は多種多様で、専門的な要求も益々高くなっているため、知識産権専門審判機関を設置する必要性が出てきている。合理的な管轄の振り分けによって、科学的な分業が達成でき、それによって効率を高めることができる。今回新たに設置された4つ知識産権専門法廷の管轄範囲についても、このような専門分業に対する考慮がなされている。

 この外、この4つの都市の知的財産事件の件数は他の都市より多く、このような専門分業された専門機関に対する需要がより切迫しており、裁判官の審判経験も比較的豊富である。例えば、江蘇省が2016年の一年間に受理した特許関連の事件数は6,390件で、全国トップである。

 中国の知的財産権事件の司法審判改革のポイントは、専門化、脱行政主導である。今後の動向として知的財産権審判は引き続き広域的な集中審判という目標に向けて発展していくものと予想される。最高法院が成都、武漢の知識産権法廷にそれぞれ四川、湖北全省の技術関連の第一審民事事件を管轄させるよう指示したことは、南京、蘇州の知識産権法廷にそれぞれその周辺の江蘇省地級市の同類事件を管轄させることを表している。

 今後、事件はさらに集中管轄されることになるため、法院の審理は省級の行政区範囲を超えることになるであろう。最高法院は新たに京津冀(北京市、天津市、河北省)において率先した知的財産権事件の審判体制の改革を統括する「京津冀技術関連事件広域管轄作業指導チーム」を設立する考えである。

 とはいえ、将来各省全てに知識産権法院を設置できるわけではない。現在中国には、技術関連の知的財産権事件を審理する資格がある中級法院が百ほどあるが、これらの法院をいかに統合するかは難題である。現在、広州には、広東省全省の技術関連事件を集中的に管轄する知識産権法院があるが、最高法院は深圳市の二級法院が引き続き一部の技術関連事件を管轄できるとした回答・指示をしたことによって、深圳市の知的財産権事件数が実質的に広州を上回り、事件の技術的難易度がより高く、渉外事件も多くなっており、法律専門家からは深圳市も単独の知識産権法院を設置する条件を備えているとの意見が出ている。

 広東と深圳の前例もあって、南京市と蘇州市で知識産権法廷を設立するにあたり、最高法院は、「蘇州知識産権法廷は蘇州市、無錫市、常州市及び南通市の知的財産権事件のみを管轄し、江蘇省とその他の9つの市は南京知識産権法廷の管轄とする」との指示を下した。

 既に設置された広州知識産権法院は、設置された当初経験がなかったため、例えば、広州知識産権法院は広州市人民代表大会が監督し、広州知識産権法院の院長は広州市人民代表大会が任命するのに、全広東省の事件を審理しなければならないなど、組織体制の設計上不備があった。今回設置された4つの知識産権法廷は法院ではないため、人事の任命及び編制ではもっと融通が利く。

 広州知識産権法院は設置されてから、広東省全省の技術関連事件のみを集中的に管轄しているが、その他の中級法院の知識産権審判廷が廃止されるわけではなく、その地域の一般事件について引き続き審理する。今回新たに設置された4つの専門法廷も同様に、一部の技術関連事件のみを集中的に管轄するだけで、全ての知的財産権事件を管轄するものではない。

 注意が必要なのは、蘇州と南京の知識産権法廷が管轄する事件には、その地域の中級人民法院が管轄すべき第一審知的財産権刑事事件も含まれている点である。知的財産権事件の審理の特徴は、「民事、行政、刑事の三位一体」であるが、中国の刑事訴訟法には、第一審の知的財産権刑事事件は基層法院が審理するとも規定されている。したがって、中級法院レベルに相当する知識産権法院が設置される場合、その管轄の範囲に刑事事件は含まれない。今回の4つの知識産権法廷が第一審刑事事件を管轄するというのは、刑事訴訟法の例外である。

 知識産権法院の試行は2017年で満3年になり、今後は「知識産権上訴法院の設立」という次の計画段階に入る。知識産権上訴法院の設立は、裁判基準の統一化に資するものとなる。北京に全国唯一の知識産権上訴法院を設立することを提案する学者もいるが、訴訟の利便性を考慮して、大きく地域を区分し、いくつかの分院又は巡回法廷を設置することも考えられる。今後、どう発展するか引き続き注目する必要がある。

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