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中国最高人民法院 
商標権利付与、権利確定に係る
行政事件に関する規定を公布

【出典:北大法宝】

 《最高人民法による商標権利付与、権利確定に係る行政事件の審理における若干の問題に関する規定》が20161212日に最高人民法院審判委員会の第1703回会議で可決された。ここにこれを公布し、201731日から施行する。

最高人民法院による商標権利付与、権利確定に係る行政事件の審理における若干の問題に関する規定

20161212日最高人民法院審判委員会第1703回会議可決、201731日施行 法釈〔20172号)

 商標の権利付与、権利確定に係る行政事件を正確に審理するため、《中華人民共和国商標法》《中華人民共和国行政訴訟法》などの法律の規定に基づき、審判実務を考慮に入れて、本規定を制定する。

第一条 

本規定において、商標権利付与、権利確定に係る行政事件とは、相手方又は利害関係人が国務院工商管理部門商標評審委員会(以下、「商標評審委員会」と称す。日本の審判部に相当する。)の下した商標拒絶査定の復審(不服審判)、商標不登録の復審、商標取消の復審、商標無効宣告及び無効宣告の復審などの行政行為を不服として、人民法院に訴訟を提起する事件をいう。

第二条

人民法院が、商標権利付与、権利確定に係る行政事件について審理する範囲は、通常、原告の訴訟請求及び理由に基づいて決定する。原告が訴訟において主張を提出していないが、商標評審委員会の関連認定に明らかに不適切なところが存在する場合、人民法院は、各当事者が意見陳述した後、関連事由について審理を行い且つ判決を下すことができる。

第三条

商標法第10条第1項第1号に規定する中華人民共和国の国名などと「同一又は類似する」とは、商標の標識が全体的に国名などと同一又は類似であることをいう。

中華人民共和国の国名などが含まれるが、全体的に同一ではなく、又は類似ではない標識について、当該標識を商標として登録することが国家の尊厳を害するおそれがある場合、人民法院は商標法第10条第1項第8号に規定する事情に該当すると認定することができる。

第四条

 商標の標識又はその構成要素が欺瞞性を有し、商品の品質等の特徴又は産地について公衆に誤認を生じさせ易く、商標評審委員会が2001年改正の商標法第10条第1項第7号に規定する事情に該当すると認定した場合、人民法院は、これを支持する。

第五条

商標の標識又はその構成要素が、わが国の社会公共の利益及び公の秩序に対し消極的、マイナスの影響を与えるおそれがある場合、人民法院は、商標法第10条第1項第8号に規定する「その他の悪影響」に該当すると認定することができる。

政治、経済、文化、宗教、民族等の分野の公人の氏名等を商標として登録出願する場合は、前項にいう「その他の悪影響」に該当する。

第六条

 商標の標識が、県級以上の行政区画の地名又は公衆に知られた外国の地名及びその他の要素からなるが、全体的に地名とは異なる意味を有する場合、人民法院は、商標法第10条第2項の事情に該当しないと認定しなければならない。

第七条

人民法院は、係争商標が顕著な特徴を有するか否かを審査するとき、商標の指定商品の関連公衆の通常の認識に基づいて、当該商標が全体的に顕著な特徴を有するか否かを判断しなければならない。商標の標識中に描写的要素が含まれるものの、全体的に顕著な特徴に対して影響がない場合、又は描写的標識が独特の方法で表現されていて、関連公衆がそれによって商品の出所を識別できる場合は、顕著な特徴を有すると認定しなければならない。

第八条

係争商標が外国語の標識であるとき、人民法院は、中国国内の関連公衆の通常の認識に基づいて、当該外国語の商標が顕著な特徴を有するか否かを審査し、判断しなければならない。標識中の外国語の固有の意味が指定商品の顕著な特徴に影響を与える可能性があるが、関連公衆の当該固有の意味に対する認知度が低く、当該標識によって商品の出所を識別できる場合は、顕著な特徴を有すると認定することができる。

第九条

商品自体の形状又は商品自体の形状の一部のみを立体標識として商標登録出願をし、関連公衆が通常の状況下でそれを商品の出所を示す標識と識別することが容易でない場合、当該立体標識は、商標としての顕著な特徴を有しない。

当該形状が出願人の独創であること又は最も早く使用したものであることは、必ずしも商標としての顕著な特徴を有することを意味しない。

1項にいう標識が長期にわたり又は広く使用されたことにより、関連公衆が当該標識によって商品の出所を識別できるに至った場合、当該標識は、顕著な特徴を有すると認定することができる。

第十条 

係争商標が法律に定める商品名称又は長く使用され定着した商品名称に該当する場合、人民法院は、商標法第11条第1項第1号にいう普通名称に該当すると認定しなければならない。法律の規定又は国家標準、業界標準により、商品の普通名称に該当する場合は、普通名称であると認定しなければならない。関連公衆が、ある特定の名称がある特定の種類の商品を指すと一般的に認識している場合は、長く使用され定着した普通名称であると認定しなければならない。専門の参考図書、辞典等において商品名称として記載されている場合は、長く使用され定着した普通名称を認定する際の参考とすることができる。

長く使用され定着した普通名称は、通常、全国範囲における関連公衆の通常の認識を判断基準とする。歴史・伝統、風俗習慣、地理的環境等の要因により形成された関連市場に定着している商品の、当該関連市場で一般的に使用されている名称について、人民法院は普通名称と認定することができる。

係争商標の出願人が、出願人の登録出願した商標が一部地域で長く使用され定着した商品名称であることを明らかに知っていた又は知り得たはずの場合、人民法院は、その登録出願された商標を普通名称とみなすことができる。

人民法院は、係争商標が普通名称に該当するか否かを審査し、判断するとき、通常、商標の出願日時点の事実状態を基準とする。登録査定時に事実状態に変化が生じた場合は、登録査定時点の事実状態によってそれが普通名称に該当するか否かを判断する。

第十一条

商標の標識が単に又は主に使用する商品の品質、主な原料、機能、用途、重量、数量、産地等を描写、説明したにすぎないものである場合、人民法院は、商標法第11条第1項第2号に規定する事情に該当すると認定しなければならない。商標の標識又はその構成要素が商品の特徴を暗示しているが、その商品出所の識別機能に影響を与えない場合は、同号に規定する事情に該当しない。

第十二条

当事者が商標法第13条第2項に基づき、係争商標がその未登録の著名商標を複製、模倣又は翻訳したものに該当するため登録すべきでない、又は無効にすべきであると主張した場合、人民法院は、下記の要素及び要素間の相互の影響を総合的に考慮して、容易に混同を生じさせるか否かを認定しなければならない。

  1. 商標の標識の類似の程度。
  2. 商品の類似の程度。
  3. 保護を求める商標の顕著性及び知名度。
  4. 関連公衆の注意の程度。
  5. その他の関連要素。

商標出願人の主観的意図及び実際に混同した証拠は、混同のおそれを判断する際の参考要素とすることができる。

第十三条

当事者が商標法第13条第3項に基づき、係争商標がその登録済みの著名商標を複製、模倣又は翻訳したものに該当するため登録すべきでない、又は無効にすべきであると主張した場合、人民法院は、下記の要素を総合的に考慮して、係争商標の使用が、関連公衆に著名商標と相当程度の関係を有すると認識させ、それによって公衆を誤認させ、著名商標の商標権者の利益を害するおそれがあるか否かを認定しなければならない。

  1. 引用商標の顕著性及び知名度。
  2. 商標の標識が十分に類似しているか否か。
  3. 指定商品の状況。
  4. 関連公衆の重なり程度及び注意の程度。
  5. 引用商標に類似する標識が他の市場主体により適法に使用されている状況又はその他の関連要素。

第十四条

当事者が、係争商標がその登録済みの著名商標を複製、模倣又は翻訳したものに該当するため登録すべきでない、又は無効にすべきであると主張し、商標評審委員会が商標法第30条の規定に基づき、その主張を支持する審決を下した場合、係争商標の登録が5年未満のときは、人民法院は、当事者が意見陳述した後、商標法第30条の規定により審理することができる。係争商標が登録されてから5年を経過しているときは、商標法第13条第3項を適用して審理を行わなければならない。

第十五条

商標代理人、代表者又は取次販売、代理等の販売代理関係上の代理人、代表者が授権を得ることなく自己の名義で被代理人又は被代表者の商標と同一又は類似の商標について、同一又は類似の商品を指定して登録出願した場合、人民法院は、商標法第15条第1項の規定を適用して審理を行う。

 代理関係又は代表関係を締結する協議段階において、前項に規定する代理人又は代表者が、被代理人又は被代表者の商標について登録出願した場合、人民法院は、商標法第15条第1項の規定を適用して審理を行う。

 商標出願人と代理人又は代表者との間に親族関係等の特定の身分関係が存在する場合、その商標登録行為は当該代理人又は代表者との悪意による共謀と推定することができ、人民法院は、商標法第15条第1項の規定を適用して審理を行う。

第十六条

下記の場合は、商標法第15条第2項に規定する「その他の関係」と認定することができる。

  1. 商標出願人と先使用者との間に親族関係がある場合。
  2. 商標出願人と先使用者との間に労働関係がある場合。
  3. 商標出願人と先使用者の事業所の所在地が隣接している場合。
  4. 商標出願人と先使用者が代理関係、代表関係の締結について協議を行ったが、代理関係、代表関係を締結しなかった場合。
  5. 商標出願人と先使用者が契約関係、業務関係の締結について協議を行ったが、契約関係、業務提携関係を締結しなかった場合。

第十七条

地理的表示の利害関係人が商標法第16条に基づき、他人の商標を登録すべきでない、又は無効にすべきであると主張し、係争商標の指定商品は地理的表示製品と同一商品ではないが、係争商標を当該製品に使用することで、当該製品の出所が当該地域であり、そのため特定の品質、信用又はその他の特徴を有すると関連公衆に容易に誤認を生じさせることを利害関係人が証明できる場合、人民法院は、これを支持する。

当該地理的表示が団体商標又は証明商標として既に登録された場合、団体商標又は証明商標の権利者又は利害関係人は、この条項、又は別途商標法第13条、第30条等のいずれかにより、権利を主張することができる。

第十八条

商標法第32条に規定する先行権利には、当事者が係争商標の出願日の前に享有していた民事上の権利又はその他保護すべき合法的権益が含まれる。係争商標の登録査定時に先行権利が既に存在しなかった場合、係争商標の登録に影響しない。

第十九条

当事者が、係争商標が先行著作権を害していると主張する場合、人民法院は、著作権法等の関連規定により、主張の客体が著作物に該当するか否か、当事者が著作権者又は著作権を主張する権利を有するその他の利害関係人であるか否か、及び係争商標が著作権の侵害等に該当するか否かを審査しなければならない。

商標の標識が著作権法の保護を受ける著作物に該当する場合、当事者の提出した商標の標識に関するデザイン原稿、原本、権利取得の契約書、係争商標の出願日前の著作権登録証等は、いずれも著作権の帰属を証明するための一応の証拠とすることができる。

商標公告、商標登録証等は、商標出願人が商標の標識の著作権を主張する権利を有する利害関係人であると確定するための一応の証拠とすることができる。

第二十条

当事者が、係争商標がその氏名権を害していると主張し、関連公衆が、当該商標の標識が当該自然人を指すと認識し、当該商標が付された商品が当該自然人の許諾を得たもの又は当該自然人と特定の関係があると容易に認識する場合、人民法院は、当該商標が当該自然人の氏名権を害していると認定しなければならない。

当事者が筆名、芸名、訳名等の特定名称により氏名権を主張し、当該特定名称が一定の知名度を有し、当該自然人との間で安定した対応関係が確立しており、関連公衆がそれをもって当該自然人を指す場合、人民法院は、これを支持する。

第二十一条

 当事者の主張する屋号が市場で一定の知名度を有し、他人が許諾を得ずに当該屋号と同一又は類似の商標を登録出願して、商品の出所について関連公衆に容易に混同を生じさせ、当事者がこのことを以って先行権益を主張する場合、人民法院は、これを支持する。

当事者が、市場で一定の知名度を有し、かつ、既に企業との間で安定した対応関係が確立している企業名称の略称を根拠として主張する場合は、前項の規定を適用する。

第二十二条

当事者が、係争商標がキャラクターの著作権を害していると主張する場合、人民法院は、本規定第19条により審査を行う。

著作権の保護期間内の著作物について、著作物の名称、著作物中のキャラクター名称等が高い知名度を有し、それを商標として関連商品に使用すると、権利者の許諾を得た又は権利者と特定の関係があると関連公衆に容易に誤認を生じさせることになり、当事者がこのことを以って先行権益を主張する場合、人民法院は、これを支持する。

第二十三条

先使用者が、先に使用し且つ一定の影響力を有する商標を商標出願人が不正な手段で冒認登録したと主張する場合、先使用商標が既に一定の影響力を有し、商標出願人が当該商標を明らかに知っている又は知り得たはずである場合は、「不正な手段による冒認登録」に該当すると推定することができる。ただし、商標出願人が先使用商標の信用を利用する悪意がないことを証拠を以って証明した場合を除く。

先使用者が、先行商標が一定の持続使用期間、地域、販売量又は広告宣伝を有することを証拠を以って証明した場合、人民法院は、一定の影響力を有すると認定することができる。

先使用者が、先に使用し且つ一定の影響力を有する商標について、商標出願人が非類似の商品を指定して登録出願したことは商標法第32条の規定に違反すると主張する場合、人民法院は、これを支持しない。

第二十四条

欺瞞的な手段以外のその他の方法により商標登録の秩序を乱し、公共の利益を害し、公共の資源を不当に占用し又は不当な利益の獲得を図った場合、人民法院は、商標法第44条第1項に規定する「その他の不正な手段」に該当すると認定することができる。

第二十五条

人民法院は、係争商標の出願人が他人の著名商標について「悪意による登録」をしたか否かを判断するとき、引用商標の知名度、係争商標の出願人が係争商標を出願した理由及び係争商標を使用する具体的状況を総合的に考慮して、その主観的意図を判断しなければならない。引用商標の知名度が高く、係争商標の出願人に正当な理由がない場合、人民法院は、その登録が商標法第45条第1項にいう「悪意による登録」に該当すると推定することができる。

第二十六条

商標権者自らの使用、他人による許諾を得た使用及び商標権者の意思に反しないその他の使用は、いずれも商標法第49条第2項にいう使用と認定することができる。

実際に使用されている商標の標識は、登録済みの商標の標識と多少異なるが、その顕著な特徴が改変されていない場合、登録商標の使用とみなすことができる。

登録商標が実際に使用されておらず、譲渡行為又は許諾行為のみの場合、又は商標登録の情報を公表するのみの場合や、登録商標の専用権を享有することを声明するのみの場合は、商標の使用と認定しない。

商標権者に真に商標を使用する意図があり且つ実際に使用するための必要な準備をしたが、その他の客観的な原因により登録商標をまだ実際に使用していない場合、人民法院は、正当な理由があると認定することができる。

第二十七条

当事者が、商標評審委員会の次に掲げる事情が行政訴訟法第70条第3号に規定する「法定手続に違反したとき」に該当すると主張する場合、人民法院は、これを支持する。

  1. 当事者の提起した評審理由を漏らして、当事者の権利に実質的な影響を与えたとき。
  2. 評審手続において合議体の構成員に告知せず、調べた結果、確かに回避すべき事由があったにもかかわらず回避しなかったことが判明したとき。
  3. 適格な当事者に評審に参加するよう通知せず、当該当事者が確かに異議を申立てたとき。
  4. 法定手続に違反するその他の事情。

第二十八条

人民法院が商標権利付与、権利確定に係る行政事件を審理する過程において、商標評審委員会が係争商標を拒絶した事由、不登録とした事由又は無効宣告した事由が存在しなくなった場合、人民法院は、新たな事実に基づいて商標評審委員会の関連審決を取り消し、変更後の事実に基づいて改めて審決を下すように命じることができる。

第二十九条

当事者が、元の行政行為の後に新たに発見した証拠、又は元の行政手続において客観的な原因により取得できなかった若しくは所定の期間内に提出できなかった証拠、又は新たな法的根拠により提出した評審請求は、「同一の事実及び理由」による評審請求の再度提出に該当しない。

商標の拒絶査定の復審手続において、商標評審委員会が、出願に係る商標が引用商標と同一種類又は類似の商品において使用する同一又は類似の商標に該当しないことを理由として、出願に係る商標の予備的査定の公告をした後は、下記の状況は「同一の事実及び理由」による評審請求の再度提出とみなさない。

  1. 引用商標の所有者又は利害関係人が当該引用商標に基づいて異議を申立て、国務院工商行政管理部門商標局がこれを支持し、被異議商標の出願人が復審を請求した場合。
  2. 引用商標の所有者又は利害関係人が、出願に係る商標が登録された後に、当該引用商標に基づいて無効宣告を請求した場合。

第三十条

効力の発生した人民法院の判決で、関連事実及び法の適用について既に明らかな認定が下され、相手方又は利害関係人が、商標評審委員会が当該効力の発生した判決に基づいて改めて下した審決に対して訴えを提起した場合、人民法院は、法律に基づき受理しない決定を下す。既に受理された場合は、訴えを却下する決定を下す。

第三十一条

本規定は、201731日から施行する。人民法院が2001年改正の商標法に基づいて審理した商標権利付与、権利確定に係る行政事件については、本規定を参照し、適用することができる。

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