北京知的財産法院
迅速審判メカニズムの効果が顕着
【ソース:中国知識産権資訊網】
北京知的財産法院が迅速審判メカニズムについて記者会見を開き、商標の拒絶査定復審請求(不服審判請求)行政事件に対する迅速審判メカニズムについて説明を行ったことが2016年12月15日付の中国知識産権資訊網で報道された。
北京知的財産法院が2015年に受理した事件数は9191件に達したが、そのうち、商標の拒絶査定復審請求行政事件数は2564件に達し、しかもこの種の事件の平均審理期間は100日以上にもなった。最高人民法院による「複雑度・簡易度による事件の分別を強化し、複雑な事件は精確且つ詳細に、簡易な事件は簡易且つ迅速に処理することを実行する」との指示の目的、及び北京市高級人民法院による「行政などの分野における速裁法廷と速裁組の設置」等の具体的な要求を着実に実行するために、北京知的財産法院は2016年2月25日に立件法廷に速審組を設置して、商標行政事件を集中審理することを検討した。現在、この迅速審判メカニズムは、事実が相対的に明白で、権利義務関係が相対的に明確である商標拒絶査定復審請求行政事件に対してのみ適用されている。
「1+2+4」モデルによる裁判効率の向上
北京知的財産法院は当事者の権利を十分に保障するために、迅速審判メカニズムでは、「1+2+4」の設置モデルを採用した。「1」は、立件ホールに独立して設置された一つの速審サービス窓口のことであり、主に迅速審判に関する相談、原告への送達、開廷日の決定などのサービスを提供する。「2」は、速審準備室と資料交換室の二つの事務室を指し、主に被告に対して集中的に送達作業を行ったり、被告と訴訟書類の交換等の業務を行う。「4」は、迅速に事件を処理するための、速審組にある4つの裁判官チームを指す。
商標拒絶査定復審請求行政事件の当事者が提訴した後、事件受理した裁判官はその事件を一律に9番の速審サービス窓口に転送する。速審サービス窓口の係員は直ちに公判期日召喚状を発行し、開廷日及び開廷場所を当事者に通知する。被告である商標評審委員会は週二回、北京知的財産法院の資料交換室へ訴訟書類の受領及び交換に来る。一般的に、当事者の提訴から初公判まで、要する日数はわずか約20日であり、裁判効率が大幅に向上し、当事者の利益保障に効果的である。
迅速審判メカニズムによる従来モデルからの変換
北京知的財産法院は裁判の質及び効率の向上を図り、複雑度・簡易度により事件の分別を行うために、一連の試行作業を経て、従来の立件、審判モデルに対して大胆な改革を行い、更に成熟した迅速審判メカニズムを構築した。
一、現行の条塊分割(中央管理部門と地方政府部門との間で現存する複雑な縦横連携関係)連携方式を立件と審判とのシームレスな連携方式に変更:立件法廷で立件されてから事件を逐一裁判業務法廷に分配するといった従来の作業プロセスを変更し、事件を立件したら、直ちに速審準備に入り、集中審理を行い、立件と審判とのシームレスな連携により、複雑事件、簡易事件の分別作業の高効率化及び秩序を保証する。
二、分散的な送達方式を送達と交換を集中的に行う方式に変更:担当書記官は事件ごとに逐一当事者に訴訟書類を送達する従来方式を変更して、「1+2」の速審サービスプラットフォームにより、原告の提訴当日に即時に送達し、被告が週二回法院へ訴訟書類の受領と交換に来るという方式を統一的に採用して全面的に送達効率を高める。
三、従来の法廷審問モデルを集中的に開廷日を決定する法廷審問モデルに変更:担当裁判官が自ら開廷日を決定する従来方式を変更し、速審サービス窓口が立件順に基づき開廷日を決めて集中審理を行う。同時に、双方の争点ポイントを集約し且つ確認した上で、的を絞った審判を行い、法廷調査と口頭弁論を合併して進行することにより、集中的且つ高効率な審判の流れで審判効率を保障する。
四、開廷前の分散的な郵送交換方式を法廷での証拠交換方式に変更:商標の拒絶査定復審請求行政事件における被告の証拠は全て原告が復審請求段階で提供したものであるという特徴に応じて、従来の担当書記官が事件ごとに郵送交換を行うという作業方式を変更し、裁判当日の開廷前に証拠交換を行い、法廷で反対尋問を行うという方法を採用することにより、証拠交換作業効率を向上させ、訴訟コストを削減する。
五、通常の文書形式を要点化文書形式に変更:迅速審判メカニズムを適用した事件については、少数の困難且つ複雑な事件を除いて、要点を絞り、書式が簡略化された要点化裁判文書を統一に採用して、「文書の簡略化」により裁判文書の作成効率を高める。
六、ランダムな陪審方式を集約型陪審方式に変更:迅速審判メカニズムを適用した事件は審理が速いという特徴に応じて、予め陪審日を決定するとともに、公判に合わせて統一的な人員配置をして、陪審効率の向上を保障する。陪審員に、事件の関連書類を精査したり、審理の筋道を明確に立てたり裁判文書を審査したりすることを補佐する役割を発揮させることに力を入れ、速審事件の審判の質及び効率を保障する。
七、通常手続の適用を簡易手続と通常手続の並用に変更:原告及び被告の同意を得た上で、行政簡易手続の適用を試行し、新たな行政訴訟法に規定された簡易手続に実行例を提供できるよう努める。
9ケ月の施行を経て効果が顕現
2016年2月25日から12月14日までの間で、北京知的財産法院の立件法廷速審組が受理した商標拒絶査定復審請求行政事件数は1721件であった。そのうち、渉外事件が603件で、35.03%を占め、渉外埠(他都市)事件が874件で、50.78%を占めた。同期間に立件法廷速審組の4つの裁判官チームが結審した商標拒絶査定復審請求行政事件数は1467件であり、結審率は85.24%に達した。そのうち、通常手続を適用して結審したのは1145件で、78.05%を占めた。一方、簡易手続を適用して結審したのは322件で、21.95%を占め、いずれも、法律に規定された45日以内に結審された。
審理期間に関しては、統計によると、速審組が結審した商標拒絶査定復審請求事件の平均審理期間は約72.76日で、2015年に結審された同タイプの事件の審理期間と比べて、31.2日間短縮され、審判効率が30.01%上がった。
北京知的財産法院速審組が設置されて以来、『白富美(色白・裕福・美形)』、『高富帥(高身長・美形・金持ち)』シリーズ商標の拒絶査定復審請求事件、AppleのApple Watchシリーズの商標事件、李寧体育(上海)有限会社の『一切皆有可能(総てが可能になるはず)』の商標の拒絶査定復審請求事件など、社会の注目度が高く、しかも影響が広範囲に及ぶ事件を結審した。そのうち、12月6日に、騰訊科技(深圳)有限会社(テンセント)により提起された国家工商総局商標評審委員会に対する音商標の拒絶査定復審事件が法律により公開法廷で審理された。これは新しい『商標法』が施行されて、音商標が商標保護の対象となって以来、初の音商標の拒絶査定復審請求行政訴訟である。 |