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中国最高人民法院が「喬丹(ジョーダン)」
商標をめぐる裁判で判決

 中国最高人民法院は、2016128日に再審請求人であるマイケル・ジェフリー・ジョーダン氏、被請求人である国家工商行政管理総局商標評審委員会及び第一審の第三者である喬丹体育株式会社との間で争われた10件の商標争議行政紛争事件について、公開法廷で判決が言い渡された。判決では、マイケル・ジェフリー・ジョーダン氏は、その名字の中国語表記である「喬丹」については氏名権を有しているが、拼音(ピンイン:中国語の発音表記法)表記である「QIAODAN」「qiaodan」については氏名権を有していないとの見解が示された。

最高人民法院審判委員会は合議を経て、商標「喬丹」関連の3件については、係争商標の登録は、再審請求人が「喬丹」について有する既存の氏名権を害し、「商標登録の出願は他人の既存の権利を侵害してはならない」という商標法の関連規定に違反したため取り消すべきであるとし、商標評審委員会が下した係争審決、一審及び二審判決を覆し、商標評審委員会に対して係争商標について改めて審決を下すよう命じた。

一方、拼音(ピンイン)表記の「QIAODAN」をめぐる4件と拼音(ピンイン)表記の「qiaodan」と関連図形を組み合わせた商標をめぐる3件の計7件の事件については再審請求人は拼音(ピンイン)表記の「QIAODAN」「qiaodan」に対して氏名権を有していないため、係争商標の登録は、再審請求人の有する既存の氏名権を害しておらず、係争商標も商標法に規定された「社会主義の道徳、風習を害し、又はその他の悪影響を及ぼすもの」、「欺瞞的な手段若しくはその他の不正な手段で登録された場合」の事情に属していないため、二審判決を支持し、再審請求人の再審請求を棄却する判決を下した。

最高人民法院は、商標法の関連規定の適用において、自然人が特定名称について氏名権の保護を主張する場合、該特定名称は以下の3つの条件を満たさなければならないと指摘した。

  1. 該特定名称は中国において一定の知名度があり、関連公衆に広く認知されている。
  2. 関連公衆が該特定名称を使用するときは、当該自然人を指している。
  3. 該特定名称と当該自然人との間で安定した対応関係が確立している。

 「言語、文化などの違いや称呼のしやすさから、中国の関連公衆は当該外国人を指したり、称呼したりするとき、通常、該外国人のフルネームの中国語音訳名を使用せずに、該外国人の外国語名の一部分の中国語音訳名を使用する習慣があり、該外国人のフルネームの中国語音訳名が分からなかったり、知らなかったりすることさえある。」そのために、「関連の3件について、再審請求人が主張した中国語の『喬丹』も、商標評審委員会が審決で再審請求人のフルネームであると誤った認定をした『克爾喬丹(マイケル・ジョーダン)』も、実質的には、いずれも再審請求人の英語のフルネームの一部分の中国語訳名に属し、しかも関連公衆が再審請求人を称呼したり、指したりするときに用いられるものである。」とした

 本件の現有の証拠は、中国語の「喬丹」が中国において比較的高い知名度を有し、関連公衆に広く認知されており、関連公衆は通常再審請求人を指す際、中国語の「喬丹」を使用し、しかも中国語の「喬丹」と再審請求人との間で安定した対応関係が既に形成されていることを証明するに足るものであるため、再審請求人は中国語の「喬丹」に対しては氏名権を有すると判断された。

再審請求人であるマイケル・ジェフリー・ジョーダン氏は米国の有名な元バスケットボール選手である。第一審の第三者である喬丹体育株式会社は中国において知名度の高いスポーツ用品メーカーであり、商標・サービス国際分類の第25類、第28類などの商品又は役務において「喬丹」「QIAODAN」等の登録商標を有している。喬丹体育株式会社の有している数多くの登録商標について、再審請求人は商標評審委員会に対し登録の取り消しを請求したが、商標評審委員会はその請求を棄却した。再審請求人はその審決を不服として、行政訴訟を提起した。再審請求人は2015年に北京市高級人民法院の下した68件の商標争議行政紛争事件の二審判決を不服として、最高人民法院に対して再審を請求した。201512月に、最高人民法院は法律に基づき、公開法廷で判決が言い渡された10件の再審を行う裁定を下すとともに、他の8件の審理を中止する裁定を下した。同時に、最高人民法院は法律により再審請求人の他の50件の再審請求を棄却とする裁定を下した。

中国にある国内外の多数のマスコミ、当事者代表及び一般公衆、並びに、関連国の駐中国大使及び世界知的所有権機関(WIPO)などの国際機関の代表が判決の言い渡しを傍聴した。判決が言い渡された後、本件の判決書全文は中国裁判文書網に掲載された。

商標行政紛争における既存の氏名権の保護基準及び条件などの問題は、中国司法実務において従来から不明確であると見られている。最高人民法院が本件の判決で述べた法律適用基準は、同様の事件の判断基準の統一化に重要な影響を与えることになるだろう。

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