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中米欧日韓台のプロダクト・バイ・
プロセス・クレームの比較

 プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(以下「PBPクレーム」)とは、生産物又は生産物における少なくとも一つの素子が、その製造方法によって限定される請求項のことをいう。例えば、「請求項1の方法によって製造される成形インナーソール」など。特許出願に係る生産物自体が構造、組成又は理化学的性質によって特徴を明確且つ十分に限定できない場合は、製造方法で請求項を限定することができる。

 特許請求の範囲の解釈がPBPクレームに限定されるか否かについて、各国の違いを以下の表に示す。

 

 

審査段階

権利侵害訴訟段階

日本

製造方法に限定されない

製造方法に限定されない

米国

製造方法に限定されない

製造方法に限定される

EUドイツ

製造方法に限定されない

製造方法に限定されない

原則的に製造方法に限定されない

製造方法に限定される

原則的に製造方法に限定されない

原則的に製造方法に限定されない

製造方法に限定されない

製造方法に限定されない

 

一、日本

 

 日本の最高裁判所が201565日に下した二つの判決(2012(Ju)Nos.1204, 2658):特許出願時に提示されたPBPクレームの製造方法について、審査段階及び権利侵害訴訟段階で、生産物はいずれも方法の特徴に限定されず、PBPクレームの出願対象である生産物は絶対的に保護され、侵害疑義物品と特許権の対象生産物が同一又は均等であれば、製造方法が異なっていても、はやり権利侵害に当たる。

 例えば、生産物Bが方法Aにより製造して得られることが公知であるとき、新たな方法Cにより製造される生産物Bについては、その特許請求の範囲と方法Aは異なるが、生産物Bは完全に同一であるため、新たな方法Cをもって出願した出願案は拒絶される。PBPクレームは出願時に製品の構造、組成又は理化学的性質等明確な特徴で生産物を特定できない場合に採られる便宜的措置である。したがって、訴訟において権利侵害に当たるか否かを判断するときには、製造方法以外に、対比できる明確且つ十分な特徴がないため、訴訟段階の特許請求の範囲の解釈も同じく製造方法の特徴に限定されない。

 

二、米国

 

 特許審査段階において、PBPクレームの特許性の判断は製品そのものを基にし、製造方法によらない(米国特許審査手続便覧MPEP2113を参照)。したがって、上記の例で述べた公知の生成物Bが新たな方法Cによって製造されるとき、新たな方法Cをもって出願した出願案は当然拒絶される。但し、訴訟段階において、特許の有効性又は権利侵害の訴訟で、PBPクレームの解釈が製造方法に限定されるか否か、裁判所の見解は一致していない。

 Abbott v. Sandoz (Fed. Cir. 2009)案:連邦巡回区控訴裁判所は、最高裁が、一貫してPBPクレームは方法により製品を限定するものであるため、製造方法を最後の「強制的に行う限定」(同一の生産物Bを得ることとなるので、C方法は保護を受けられなくなる)とすることは仕方がないとしたが、これは理論上妥当ではないとした。構造特徴が不明確であるため製品を製造方法によって保護する方法において、他の製造方法によるものも含むとすれば、却って特許の保護範囲を拡張することになるからである。したがって、連邦巡回区控訴裁判所は、訴訟段階における特許請求の範囲の解釈は製造方法に限定されるとの見解を示した。

三、EU

 特許審査段階において、生産物自体が、進歩性、新規性のような特許性の要件を備えている場合、製造方法で生産物を限定することが許される。審査便覧F部分第44.12には、生産物の構造、組成などが明確性に欠けているが、生産物自体が特許性を備えている場合、製造方法により生産物を限定する出願案は受理されるとある。(2008年の判決Case No. T 0956/04を参照)

 訴訟段階においては、EUは日本と同じで、侵害疑義物品と特許権の対象生産物が同一又は均等であれば、製造方法が異なっていても、やはり権利侵害に当たる。

 

四、中国

 

 特許審査段階において、原則的に特許請求の範囲の解釈は、製造方法の特徴に限定されないが、特許請求の範囲において、ある特別な構造又は組成に言及していれば、製品の特許性を決定する際に考慮に入れる必要がある。公知の生産物Bが新たな方法Cで製造されたとしても、新たな方法Cで出願された出願案は拒絶されるが、応答によって特許権を得る機会はある。

 訴訟段階においては、特許請求の範囲の解釈は必ずしもPBPクレームに限定されるものではない。

 

五、韓国

 

 特許審査及び訴訟段階において、原則的に特許請求の範囲の解釈は製造方法に限定されないが、PBPクレームで定義された生産物が特定の構造又は組成を有し、製造方法が生産物の特定の構造又は組成に影響を与えるときは、特許請求の範囲はPBPクレームに限定される。(韓国最高法院Case No. 2013 Hu 1726(2015)の判決を参照)

 

六、台湾

 

 台湾の特許審査基準では「製造方法で物を特定した請求項が特許要件を備えているか否かは製造方法により決定されるものではない。請求項に記載された物と先行技術に開示された物とが同一又は容易に完成できるものである場合、該請求項は特許を受けることができない。」と規定されている。したがって、台湾では、審査段階において特許請求の範囲は製造方法に限定されない。但し、特許請求の範囲を解釈するときには、明細書に記載された該製造方法によって出願に係る生産物に付与された機能、性質等の特性を参酌しなければならない。

 訴訟においては、特許権侵害の判断と特許審査が統一基準を有するため、特許請求の範囲の解釈も製造方法に限定されない。つまり、出願時に構造、組成又は理化学的性質等で生産物を限定できないために、PBPクレームの便宜的措置を講じたのであり、権利侵害時には、製造方法以外に対比できるその他の明確な特徴がないため、製造方法を対比内容に入れるしかなく、これはやむを得ないやり方であるが、特許請求の範囲の解釈がPBPクレームに限定されることを意味するものではない。

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