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TPP知的財産権仲裁強化で論争

【出典:中国知的財産権保護ウェブサイト】

 環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific Partnership Agreement, TPP)は2006年にシンガポール、ブルネイ、チリ及びニュージーランドによって結ばれた自由貿易協定で、その後、アメリカ、オーストラリア、ベトナム、マレーシア、ペルー、メキシコ、カナダ、日本が前後して交渉に参加した。TPPは原則的に100%の関税撤廃を要求しており、その内容は自由貿易協定(FTA)よりも広く、自由度もより高い。関税などの貿易障壁の撤廃に加え、人や資金の移動の自由化、知的財産権保護、ビジネス環境の改善などの内容が含まれている。

 TPP加盟国の間には大きな差があることから、複雑度は非常に高く、協議内容の深さも広さも従来の自由貿易協定をはるかに超えている。特に、知的財産権分野においては、FTAでは加盟国に対しWTOの「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPs)」の遵守を要求するのみであったが、TPPの要求は明らかにTRIPsよりも高い。もっとも重要な点は、TPP協議の内容と基準は多くがアメリカの自由貿易理念の立場に立ったもので、その戦略利益追求を満たすものであるということである。この点は知的財産権交渉において、再度表れている。

 TPP交渉過程において、アメリカ通商代表部は、仲裁手続きには議論の余地があまりにもが多く、知的財産権分野の紛争解決手段に適用しないと表明したが、最終的には依然として裁判所と実体法を凌駕する仲裁手続きを盛り込み、知的財産権訴訟において外国企業に優位性を与える形となった。

 アジア太平洋地域の主導権を向上させ、新たな国際貿易ルールを制定して、低迷するアメリカの雇用市場と経済を救うために、アメリカは積極的にTPP推進の役割を果たしている。TPP協定は201510月に既に世界貿易の40%を占める12カ国が合意したが、依然としてそれぞれ国内で批准(国内手続きの完成)する必要がある。手続きが完成すれば、TPPはモノやサービスの貿易障壁が大幅に減少すると同時に、全ての締結国は、物議を醸している仲裁手続き、つまり「投資家対国家の紛争解決制度(Investor-State Dispute Settlement, ISDS)」の受け入れが求められる。

 ISDSは、多国籍企業の利益が国家主権や人種平等などの政策の上に位置づけられたブラックボックス条項であると問題視されている。多くの国際投資貿易協定においてはISDSメカニズム、つまり、外国投資家と投資先の国との間で紛争が発生した時、愛国判決が下されて外国投資家にとって不利に働くのを避けるために、この種の紛争を国際仲裁機関の仲裁に付するメカニズムが存在するが、この種の仲裁はしばしばブラックボックスで行われ、企業よりの判断が下されており、これによって投資先の国の法律延いては主権が否定され、多くの公共の利益も否定されている。

 ISDS条項は過去30年の間、既に多くの国際貿易協定に盛り込まれている。当初のISDSの目的は、例えば、外国投資家の財産が現地政府に徴収されたとき、仲裁人は政府に対し合理的な賠償金の支払い命令を出すことができるなど、投資家を保護することにあった。然しながら、最近のISDS仲裁人(一部は多国籍企業の弁護士)は正常な政府行為(例えば、健康、労働者の権益などの保護)でさえ外国企業の期待する利益を妨害するものと考え、政府に対し巨額の賠償金を請求している。

 このため、TPPが知的財産権分野においてISDS条項の適用を認めたことで、その他各国の論争を引き起こすこととなった。これによって、恐らく外国企業はISDSによって投資先の国による拒絶査定処分や、商標権侵害の判決結果、著作権侵害に当たらないとする判決などに対抗し、外国企業の知的財産権にとって不利な影響を与える全ての政府行為は反対される可能性がある。ISDSはその他の多くの自由貿易協定に盛り込まれてはいるが、少なくともこれらの協定においては知的財産権を適用対象としていなかった。2015TPPがこのように物議を醸すISDS条項を知的財産分野に適用したことで、将来何が起こるのかといった各国の不安を招いている。

 最大の問題は、ISDS条項の仲裁人の権力が国の法律を超え、前例を遵守する必要がなく、誰も監督できず、判断結果に対して実質的な上訴手段もないことである。そのため、仲裁人が自身の「待遇の最低基準」に対する理解のみに基づいて判断する。それによって、ISDSが司法を超えた審査形式になってしまう。TPPISDS条項によって、締結国は膨大なリスクを負わなければならないとの懸念を持ち始めている。しかし現在のところ、アメリカ通商代表部はこの問題に対し何度もコメントを求められているが、未だ応答はない。

 

 

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