中国が知的財産権侵害賠償額を大幅に増額する見込み
【出典:SIPO ウェブサイト】
国務院法制弁公室は2015年12月2日に《中華人民共和国専利法改正草案(送審稿)》を公表し、公衆からの意見募集を開始した。改正法案では専利権侵害行為に対する処罰が大幅に加重され、専利権を故意に侵害した場合、人民裁判所は専利権者へ最高で500万人民元(以下同)の賠償金の支払いを命じる判決を下すことができる。
中国の現行の専利法においては、専利権侵害に対する賠償額が明確に規定されておらず、単に「賠償額は、権利者が権利侵害によって被った実際の損失に応じて算定する。権利者の損失、又は権利侵害者が得た利益の金額が確定し難い場合、当該専利実施許諾料の倍数に応じて合理的に算定する。」としか規定されていなかったが、改正草案では明確に「専利権を故意に侵害する行為に対して、人民裁判所は専利権侵害行為の情状、規模、損害結果などの要素に基づき、算定した金額の1倍以上3倍以下の賠償額を算定することができる」ことが規定された。
そのほか、改正草案では、「権利者の損失、侵害者が得た利益の金額、及び専利実施許諾料のいずれも確定し難い場合は、人民裁判所は10万元以上500万元以下の賠償金の支払いを命じる判決を下すことができる」ことが規定された。現行の専利法では、このような状況に対して、1万元以上100万元以下の賠償金であったのに対して、改正草案では、専利権侵害の賠償額の明らかな大幅引き上げとなった。
近年では、電子商取引分野で権利侵害紛争が頻発しているために、改正草案では「ネットワークサービス提供者はネットワーク利用者がこのネットワークサービスを利用して、専利権を侵害し又は詐称したことを知り又は知るべきでありながら、専利権侵害物品のリンクを削除、遮断、切断するなどの必要な措置を即時に講じて制止しなかった場合、該ネットワーク利用者と連帯責任を負わなければならない。専利行政部門はネットワーク利用者がネットワークサービスを利用して専利権を侵害し又は詐称したと認定した場合、ネットワークサービス提供者に本条第一項に述べた必要な措置を講じて制止するよう通知しなければならず、ネットワークサービス提供者が即時に必要な措置を講じなかった場合、損害の拡大部分については、該ネットワーク利用者と連帯責任を負う」ことが特に規定された。
そのほか、改正草案では、「専利行政部門は当事者の請求に応じて、専利権侵害の賠償金額について調停を行うことができる。調停が成立しなかった場合、当事者は人民裁判所に提訴することができる。調停が成立した後、一方の当事者が履行を拒絶し又は全ての履行をしなかった場合、相手方当事者は強制執行を申立てることができる」ことも新設された。 |