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中国 最高人民法院による専利紛争事件審理の法律適用問題に関する若干規定

法釈〔20154号(2015129日公布)

 

2001619日最高人民法院審判委員会第1180回会議において可決され、2013225日最高人民法院審判委員会第1570回会議で可決された「最高人民法院による『最高人民法院による専利(特許、実用新案、意匠)紛争事件審理の法律適用問題に関する若干規定』改正に関する決定」に基づき第一回改正が行われ、2015129日最高人民法院審判委員会第1641回会議で可決された「最高人民法院による『最高人民法院による専利紛争事件審理の法律適用問題に関する若干規定』改正に関する決定」に基づき第2回改正が行われた。当該改正は201521日から施行される。

専利紛争事件を正確に審理するために、「中華人民共和国民法通則」(以下、民法通則)、「中華人民共和国専利法」(以下、専利法)、「中華人民共和国民事訴訟法」及び「中華人民共和国行政訴訟法」などの法律規定に基づき、以下の通り規定する。

 

第一条

人民法院は次に掲げる専利紛争事件を受理する。

1.専利出願権に係る紛争事件

2.専利権の帰属に係る紛争事件

3.専利権、専利出願権の譲渡契約に係る紛争事件

4.専利権侵害に係る紛争事件

5.他人の専利詐称に係る紛争事件

6.特許出願の公開後から権利付与前までの実施料に係る紛争事件

7.職務発明創造の発明者、考案者の奨励金、報酬に係る紛争事件

8.訴訟前の権利侵害停止請求、財産保全申立事件

9.発明者、考案者の資格に係る紛争事件

10.専利復審委員会による拒絶査定維持の復審決定を不服とする事件

11.専利復審委員会による専利権無効審判請求の決定を不服とする事件

12.国務院専利行政部門による強制実施許諾決定を不服とする事件

13.国務院専利行政部門による強制実施許諾の実施料の裁定を不服とする事件

14.国務院専利行政部門による行政再審査の決定を不服とする事件

15.専利業務管理部門の行政決定を不服とする事件

16.その他の専利紛争に係る事件。

 

第二条

専利紛争の第一審事件は、各省、自治区、直轄市人民政府の所在地の中級人民法院及び最高人民法院が指定する中級人民法院が管轄する。

 最高人民法院は実際の状況に基づいて、基層人民法院を第一審専利紛争事件の管轄として指定することができる。

 

第三条

 当事者が、200171日以降に専利復審委員会が下した実用新案権、意匠権の取消請求についての復審決定を不服として人民法院に訴訟を提起する場合、人民法院はこれを受理しない。

 

第四条

当事者が、200171日以降に専利復審委員会が下した実用新案出願、意匠出願の拒絶査定維持の復審決定を不服として、又は実用新案権、意匠権の無効審判請求の決定を不服として、人民法院に訴訟を提起する場合、人民法院はこれを受理しなければならない。

 

第五条

 専利権侵害行為により提起された訴訟は、権利侵害行為地又は被告の住所地の人民法院が管轄する。

 権利侵害行為地には、特許権、実用新案権の権利侵害を訴えられた製品の製造、使用、販売の申出、販売、輸入等の行為の実施地、専利方法の使用行為の実施地、当該専利方法により直接得た製品の使用、販売の申出、販売、輸入等の行為の実施地、意匠製品の製造、販売の申出、販売、輸入等の行為の実施地、他人の専利を詐称した行為の実施地、上記権利侵害行為によって権利侵害の結果が発生した地が含まれる。

 

第六条

 原告が権利侵害製品の製造者に対してのみ訴訟を提起し、販売者に対しては提訴せず、権利侵害製品の製造地と販売地が一致しない場合、製造地の人民裁判所が管轄権を有する。製造者と販売者が共同被告として共に提訴された場合は、販売地の人民法院が管轄権を有する。

 販売者が製造者の支店であり、原告が販売地において権利侵害製品の製造者の製造、販売行為について提訴する場合、販売地の人民法院が管轄権を有する。

 

第七条

 原告が199311日以前に提出した専利出願及びその出願により付与された方法特許権に基づいて提起した権利侵害訴訟は、本規定第五条、第六条の規定を参照して管轄を確定する。

 人民法院は、上記事件の実体審理において法律により、方法の特許権は製品には及ばないとする規定を適用する。

 

第八条

 出願日が2009101日前(当該日を含まない)の実用新案について権利侵害訴訟を提起する場合、原告は国務院専利行政部門が作成した検索報告を提出することができる。出願日が2009101日以後の実用新案又は意匠について権利侵害訴訟を提起する場合、原告は、国務院専利行政部門が作成した専利権評価報告を提出することができる。事件審理の必要性に基づいて、人民法院は原告に検索報告又は専利権評価報告の提出を要求することができる。原告が正当な理由なく提出しない場合、人民法院は訴訟の中止を裁定し又は生じる可能性のある不利な結果は原告が責任を負うとする判決を下すことができる。

 実用新案権、意匠権の権利侵害紛争事件の被告が訴訟中止を請求する場合、答弁期間内に原告の権利について無効審判を請求しなければならない。

 

第九条

 人民法院が受理した実用新案権、意匠権の権利侵害紛争事件において、被告が答弁期間内に当該権利の無効審判を請求した場合、人民法院は訴訟を中止しなければならない。ただし、次に掲げるいずれかの事情がある場合には、訴訟を中止しなくてもよい。

()原告が提出した検索報告又は権利評価報告において実用新案権又は意匠権が無効となる事由を発見しない場合。

()被告の提出した証拠が、その使用した技術が既に公知のものであることを証明するに足るものである場合。

()被告が当該権利の無効審判を請求する際に提出した証拠又は根拠となる理由が明らかに不十分な場合。

()人民法院が訴訟を中止すべきではないと認めるその他の事情。

 

第十条

 人民法院が受理した実用新案権、意匠権の権利侵害紛争事件において、被告が答弁期間満了後に当該権利の無効審判を請求する場合、人民法院は、審査を経て訴訟を中止する必要があると認める場合を除き、訴訟を中止してはならない。

 

第十一条

 人民法院が受理した特許権侵害紛争事件又は専利復審委員会の審査を経て権利が維持された実用新案権、意匠権の権利侵害紛争事件において、被告が答弁期間内に当該権利の無効審判を請求する場合、人民法院は訴訟を中止しなくてもよい。

 

第十二条

 人民法院が訴訟中止を決定するとき、被告に対し行為の停止を命じる又は権利侵害による持続的な損害の拡大を制止する措置を講じることを専利権者又は利害関係人が請求し、且つ担保を提供しており、人民法院の審査を経て、関連の法律規定を満たしている場合には、訴訟中止の裁定を下すと同時に一括して関連の裁定を下すことができる。

 

第十三条 

 人民法院が専利権に対し財産保全措置をとる場合、国務院専利行政部門に対し、執行協力要請事項及び専利権の保全期間を明記した執行協力通知書を発するとともに、人民法院が作成した裁定書を添付しなければならない。

 専利権の保全期間は一回につき6か月を超えてはならず、国務院専利行政部門が執行協力通知書を受け取った日から起算する。当該専利権に対し引き続き保全措置をとる必要がある場合、人民法院は、保全期間満了前に国務院専利行政部門に対し別途、保全を継続する旨の執行協力通知書を送達しなければならない。保全期間満了前に送達しなかった場合、当該専利権の財産保全は自動的に解除されたものとみなす。

 人民法院は質権が設定されている専利権に対し財産保全措置をとることができ、質権者の優先弁済権は保全措置の影響を受けない。専利権者と被許諾者の間で既に締結された独占的実施許諾契約は、人民法院の当該専利権に対する財産保全措置には影響しない。

 人民法院は既に保全措置をとっている専利権に対し、重複して保全してはならない。

 

第十四条

 200171日以前にその勤務先の物質的、技術的条件を利用して完成させた発明創造について、勤務先と発明者又は考案者との間に契約があり、出願権及び権利の帰属について約定している場合には、その約定に従う。

 

第十五条

 人民法院が受理した専利権侵害紛争事件が権利抵触に係る場合、法律により先に権利を有する当事者の合法的権益を保護しなければならない。

 

第十六条

 専利法第二十三条にいう先に取得した合法的権利には、商標権、著作権、商号権、肖像権、有名商品特有の包装又は装飾の使用権などが含まれる。

 

第十七条

 専利法第五十九条第一項にいう「特許権又は実用新案権の保護範囲は、その権利請求の範囲の内容を基準とし、明細書及び図面は、権利請求の範囲の解釈に用いることができる」とは、権利の保護範囲が権利請求の範囲に記載された全ての技術的特徴により確定される範囲を基準とすることをいい、それには当該技術的特徴と均等な技術的特徴により確定される範囲も含まれる。

 均等な特徴とは、記載された技術的特徴が基本的に同一の手段により、基本的に同一の機能を実現し、基本的に同一の効果を奏し、且つ当業者が、権利侵害として訴えられた行為の発生時に創造的な労働を経なくても想到することができる特徴をいう。

 

第十八条

 専利権侵害行為の発生が200171日以前の場合には、改正前の専利法を適用して民事責任を確定する。発生が200171日以後の場合には、改正後の専利法の規定を適用して民事責任を確定する。

 

第十九条

 他人の専利を詐称した場合、人民法院は、専利法第六十三条の規定によりその民事責任を確定することができる。専利業務管理部門が行政処罰を科さなかった場合、人民法院は民法通則第百三十四条第三項の規定により民事制裁を科すことができ、民事の罰金額は、専利法第六十三条の規定を参照して確定することができる。

 

第二十条

 専利法第六十五条に規定された権利者が権利侵害によって被った実際の損失は、専利権者の専利製品が権利侵害によって減少した販売数の総数に、専利製品1件あたりの適正利潤を乗じて計算することができる。権利者の減少した販売数の総数を確定するのが難しい場合、権利侵害製品の市場販売総数に専利製品1件あたりの適正利潤を乗じて得られた額を、権利者が権利侵害により被った実際の損失とみなすことができる。

 専利法第六十五条に規定された権利侵害者が権利侵害により得た利益は、当該権利侵害製品の市場販売総数に権利侵害製品1件あたりの適正利潤を乗じて計算することができる。権利侵害者が権利侵害により得た利益は一般に権利侵害者の営業利益により計算し、権利侵害を完全に業とする権利侵害者については、売上利益により計算することができる。

 

第二十一条

 権利者の損失又は権利侵害者の得た利益を確定するのが難しく、専利許諾実施料を参照できる場合には、人民法院は、専利権の種類、権利侵害行為の性質及び状況、専利許諾の性質、範囲、時間などの要素に基づき、当該専利許諾実施料の倍数を参照して適正に賠償金額を確定することができる。参照できる専利実施料がない又は専利許諾実施料が明らかに適正なものでない場合、人民法院は、専利権の種類、権利侵害行為の性質及び状況などの要素に基づいて、専利法第六十五条第二項の規定により賠償額を確定することができる。

 

第二十二条

 権利者が権利侵害行為を制止するのに支払った合理的な支出を主張する場合、人民法院は、専利法第六十五条により確定した賠償額以外に別途計算することができる。

 

第二十三条

 専利権侵害の訴訟時効は二年とし、専利権者又は利害関係人が権利侵害行為を知った日又は知り得たはずの日から計算する。権利者が二年を過ぎて提訴する場合において、権利侵害行為が提訴時に依然として継続しており、当該専利権の存続期間内にあるとき、人民法院は、被告に対し権利侵害停止の判決を下さなければならず、権利侵害の賠償額については、権利者が人民法院に提訴した日から2年遡って推算しなければならない。

 

第二十四条

 専利法第十一条、第六十九条にいう販売の申出とは、広告し、店のショーウィンドウに陳列し又は展示販売会で展示する等の方法で商品販売の意思表示をすることをいう。

       

第二十五条

 人民法院が受理した専利権侵害紛争事件が、既に専利業務管理部門によって権利侵害又は権利非侵害の認定がされている場合であっても、人民法院は当事者の訴訟請求について全面的に審査を行わなければならない。

 

第二十六条

 以前の関連司法解釈と本規定が一致しない場合には、本規定を基準とする。

 

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