両岸知的財産権紛争解決メカニズムシンポジウムの概要
台湾企業の中国における知的財産権侵害事件について、経済部は2012年7月4日に学者、弁護士、海峡交流基金会及び関連政府機関(司法院、法務部、大陸委員会等)を招集してシンポジウムを開き、救済及び紛争解決が可能なメカニズムについて検討を行った。
双方の知的財産権の保護と協力を強化するため、両岸は既に「海峡両岸知的財産権保護協力協議」を締結し、主務官庁間のコミュニケーションプラットフォーム及び協力処理メカニズムを構築して、両岸の知的財産権関連の紛争解決に寄与してきた。然しながら、民間では依然として両岸の知的財産権紛争で適切な救済が受けられないとの声があり、代表からも両岸の協議を通して解決メカニズムを強化するよう提案があった。これに鑑み、経済部は上述のシンポジウムを開き、関連の議題について検討を行った。会議で決まった重要事項の概要については以下の通りである。
一、仲裁による知的財産権紛争の解決は極めて難しい
両岸の知的財産権紛争が仲裁メカニズムで解決できるかどうかについて、会議の出席者代表はまず、権利の有効性は主務官庁の審査結果を基準とすべきとする論争について仲裁又は調停等のメカニズムで解決できるかどうか、研究に値すると述べた。また、仲裁は当事者の合意を基礎とするが、当事者が権利侵害紛争中に仲裁に付する旨の合意に至る可能性は低く、両岸の現行の法制の下、一方の要求だけで手続きを始めることができるかどうか、これが当事者の訴訟権を制限するという争議を生じないかどうかなど、いずれも疑義が存在する。従って、仲裁で知的財産権紛争案件を解決するのは極めて難しい。
二、調停による知的財産権紛争の解決は執行力の問題を考慮に入れることが必要
調停で知的財産権紛争を解決するのは比較的可能だが、依然として調停結果に双方が同意する必要があり、さらに調停結果の後の認可と執行力の問題を考慮する必要がある。調停結果を強制執行するのはほとんど不可能なため、例え調停が成功したとしても、依然として最後には強制施行ができず、徒労に終わってしまう可能性がある。
三、両岸が合同で機関を設立し、関連紛争を解決することも不可能
両岸が連合して機関を設立することにより関連紛争を解決できるどうかについて、出席者代表は、紛争解決の目的からすると、救済手続きの決定は法に基づき執行名義(債務名義)者となって、はじめて有効となる。だが、両岸が合同で設立した機関が既存の救済又の処理方法において、提案又は意見提供をするだけであるなら、台湾企業にとって有益性に限度がある。もし個別案に実体的な決定があり、それによって執行が可能な場合、つまり該決定は現行の法律救済手続きを上回ることになるので、法的根拠がないだけでなく、両岸の現行法制度の下では不可能なことである。
四、中国に対し台湾企業が関係する案件について台湾籍の審判人(裁判官、人民陪審員を含む)を増員するよう提案
会議に出席した学者からは実行可能な案が出された。中国ではすでに裁判所で台湾が関係する案件を審理する専門法廷がある。知的財産権において生じた紛争に対し専門の裁判所又は専門法廷を設置し、台湾籍の審判人を増やし、両岸の学術界及び実務界の交流と合わせれば、裁判の質と判決の公信力向上に役に立つはずである。
五、両岸の協力メカニズムは専門家の参加を増やすこと、又は民間の監督チームを設立して意見の提供を行うことを提案
現在の両岸の協力メカニズムの運用方面において、会議に出席した専門家からは、一方で情報の統合共有と重大事件の通報により、台湾企業に対し中国の行政調査処理メカニズムを通して権益が保障されるようサポートし、また一方で、両岸の協力処理メカニズム方面において、専門家の参加により、または民間の監督チームを設立して意見提供を行うことで、処理結果の公信力を向上させるという提案があった。
経済部は、シンポジウムにおいて専門家や代表からの、専門裁判所や専門法廷の設置協力、台湾籍の人民陪審員又は調停委員・仲裁人の増員、情報共有と人材交流などの議題を含む貴重な提案について、経済部知的財産局は両岸知的財権作業チームに提出し、両岸で研究・討論を行い推進していく方針であると発表した。 |