中国商標法改正3大要点
中国の商標法は、公布実施されてから既に2度にわたり改正が行われたが、現状として、一部の内容が改革開放や経済発展のニーズに対応できなくなっている。商標法の第3次改正の要点は主に以下の3点である。
一、商標登録出願の利便化
普遍的に、出願手続きが煩雑で、審査期間が長いという2つ問題が存在していることにより、2008年から、国家工商行政管理総局商標局は商標の審査期間を36カ月間から10か月以内に既に短縮し、国際基準に達していた。この度の改正で、審査期間が更に短縮されることが望まれている。
4つの方向から着手し、商標登録出願の利便化を図る:
(一)登録可能な商標の分類を増設
経済発展により、商標の形式は絶えず革新しており、平面的な文字、図形商標のような伝統的なものから、立体、色彩商標、更には音響、匂い、動態等の商標までも出てきた。第2次改正の際には、立体商標が保護対象に追加され、此度の改正で、音響商標、単一の色彩商標が追加されることが望まれている。
(二)「一商標複数分類」の出願方式を採用
現在は「一商標一分類」を採っており、商標出願人は、異なる分類の商品について同一の商標を出願するには、商品の分類表ごとに、それぞれ出願しなければならない。改正後の商標法では「一商標複数分類」方式を採ることで、出願人は一つの願書で、複数の分類の商品に対し、同一の商標の登録を出願することができる。
(三) 審査意見書制度の増設
現行の制度では、商標出願人が提出した書面資料に少しでも不備があると、恐らく却下されてしまい、再度出願するしかなかった。改正後の商標法では、審査意見書の方法でもって、出願人の書面資料の不備に対する補正を許可する。
(四) 商標登録異議申立制度を整備
現行の商標法では、審査で初歩的に許可された商標に対し、公告日から3か月以内に、何人も異議を申し立てることができ、公告の期間満了で異議申し立てがなければ、登録が許可されると規定されている。改正後の商標法では、何人も如何なる理由をもって異議を申し立てることができるということでなく、異議申し立ての主体と理由を限定する。これにより商標の異議申し立て手続きの濫用という問題を解決する。
二、公正な市場の競争秩序の維持強化
この度の改正により、悪意のある先取り商標登録、「傍名牌」、冒用による馳名商標(著名商標)の商標権を侵害する等の不正競争行為が抑止されることが期待される。悪意のある商標出願とは、誠実信用の原則に反して、他人の商標の商誉を窃取し、又は不正に利用し、他人の先行権利を侵害する、又は公共資源を収奪することを目的として行われた商標登録の出願行為である。悪意で他人の商標を先取り登録することは、商標権者や消費者の合法的な権益を損なうだけでなく、商標の識別機能にも影響する。
「傍名牌」とは、他人が既に登録した商標を用いて企業名称の特徴部分にし、消費者に混同を生じさせることを意図した、ある種の「便乗」行為である。
中国のこうした先取り商標登録及び「傍名牌」の状況が非常に深刻であることに鑑み、この度の改正法ではこの問題に対して、誠実信用原則を特に条文に追加し、既に海外で登録、使用されている商標を、悪意による商標の先取り登録を禁止し、他人が既に登録した商標を用いて企業名称の特徴部分とすることも禁止する。
馳名商標(著名商標)制度について、中国で近年発生した争論は少なくない。中国の馳名商標の認定に対しては、「個別認定」、「消極的保護」の原則を堅持しているが、ここ数年ある地方と企業は意図的に馳名商標(著名商標)に特定の意味を持たせて宣伝し、「馳名商標」(著名商標)と「著名商標」(周知商標)、「大ブランド」(有名なブランド)、「優良製品」とを区別しにくくしている。
従って、この度の改正法では、「個別認定」、「消極的保護」原則をより明確に規定し、同時に広告宣伝において「馳名商標」(著名商標)を使用することを禁止する。
三、商標権侵害の処罰強化
以下の4つの方向から、商標権侵害の処罰強化を図る:
(一) 法的責任を負うべき権利侵害行為の種類を追加
例えば、許可を得ず他人の商標を企業名称の特徴部分又は商品名にしたり、他人が商標権を侵害するのを幇助すること等を商標権侵害行為に加える。
(二) 権利侵害の法定賠償金額の引き上げ
権利侵害行為の賠償金額の上限を50万人民元から100万人民元へ引き上げる。
(三) 権利侵害再犯に対する処罰の強化
例えば、商標権侵害行為を2回以上行った場合、重罰に処する。
(四) 被害者の挙証責任の軽減
商標法第3次改正では、必要があれば、権利侵害人に対し関連帳簿、資料などの提出を命令することができることが明記される。
2012年上半期までで、中国の商標の累計出願数は1,054万件、累計登録数は717万件、有効登録商標は609万件に達し、いずれも世界のトップである。
中国は商標の出願数は多いものの、国際的に有名なブランドが少なく、ブランドの付加価値と世界競争力は強いとは言えない。この状況は中国の経済規模と発展速度に見合っていないため、更に努力する余地がある。
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