新光三越と北京華聯の経営権をめぐる抗争
新光三越と北京華聯による経営上の紛争は、台湾幹部が全員解任されるという結果に終わった。その上、台湾側総経理は台湾に戻る際、公安局により臨時に飛行機から降りるよう要求され、一週間近く行動を制限された。こうした粗暴なやり方で、公の権力を利用して資産略奪を図る中国側の作法を阻止するにはどうすればよいのか、今回の事件には、全く落胆の念である。 もし反対に、中国籍の出資企業が、他国でこのような待遇を受けたら、北京はどう反応するのだろうか。中国人民は、憤怒しないのか。いったい何者が今回の華聯による「企業政変」発動に加担したのか、中国共産党当局は、調査して明白にする必要がある。 一方、国務院台湾事務弁公室(国台弁)は、これらは合資企業間の紛争に関わることであるため、国台弁は介入できない、と言葉を濁した。国台弁の言葉が誤りではないとしたら、華聯側が、合資企業の経営管理権を独占すると一方的に宣言するような事態があっていいのか。それだけでなく、警察を動員して相手方の者を捕えることさえ許されるのか。国台弁と公安局の態度が対照的であることから、これら北京側の対応がいかに矛盾したものであるか伺える。全ての法治国家において、企業間の経営紛争は、協議、調整、仲裁ないしは司法訴訟などの手段により解決すべきであり、警察が、他国の者を捕えるという横暴なやり方で、私的に自国を支持するという珍事は、あってはならないはずである。 また、台湾ですでにその経営に高い評価を得ている新光三越が北京で投資することで、資金や技術がより一層導入されたというのに、そうした企業が合理的保障を受けられなかった上に、屈辱的な身柄の拘束を受けたり、資産を略奪される等の被害にあうという異常事態を、他の台湾企業ないしは外資系企業は一体どのように受け止めただろうか。中国共産党は、貪官汚吏を一掃するためなら、どんな手荒い手段も敢行すると主張するが、大陸と台湾両者企業の合弁における抗争にまで介入し、善悪を見極めず一方に主観的に協力するのが正しいのか。 更に、中国共産党は、三月中に「物権法」を通過し、私有財産は法による保障を受けるべきである、と宣言したばかりだ。にもかかわらず、華聯という国営企業の指示の一声で、台湾企業の合法的権益を奪ってしまうことが可能であれば、法制度の事実上の崩壊である。中国は、「世界の工場」と呼ばれながらも、法治国家として世界と肩を並べるには、未だ不十分である、と認めているに相違ない。