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900問の専利代理人
試験分析をめぐり著作権訴訟


【出典:中国知識産権報】

 楊敏鋒は専利代理人資格試験合格対策のプロであり、著書には『全国専利代理人資格考試応試宝典』、『全国専利代理人資格考試通関秘笈』シリーズ本があり、知的財産権教育訓練プラットフォームで専利代理人資格試験対策のオンラインコースも開設している。

 智慧芽資訊科技(蘇州)有限公司(以下、「智慧芽」という)と百納譜資訊科技有限公司(以下、「百納譜」という)は、専利代理人資格試験の学習システムを開発した会社である。楊敏鋒は、智慧芽と百納譜の教材である「900道専利代理人考試真題解析(900問専利代理人試験過去問分析)」について、自身が著述した試験問題分析を許可なく複製したものであると主張し、63万人民元の賠償金の支払いを求めて、北京市朝陽区人民法院に訴訟を提起した。

 北京市朝陽区人民法院は、当該事件について、公開審理を行った。裁判官は、事実を整理して本件の争点は「試験問題分析が著作権法上の著作物に該当するかどうか」であると判断した。原告の楊敏峰は、「試験問題分析における回答を導き出す考え方は、自己の個性を反映しており、独創性を有するから、著作権で保護されるべきである」と主張した。被告の2社は「過去問分析には元々限界性があり、創作のレベルに達することはできず、独創性を有しないため、著作権の保護を得ることはできない」と主張した。

 楊敏鋒は訴訟において、「自分が何年も前から、全国専利代理人資格試験の過去問を研究して、独自に専利代理人資格試験の試験問題一「専利法律知識」と試験問題二「関連法律知識」の過去問分析を作成した。過去問分析は、過去問自体、回答を導き出す考え方、関連条文、参考回答の4つの部分に分かれている。そのうち、「回答を導き出す考え方」の部分は、受験生が試験のポイントを素早く理解できるように、自分の法律に対する理解に基づいて、試験問題に関連する知識について分かりやすく解説したものである。当該部分は典型的な個人のスタイルを有しており、過去問分析の本質が詰まっているため、著作権で保護されるべきである。また、「関連条文」については、条文自体は著作権の客体とすることはできないが、試験問題の中にあるポイントに基づいて適切な条文を探し出すのに知的労働を費やしているため、その労働成果も法律により保護されるべきである」と主張した。

 また、原告の楊敏鋒は、「2011年から北京思博知網科技有限公司(以下、「思博網」という)と提携し、同社の「思博網」で原告が作成した専利代理人資格試験の過去問分析を発表した。「思博網」のウェブサイトに2011年から掲載されている「関連法律知識」、「専利法律知識」の過去問分析は、全て原告が作成したものである。原告は、被告2社の学習システム内の2011年から2014年までの「専利法律知識」、2011年から2014年まで並びに2016年の「関連法律知識」の過去問分析は、何れも原告が「思博網」で発表した分析の複製であり、しかも被告2社が、前記分析の著者が原告であることを全く明示していないことを発見した。被告2社が、原告の分析における「回答を導き出す考え方」を複製した行為は、原告の署名権及び情報ネットワーク送信権を侵害するものである」とも主張した。

 被告の弁護士は、「原告の過去問分析には独創性がなく、著作権法上の著作物には該当しないため、著作権の保護を得ることができない。著作物の独創性は、文字の量ではなく、文字を通して伝えられる巧みアイデアや絶妙な言葉であったりするが、原告の過去問分析は、その文字内容、性質及び表現方法に元々限界性があるため、基本的な創作レベルに達することは不可能である。同じ試験問題に対して誰が分析しても、表現、使用できる言葉は極めて限られており、同一又は類似する可能性は非常に高い。対応する表現方法が著作権で保護されると、この表現方法によって表される思想も保護され、関連する事実の表現、描写方法を独占的に使用できることになる。これは明らかに、表現のみを保護し、思想は保護しないという著作権法の基本原則に合致しない」と主張した。

 現在、この事件は審理中であり、北京朝陽区人民法院はまだ最終的な決論を出しておらず、試験問題解析が著作物に該当するかどうか注目が集まっていている。

 実務では、「この種の試験問題解析のような参考書の著作権問題で、過去問分析が著作物に該当するかどうかは、独創性の有無が鍵となる。「独」とは、盗作ではなく自分自身が創作したことを意味し、「創」とは、一定の創作レベルに達し又は美感を有することを意味しており、著作権で保護される著作物であるためには、独創性を有していなければならない」と考えられている。例えば、新東方学校が米国教育試験サービス(ETS)の許諾得ずにTOEFLの試験問題を使用した著作権訴訟では、2003年に北京市第一中級人民法院は判決の中で「ETSTOEFL試験の主催者であり、開発者でもある。受験生の聴解、読解、作文などの技能の測定要件に基づいて、TOEFL試験の作文、聴解、文法部分の試験問題を独自に設計・作成し、専門の新聞、雑誌に発表された文章をベースに、読解部分の試験問題を創作した。米国では53セットのTOEFLの試験問題が著作権登録されている。TOEFLの試験問題の内容は、聴解、文法、読解と作文の4つの部分からなり、それぞれの試験問題の設計、創作において、個々の試験問題の選択、編集の点と、試験問題全体における各部分の試験問題の選択、編集の点のいずれも独創性があり、著作権法で保護される著作物の範疇に属する。著作権者の許諾を得ずに、何人もその試験問題を無断で複製し、発行することはできない」との見解を示している。

 2004年、北京市高級人民法院は上記訴訟について、「TOEFLの試験内容は、聴解、文法、読解、作文の4つの部分からなり、ETSTOEFL試験の開発、設計をしている。設計、創作の過程において、どの試験問題も、多くの人が多くのステップを経て、創造的な労働をしなければ完成できないものであり、独創性を有し、著作権法上の著作物に該当するため、法律で保護されるべきである」との二審判決を下している。

 また、学者の見解としては、「試験問題分析が著作権法上の著作物に該当するかどうかは、二つの側面から分析する必要がある。一般的に、個々に対する問題の回答を導き出す考え方が著作権法上の著作物に該当するとするのは難しい。著作権法は、思想に対する表現のみを保護し、思想は保護しない。そのため、回答を導き出す考え方自体は著作権法上の保護客体ではないが、回答を導き出す考え方の表現は、著作権法で保護することができる。注意すべきなのは、特定の試験問題の回答を導き出す考え方には、一定の規則があり、その規則を表現する語彙と方法は限られているため、回答を導き出す考え方を表す表現と、回答を導き引き出す考え方自体の思想とに混同が生じた場合、回答を導き出す考え方に関する言語表現が著作権法で保護されると、表現に付随する思想つまり回答を導き出す考え方が独占されることになり、このような独占は明らかに不合理であるという点である。

 一方、大量の試験問題に対する回答を導き出す考え方を分類、整理、編集して作成した試験問題分析は、編集著作物として著作権法の保護を受けることができる。個々の試験問題に対する回答えを導き出す考え方を著作権法で保護することは難しいが、回答を導き出す考え方の分類・整理、例えば、測定のポイント、対応する法律条文、間違えやすい項目などに基づいて大量の試験問題について分類・整理し、これを基にして大量の試験問題を編集するといった分類、整理、編集には独創性が反映されている。そのため、この種の試験問題分析は編集著作物として著作権法の保護を受けることができる」との意見もある。 

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