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知的財産局 
TPP参加に向けた専利法、商標法及び
著作権法の改正草案を発表

【出典:知的財産局ウェブサイト】

TPP参加推進は、台湾政府の既定政策である。知的財産局は行政院(内閣に相当する)の「TPP/RCEPプロジェクトチーム」会議の決議に基づき、2016510日にTPPに対応した専利法、商標法及び著作権法の改正草案を行政院に提出し、政権交代の際の引き継ぎ項目に盛り込んだ。ただし、今回発表された関連改正草案は今後の経済財政政策の方向性に関わるため、最終決定案ではなく、今後また変更される可能性がある。

一、専利法を一部改正:

1.専利のグレースピリオド(猶予期間)適用を拡大 

技術の公開と流通を奨励するため、特許のグレースピリオドを台湾の特許出願案の出願日前12ヶ月に延長するとともに、特許、実用新案及び意匠のグレースピリオドが適用できる公開態様及び手続き要件も緩和した。(改正条文第22条及び第122条) 

2.先使用権に関する規定の整備 

特許のグレースピリオドの調整に対応して、グレースピリオドの期間において、特許出願人は特許出願を提出することができるが、特許出願人からその発明を知らされ、且つその特許出願人がその特許権を留保する旨の声明をした場合は先使用権の保護を主張することができないとした。(改正条文第59条及び第142条) 

3.専利主務官庁の審査遅延を原因とする特許権の存続期間の延長申請制度を導入 

専利主務官庁による不合理な審査遅延期間を補償して、特許権者の権益を保障するために、審査遅延期間の起算点、控除可能期間、申請期間、出願人が申請した延長期間が専利主務官庁の計算した期間と一致しない場合の処理及び無効審判請求事由等の規定を増設した。(改正条文第57条の1から第57条の4まで) 

4.パテントリンケージ制度(Patent Linkage System)に合わせ提訴根拠を明確化 

後発医薬品(ジェネリック医薬品)の承認審査を申請し且つ先発医薬品(新医薬品)の特許権を侵害しない又はその先発医薬品の特許が無効であることを主張した者に対し、先発医薬品の特許権者は後発医薬品の承認審査手続きにおいて、権利侵害訴訟を提起することができ、先発医薬品の特許権者が権利侵害訴訟を提起しなかった場合、侵害に当たるか否か、後発医薬品の承認審査申請者は確認の訴えを提起することができることを明確に規定した。(改正条文第60条の1 

5.過渡期間規定を増設 

今回の改正は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に合わせて行われたことから、関連の変更内容は改正法施行後に提出された出願案に適用することを明確に規定した。ただし、改正草案の第60条の1に規定された専利権の権利主張に関しては、改正法施行後に施行前の出願案についても適用することを明確に規定した。(改正条文第157条の1 

二、商標法を一部改正: 

1.商標ラベル等を冒用した権利侵害行為の責任の主観的要件を改正 

環太平洋パートナーシップ協定の第1874条に、商標権侵害における民事責任では、明らかに知っていた又は知ることができる合理的な理由を有していた(knowing, or with reasonable grounds to know)ことを主観的要件とすることが規定されていることを参考にして、商標ラベル等を冒用する権利侵害行為は、行為者が明らかに知っていたことを主観的要件とする規定を削除した。(改正条文第68条) 

2.商標又は団体商標ラベル等を冒用した行為に対する刑罰規定を增設 

環太平洋パートナーシップ協定の第1877条第3項に規定された、商業的規模を有している同一又は区別することができない商標(identical, or cannot be distinguished from)を冒用したラベルや包装を他人の商標が登録されている商品又は役務と同一の商品又は役務に使用した場合との内容を参考にして、刑罰規定を增設した。また、インターネットを利用した販売や取引が既に普及していることに鑑み、その行為が電子メディア又はインターネットにより行われた場合も同様とするとの規定を増設した。(改正条文第95条) 

3.証明標章ラベル等の冒用行為に対する刑罰の規定を改正 

現行の条文における証明標章ラベル等の冒用行為に対する刑罰規定については、その主観的要件として行為者が明らかに知っていたことに限定されており、環太平洋パートナーシップ協定の第1877条第3項に定められた故意的な行為を処罰する規定と一致しないため、明らかに知っていたとの主観的要件を削除し、証明標章を冒用したラベル及び包装の輸入行為を刑罰の対象とする規定を増設することにより、環太平洋パートナーシップ協定に規定された行為態様と一致させた。また、インターネットを利用した販売や取引が既に普及していることに鑑み、その行為が電子メディア又はインターネットを通じて行われた場合も同様とするとの規定を増設した。(改正条文第96条) 

4.他人の行った権利侵害商品を販売及び販売を意図して所持する等の行為に対する刑罰の主観的要件を改正 

現行の条文における他人の行った権利侵害商品等を販売及び販売を意図して所持する行為に対する刑罰の規定については、その主観的要件が、明らかに知っていたことに限定されており、環太平洋パートナーシップ協定の第1877条の刑事上の手続き及び罰則規定と一致しないため、削除した。(改正条文第97条) 

三、著作権法を一部改正: 

1.著作財産権の存続期間を70年に延長 

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に定められた70年を計算の基礎とする規定と一致させるために、著作財産権の存続期間について、50年を計算の基礎とする規定から、著作権者の生存期間及び死後70年、又はその著作物の公表後70年に調整した。(改正条文第30条から第34条まで、及び第106条の1 

2.無断複製防止措置の回避に対する刑事責任を増設 

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)における、商業上の利益(commercial advantage)又は金銭上の利得(financial gain)のための技術的保護手段の回避及び回避の準備的行為に対して刑罰が科される規定に対応して、営利的目的で又は営業上使用するために断複製防止措置の保護規定に違反した者に対し、刑罰を科す規定を増設した。(改正条文第96条の1 

3.職権起訴制度に対応した非親告罪への変更 

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)における、商業的規模で行われる著作物の違法な複製及び頒布の行為に対し、主務官庁に職権による法的措置を取る(legal action)権限を付与する規定に対応するために、本法の第91条第2項の販売又は貸与する目的で複製する行為と、営利目的で第91条の12項の著作財産権を侵害する複製物であることを明らかに知りながら頒布する行為について、その複製物がデジタル化(光ディスクなど)された物の場合は、非親告罪とすることとした。同時に、デジタル技術の発達に伴うインターネット上の海賊版問題が日々深刻化していることに対応するため、デジタル環境における著作権侵害行為の発生を効果的に抑止できるように、本法の第92条の公開送信の方法により著作権を侵害する罪についても、改正して非親告罪とした。(改正条文第91条、第91条の1及び第100条) 

4.衛星放送及びケーブル放送用の暗号化された番組伝送信号の保護を増設 

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に加え、ここ数年、米国、シンガポール、オーストラリア及び韓国等の国が立法を通じて、衛星放送及びケーブル放送用の番組伝送信号の合法的な権益の保護を強化していることに対応した。また、これらの保護は著作権と異なっているため、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に定められた規定に基づいて、本法では第七章の一「衛星放送及びケーブ放送用の暗号化された番組伝送信号の保護」を増設した。(改正条文第104条の1から第104条の4まで) 

5.保護期間延長規定の適用及びその施行日を明確に規定 

今回の改正は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に対応するためであり、法改正前の既存の著作物に保護期間延長規定が適用されるか否かの問題を解決するために、改正・施行前の著作権法に定められた著作財産権の存続期間が満了していない場合、保護期間を70年まで延長する規定を適用することが明確に規定された。そのため、台湾人又は外国人の著作物で改正・施行前の著作権法により存続期間が既に満了して公共の財産となったものについては、70年まで延長する規定が適用されない。次に、今回の改正は、台湾の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の参加スケジュールと関わっており、そのスケジュールは行政院が決定することから、改正案の施行日は行政院が定めると明確に規定した。(改正条文第106条、第117条) 

著作権法の改正草案について、知的財産局は以下の二点について特に説明している。 

(一)非親告罪の範囲の変更: 

TPPの刑事訴追の要求に対応するために、現行の著作権侵害の非親告罪の範囲を変更する必要があるが、本条の規定の司法実務への影響が重大であることを考慮して、甲案と乙案という二つの案を暫定的に併記し(改正条文第100条)、今後、知的財産局が司法院及び法務部等の司法機関と協議を行った後、どちらの案を採択するかを決定する。 

(二)録音著作物の実演家に対する報酬(使用料)請求権の付与:  

TPP(協定)において録音著作物の実演家に「公開演出」及び「公開放送」の報酬(使用料)請求権を付与することが要求されているか否かについて、日米等のTPP参加国の関連条文についての解釈及び法改正の方向性を調査した結果、一致しておらず、また、上述の報酬(使用料)請求権の付与は公衆及び放送業者の利用行為に重大な影響を及ぼすことを考慮して、現段階ではこの議題について改正草案を提出せず、知的財産局は今後更に資料を収集し、その他の参加国に諮問した後、再度検討を行う。

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