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著作権法改正草案第三稿の意見募集

【出典:知的財産局ウェブサイト】

台湾の著作権法は1998年に改正されてから現在に至るまで、デジタル時代の各種ニーズに十分対応できておらず、大幅な調整が求められていた。そのため、各国の著作権法の規定を参酌し、台湾の実務における種々の紛争を鑑みて、著作権法改正草案を提出することとなった。現行条文は計117条であるが、改正後は149条となる改正の要点は以下のとおり。 

一、テクノロジーの発展ニーズに応じ、著作財産権における無形の財産に対する権利規定を統合及び改正

情報テクノロジーの応用発展(例えば、インターネット、デジタル・コンバージェンス、クラウドテクノロジー、電子書籍及びインターネットテレビのIPTV等の新しい技術の登場)に伴い、無形資産の利用権は徐々に著作権法制の核心となってきている。

1.デジタル・コンバージェンスの発展により、利用形態と権利範囲の境界が曖昧になっているという問題について、公開放送及び公開伝送の定義を改正する。

2.インターネット及び送信設備の発展に対応して、公開伝達権を追加する。

3.公開上演及び公開口述が区別しにくいという問題について、公開上演と公開口述を統合するとともに、公開上演の定義を改正する。

4.公開上映の定義を簡素化して、理解しやすいものにする。 

二、著作者帰属規定の合理性を検討

現行の著作権法では、職務著作及び出資し他人を招聘して完成させた著作物は、著作者に関する約定がない場合には、その著作者を、それぞれ被雇用者及び被招聘者とすると規定している。即ち、現行法では著作財産権は契約の約定によって被雇用者又は雇用者、被招聘者又は出資者のいずれかが全部を享有することとなっており、柔軟性に欠けていた。

この度の改正では、雇用者と被雇用者又は被招聘者と出資者の約定に、例えば、双方がそれぞれ著作財産権の一部を享有し、又は約定により第三者が著作財産権を享有する等の柔軟性をもたせることで、契約自由の原則に沿うようにする。

また、実務において視聴覚著作物及び録音著作物の多くは、出資し他人を招聘して完成させる著作であり、且つ、その著作物には多くの創作者が関与することから、その著作財産権の帰属について約定がない場合、実務上、出資して完成させた視聴覚作品又は録音作品の利用、流通が困難であるという問題が度々生じていた。視聴覚著作物及び録音著作物の著作財産権の帰属については出資者が権利を有すると定めることが比較的好ましい方法であるため、条文を追加してこれを規範化する。

三、著作物の流通、利用を促進するために、著作者人格権の規定を改正

1.現行の著作権法では、法人が解散した後の著作者人格権侵害について救済手段がないため、国際条約及び外国の立法例を参酌して、法人解散後の著作人者格権保護を削除する。

2.著作者人格権の保護を強化するために、著作者の名誉を害する方法でその著作物を使用した場合は、現行法の第87条第1項第1号の「侵害とみなす」だけとするのではなく、人格権侵害に当たることを明確に規定する。

3.著作物の流通、利用を促進するために、修士・博士論文を現行の「公開発表に同意するものと推定する」から「公開発表に同意するものとみなす」に改正するとともに、著作者の死亡後一定の要件を満たせば著作者の生前には未公開であった著作物を公開発表することができるとの規定と、公務員が職務著作の著作者である場合には、著作者人格権を享有しないとの規定を追加する。

四、市場の調和を促進するため、頒布権及び貸与(有償)権の関連規定を明確

著作物の有形的利用において、現行の著作権法では頒布、輸入及び権利の消尽原則の規定について十分に明確であると言えない。例えば、頒布は原作品又は複製物の実際の配布に限るかの否か、権利の消尽と平行輸入禁止の関係などが不明確で、市場が混乱しやすい状況にある。

この度の改正では頒布権について、実際に配布する行為を意味するものと明確に規定する。ただし、公開陳列及び違法な複製物を所持する行為も依然として、著作権法の規範の制限を受ける。また、国際消尽の原則の意味について、著作財産権者が所有権を移転する方法で著作物の原作品又は複製物を頒布した後は、該著作の原作品又は複製物に対し頒布権及び貸与(有償)権を主張することはできないものと明確化して、関連規定を整理し且つ改正するとともに、真正品の並行輸入を禁止する規定は保持して、著作権者に市場細分化の権利を与えることとする。 

五、実演家及び録音著作権の保護を調整

録音著作物は、著作権又は著作隣接権をもって保護しなければならないが、各国で国内法上異なっている。保護の程度からすると著作権による保護が比較的基準が高い。台湾は米国と同じで、著作権で保護されているが、ドイツ、日本は、著作隣接権で保護されている。長年、台湾では著作権で録音著作物が保護されており、関連産業においては既に一定の秩序が形成されているが、この度の改正で繰り返し討論を行った結果、やはり著作権での保護基準を維持すべきとの結論になった。

ただし、現行の著作権法では、実演家及び録音著作物の保護に関する規定は分かれているため、検索しやすいように別途独立した条文でもって規範化する。また、現行法では実演家は、固定されていない実演又は既に「録音著作物」に固定された実演についてのみ独占的権利を享受できると規定されていたが、WIPOによって20126月に採択された「視聴覚的実演に関する北京条約」の国際条約を踏まえて、この度の改正では、実演家はその視聴覚物に記録された実演についても独占的権利を享受できるとする規定を追加する。

六、著作財産権を制限する規定を、より合理的な内容に改正

著作権法は元来主に著作権者の著作権益を保障するものであるが、社会の公共利益との調和を考慮し、国の文化の全体的な発展を促進するために、必要に応じて、制限を加える必要がある。現行の著作権法の合理的な使用の規定では、インターネット及びデジタル時代のニーズに対応しきれないため、今回の改正法では、遠隔地学習及び国家図書館のデジタルアーカイブ等の合理的な使用の規定を追加した。

さらに、今回の改正法では、第65条の合理的使用の概括的条項規定に基づいて調べなくてもよいように、著作権法第44条から第63条まで等の著作財産権の制限規定の適用要件を明確に規定するとともに、「合理的な範囲内」の要件を削除した。

七、著作財産権者不明の著作物の強制許諾及び著作財産権の質権設定登記の規定を追加

文化創意産業発展法第24条に、著作財産権者が不明な場合の強制許諾制度が規定されているが、これは文化創意産業に限り適用可能であった。著作物の流通、利用を促進するために、利用者が相当の努力を払っても権利者と連絡がとれないために、許諾を得られない場合でも、孤児著作物を使用できるように、著作財産権者不明の場合の強制許諾の規定を追加する。

著作財産権者が不明な著作物の利用の適時性と著作権主務官庁の裁定効率の向上とを両立させるために、日本の規定を参考にして、著作権主務官庁の裁定が下される前において、利用者が保証金を供託すれば、利用できるものとする。

台湾の文化創意産業発展法第23条では著作財産権の質権設定登記を規定しているが、その適用範囲は文化創意産業に限られていた。また、その業務は著作権主務官庁が取り扱っているため、著作権主務官庁は「著作財産権質権設定登記及び調査閲覧弁法」を定めている。権限と法規を統一するために、著作財産権質権設定登記の規定を追加する。

八、税関の水際規制措置を改正

現行の著作権の水際規制措置の規定では、税関が申立てに基づいて差押を行うのは、著作権者又は製版権者が侵害の差止請求権を行使する緊急性を重視してのことであるが、差押物品が権利侵害物品であるか否かは、司法機関の認定を待たなければならない。そのため、民事訴訟法における債務者が担保金を供託すれば仮差押又は仮処分の取消が許可されるとの規定の目的を参酌して、被差押人は二倍の保証金又は相当する担保を供託して、税関に差押えの停止を求めることができる規定を追加する。

また、権利侵害の事実調査又は訴訟提起の必要性から、商標法の規定を参考にして、税関は権利者の申立てに基づき、権利者に権利侵害貨物の関連情報を提供する規定を追加するとともに、関連情報の用途については制限を加える。また、一部著作権侵害の認定が困難なものについては、著作権者が税関からサンプルを貸借して権利侵害の認定を行う必要があるため、権利者は保証金を供託して税関にサンプルの貸借を申立てて権利侵害認定を行うことを許可することを定める。

九、時代にそぐわない刑事責任規定の改正を検討

現行の著作権の刑事責任に係る規定は、かつての実体のある物を主とした海賊版の問題、及び、ナイトマーケット、新聞折込広告による海賊版の光ディスク販売の横行等の問題に対応したものであった。しかしながら、近年、科学技術の環境変化から、海賊版光ディスクの重大違法事件がなく、ナイトマーケット、新聞折込広告による海賊版ディスク販売も大幅に減少している。したがって、海賊版光ディスクの製造、販売を公訴罪とする規定及び6か月という法定刑の下限の規定を改正する。

無断で所有権を移転する方式で著作物の原作品又はその複製物を頒布する行為については、現行条文では正規品及び海賊版についてそれぞれ処罰規定があったが、規範要件と刑罰の重さに差があまりないため、統合して簡素化するとともに、正規品の頒布の刑事処罰規定を削除して、正規品の頒布は民事訴訟手段を取る、例えば、違約金又は損害賠償請求の方法で解決するようにする。「頒布を目的として公開陳列した又は所持した」との侵害様態については、別途処罰規定を定める。

また、真正品の並行輸入を禁止する規定の違反に対しては民事責任のみであることから、バランスを取るため、真正品の並行輸入を禁止する規定に違反した後に頒布する行為を非犯罪化する。

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