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意匠権が登録されている商品の販売は、商標の使用に該当しない

-知的財産及び商業裁判所111年度民商訴字第11号民事判決-

【出典:知的財産局ウェブサイト】

これは「五年千歳龍馬図」の商標権侵害をめぐる紛争事件である。原告は登録第01576142号、第01575969号及び第01575779号「五年千歳龍馬図」商標(併せて以下、係争商標という)の商標権を有しており、第45類、第41類及び第35類の商品又は役務への使用を指定していた。原告は、「被告は、係争商標が原告の商品及び役務を表す表徴であることを知りながら、意匠登録を出願し、登録番号第D212687号置物の意匠権(以下、被告の意匠という)を取得しただけでなく、その神龍宮の五年千歳のファンページでも龍馬彫刻品(以下、係争商品という)を販売している。202111月頃、被告は《縉呈工芸品専門店(被告の店名)》と書かかれた宣伝ビラと係争商品を持って、原告に販売した。原告がそれを外部に委託し鑑定作業を行った結果、被告の龍馬図は、関連消費者にそれが原告の販売する商品であると誤信させ、混同誤認を生じさせる虞があることが分かった。従って、原告は、商標法第68条第3号、第69条第3項の規定により、被告に対して商標権侵害訴訟を提起し、損害賠償金60万台湾ドルを請求する」と主張した。

これに対し、被告は、「被告の意匠のデザインは置物である。《置物》は《商品》に属し、第20類、第21類に分類され、係争商標の使用を指定した第45類、第41類及び第35類がいずれも「役務」に属するのとは異なる。2003年に改正された商標法には、「立体的形状」も商標として登録出願することができることが明確に規定された。係争商標の商標専用権には、「平面」、「白黒」の商標を保護することが明らかに示されているが、《立体的形状の保護》については確かに主張していないため、係争商標の商標専用権を立体化された商品まで拡大し主張することは、無論できない。また、被告の意匠自体は商品であり、それを商標として出所又は品質を示すのに使用したのではないため、「商標の使用」とは言いがたい」と主張した。

 

係争商標

被告の意匠(意匠番号D212687号、置物)

 

本事件の争点は、「係争意匠商品の販売が、商標の使用に該当するかどうか」にある。知的財産及び商業裁判所は、以下の判断理由に基づき、「被告の係争商品の販売は、商標の使用には該当せず、しかも係争商品と係争商標は類似しておらず、関連消費者に混同誤認を生じさせる虞はなく、原告の商標を侵害してもいない」との判決を下した。

1)系争商品のチラシに、龍馬(つまり、麒麟)図はあるが、《縉呈工芸品専門店》もチラシに記載されているため、関連消費者が当該チラシに接した際に認識するのは、系争商品が被告の専門店で販売されていることである。また、関連消費者が購買時に認識するのは、系争商品が商標として使用されていることでなく、商品自体として販売されていることである。

2)系争商標と系争商品は、いずれも伝統的な龍馬図に由来し、龍馬図は市場の「麒麟」、「龍馬」などの縁起の良い置物や図案でよく見られるものである。伝統的な龍馬図に各々のデザインを盛り込んでできた系争商標と係争商品を比較すると、両者は明らかに異なっている。したがって、系争商標と系争商品が類似して関連消費者に混同誤認を生じさせる虞があるとは認めがたい。

3)被告が意匠権を取得後、系争商品を生産し販売したことは、当該意匠を合法的に実施する行為に属し、商標として使用する行為でない。被告の販売している系争商品は置物のため、一般消費者は、購入時に、系争商品を商品又は役務の出所として認識するのでなく、置物が示す縁起の良い意味合いに焦点を置き認識している。つまり、系争商品自体は、あくまでも商品で、商標として使用されるものでない。また、系争商品と系争商標は、明かに異なっており、関連消費者に混同誤認を生じさせる虞がないため、原告の係争商標を侵害していない。

 

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