2021年10月27日から改正「混同誤認の虞に関する審査基準」が施行
台湾知的財産局は、審査の一致性を促進し、商標の混同誤認の虞の判断基準をより明確にし、根拠とすることができるように2021年9月9日に「混同誤認の虞」に関する審査基準の改正草案の要点を発表した。同年10月27日に経済部(日本の経産省に相当する)は、経授智字第11020030911号令において改正後の内容と、名称を「混同誤認の虞に関する審査基準」に改定したことを公布し、同日から施行した。
改正後の「混同誤認の虞に関する審査基準」では、混同誤認を判断する各要素、例えば、商標の識別力の強弱、先行権利者の多角化経営の状況、実際の混同誤認の状況、関連消費者の各商標に対する熟知度、系争商標の出願が出願人の善意によるものか否か、その他の混同誤認の要素及び商標法第30条第1項第10号の但書の「明らかに不当」に関する認定原則について、その文言が若干修正されたと同時に関連内容の段落も調整された。そのほかの改正ポイントは、以下のとおりである。
(一)商標の類似
Ø 商標の類否を判断する際に、主観的な要素を考慮することは含まないことが明確に示された。つまり、商標全体の外観、観念又は称呼などにおいて、商標が客観的に表現されている商標図案のみに基づいて、商標が類似程度に達しているか否かを判断する。商標の創造性又はデザインコンセプトについては、デザイナーの内心の主観的な意思に関わるものであり、消費者が商標の外観形式から知ることができないため、考慮しない。(5.2.4)
Ø 特定の対応する文字と発音表記を有する中国語・外国語の類似判断原則が追加された。例えば、商標の文字の称呼が類似するか否かを判断するとき、商標自体の文字の称呼を基準とする。中国語の称呼は、台湾で通常使用されている発音を基準とし、外国語の称呼は、外国語の発音規則を判断根拠として参酌することができる。なお、何度も翻訳しなければ、中国語と外国語の発音が関連していることが分からない場合は、原則として称呼の類似にはあたらない。但し、「有GO蝦」と「有夠蝦」のように、中国語と外国語の発音表記が互いに対応して全体的な称呼が似ていたり、「Fuji」と「富士」のように、社会通念上特定の対応する言葉があったりする場合、関連消費者に連想させやすいため、やはり類似にあたる可能性がある。(5.2.6.4)
Ø 商標の文字の類否を判断する際に、文字商標の全体を分解して対比を行うことができる態様が追加された。外国語文字が全体としてそれぞれ別の意味を持つ場合(例えば、「Primrose」と「Rose」)、原則として、分解し一部要素を切り離して対比して類似であると認定してはならない。但し、関連消費者が熟知する複数の単語からなる商標の場合(例えば、「LINECAST」と「LINE」)、又は商標の主要な構成部分に対して全体観察を行った場合(例えば、「sogotaiwan」と「SOGO」)、関連消費者にその中の識別可能な文字によって混同が生じる可能性があるときは、類似であると認定することができる。また、「coco, Bonnie」と「COCO」、「A★Bones」と「A-Bone」のように、外国語文字に句読点、図形記号などが使われていたり、通常の書き方と異なる大文字と小文字の組合せであったりして、外国語文字が外観上分離することができる場合、原則として、分離後の文字について全体観察するとともに、商標の主要部分に注目して比較観察を行うことができる。消費者が注目する又は後に印象に残る主要部分が似ていれば似ているほど、類似の程度がより高いと判断される。(5.2.6.9、5.2.6.10)
(二)商品・役務の類似
Ø 商品・役務の類否を判断する際に、指定商品・指定役務の名称の分類に疑義がある場合、世界知的所有権機関(WIPO)の標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定の分類基準を参考にして解釈しなければならない。判断するときは、商品・役務の性質、機能又は用途を優先的に考慮し、次にその生産者又は提供者、その次に販売チャネル又は販売場所、消費層等その他の関連要素を考慮することができる。(5.3.1~5.3.3)
Ø 商品の性質、機能又は用途などの要素を判断する際の関連原則について補足説明が追加された。商品の性質とは、商品の本質又は特性を指す。商品の機能又は用途とは、商品の所期の使用目的を指し、認定するときには、社会通念を基準とする。商品が同じ機能又は用途を備える、又は相互補完機能がある場合、類似にあたる。相互補完機能とは、一つの商品が別の商品の使用に不可欠又は重要であることを意味する。例えば、「万年筆」と「万年筆用インク」は機能上「相互補完関係」があるため、消費者はそれらが同じ業者によって製造され又は販売されたものと認識する可能性がある。但し、相互補完機能原則は、商品の使用にのみ適用され、商品の製造過程には適用されないため、商品自体とその部品、原料又は半製品の間で必ずしも相互補完関係があると認定されるわけではない。また、商品と役務の間で、第9類「コンピュータハードウエア;コンピュータソフトウエア」の商品と第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守;コンピュータのデータ処理」の役務のように、相互補完機能が存在する可能性もある。相互補完関係が緊密であればあるほど、類似の程度は高くなる。(5.3.4、5.3.10.1)
Ø 完成品である商品と部品、原料又は半製品との間の関係を判断する際の原則について補足説明が追加された。商品が複数の部品からなる又はある商品が原料若しくは半製品として別の商品の製造に使用される場合でも、必ずしも類似関係があると認定されるわけではなく、個別の案件の具体的な状況に応じて判断しなければならない。例えば、完成品である商品とその原料、部品の間で、性質、用途、販売チャネル又は消費層などの点に違いがある場合、類似していないと認定することができる。但し、部品又は半製品の商品が、単独で販売することができ、且つ最終製品の使用に必要なものの場合(例えば、第21類の「電動歯ブラシ」と「電動歯ブラシヘッド」)、類似商品であると認定される可能性がより高くなる。(5.3.5)
Ø 「販売チャネル又は販売場所」、「消費層」が類似商品・類似役務の考慮要素の一つとして追加された。前者は商品を販売する又は役務を提供する販売場所を指す。但し、この要素では、スーパーの乳製品売り場やデパートの化粧品エリアなどのように、専門の売り場で同種類の商品が同一のエリアに置かれ販売されている場合に限り、類似商品であると認定される可能性が高い。後者は商品・役務の実際の消費者及び潜在的な消費者を指す。商品・役務の消費層に同質性がある場合、類似であると認定される可能性が高くなる。(5.3.7、5.3.8) |