台湾 知的財産局が「商標法一部条文改正草案」を公告
台湾知的財産局は、2020年末に「専利法一部条文改正草案」(以下、専利法改正草案という)を公告したが、その数日後の2021年1月7日に、「商標法一部条文改正草案」(以下、商標法改正草案という)も公告した。国際基準に合わせるために、商標法改正草案は、専利法改正草案と同じく、日本、米国、ドイツ等の国の立法例を参考にして、現行の台湾の商標救済制度を大幅に変更する。この商標法改正草案では、110条を超える現行の商標法のうち、9条を改正、33条を新設、11条を削除し、2011年以来最大の改正となる。今後、知的財産局は改正草案の内容について、各業界に向けて公聴会を開催する予定である。
今回の改正草案のポイントは、以下のとおりである。
Ø 登録異議申立て制度を廃止
現行の商標紛争手続については、商標法第二章第四節に商標登録異議の申立ての制度が定められており、商標登録がある法定事由に違反した場合、何人も商標の登録公告日から3ヶ月以内に登録異議の申立てをすることができる。商標審査官1名による審査の結果、異議申立てが成立すると認められた場合、当該商標の登録は取消される。
しかしながら、現行の商標登録異議の申立てと商標登録の無効審判に規定されている商標の不登録事由は同じであり、且つ異議申立のうち約97%が商標の相対的不登録事由に関するもので、「利害関係人」しか請求できない現行の商標登録の無効審判請求と機能が非常に重複している。専門家や学者からの、商標登録の合法性の問題は無効審判制度に統合して解決するべきとの提案を受けて、絶対的不登録事由違反の商標登録に対する無効審判の請求人適格を、商標登録異議の申立ての規定と同じ「何人」に緩和し、また、商標審査の正確性を向上させるために、出願審査段階で第三者による意見書の提出を受け付けることとした。紛争制度が統合され関連措置が強化された後は、効果的に商標登録異議の申立ての需要が下がるとみられる。
Ø 独立した商標救済案件の専門審議部門の設置
商標登録異議の申立て制度を廃止するとともに、知的財産局は外国の商標救済制度を参考にして、商標法に「第四節の一」を新設して複審及び争議審議手続きを導入し、且つ商標救済案件を専門的に審議する「複審及び争議審議会」を設置すると同時にその関連規定を制定する。「複審及び紛争審議会」は、その名のとおり、以下の複審案件及び紛争案件について専属的な管轄権を有する。
複審案:
一、商標登録出願に対する拒絶査定を不服として請求する拒絶査定複審案
二、商標登録出願に関するその他の処分又は商標権の異動手続きに関する処分を不服として請求する複審案
紛争案件:
一、商標の不登録事由に該当する事情があると主張する商標登録の無効審判請求案
二、商標登録後、商標の不正使用などの状況があると主張する商標登録の廃止(取消)審判案件
複審案又は紛争案件の審議は、知的財産局が審議員として3人又は5人の商標審査官を指名し、多数決で行わなければならない。そして、審議手続きをより周到で厳格なものにするため、商標法に口頭審議、予備手続などのメカニズム、審議中の適度な心証開示、審議終結通知などを導入する。
また、今回の商標法改正草案によると、知的財産局は職権で商標登録を廃止(取消)することができなくなり、また審査官が無効審判を提起する事由も大幅に削減される。
Ø 商標救済手続きの改革
現行の救済制度において、知的財産局が行政処分の性質を有する審議決定を下した後、それを不服とする場合、商標登録出願人、商標権者、又は紛争案件の当事者は、まず訴願法に基づき知的財産局の直接の上位機関である経済部に対し訴願を提出しなければならない。訴願の結果に更に不服がある場合、行政訴訟法に基づき行政訴訟を提起することができる。
救済効率を向上させるために、今回の商標法改正草案では、複審案の請求者又は紛争案件の当事者は、複審及び紛争審議会の審議結果に不服がある場合は、訴願手続きを免除し、商標法の新しい規定に基づき直接、知的財産及び商業裁判所に対し、複審案や紛争案件に係る訴訟を提起することができるとし、そしこの2種類の訴訟では、行政訴訟手続きを適用せず、民事訴訟手続きを適用することとした。また、知的財産及び商業裁判所の下した判決に対する上訴審では、弁護士強制制度を採用する。
Ø 経過措置
旧法の適用範囲は、新法施行前に進行中又は審決済みの商標登録異議申立ての案件、新法施行前に審決済み又は処分済みの案件である。
新法の適用範囲は、新法施行前にまだ審決されていない、処分されていない案件、訴願又は行政訴訟で取消され知的財産局に差戻された案件である。 |