台湾　知的財産裁判所の
108年行商訴字第94号行政判決

【商標法】商標登録

【判決日】中華民国108（2019）年11月21日

これは商標登録をめぐる商標行政訴訟事件である。原告は、経済部が中華民国108（2019）年6月25に下した経訴字第10806306310号の訴願決定を不服として行政訴訟を提起した。知的財産裁判所は当該訴願決定及び原処分を共に取消す判決を下した。

【事実】

原告は、2017年10月26日に上記の図案について登録査定時の商標法施行細則第19条に定める商品・サービス分類表第35類の「工業又は商業の管理に関する助言、企業の運営若しくは管理に関する援助、マイレージプログラムの管理」を指定役務として、被告（経済部知的財産局）に登録出願をした。被告は出願第106067329号として商標の審査をした。

その後、原告は2019年2月12日に分割が認められた。分割後の本件出願案は、被告による審査の結果、引用商標との類似性が高く、関連消費者に混同誤認を生じさせる虞があると判断され、拒絶査定を受けた（2019年4月16日に発行された、第396326号商標拒絶査定書参照）。原告はこれを不服として訴願を提起したが、経済部は経訴字第10806306310号をもって訴願を棄却する訴願決定を下した。原告はこれを不服として本件訴訟を提起した。

【判決の概要】

1、（前略）両者は共に英文字「EAGLE」を有しているが、見た目の印象では、英文字のみからなる商標と、英文字に図案が加えられた商標という違いがあり、しかも、図案の配色では、係争商標出願は青色系と黄色系を採用しているが、引用商標は黒地に白字のデザインをしていて、図案全体の色の系統も明らかに異なっているため、一般の知識水準及び生活経験を有する普通の消費者にとって、両商標は英文字「EAGLE」がある点で類似しているものの、類似程度は高くない。

2、商品又は役務の区分は、行政管理及び検索をしやすくするためのものであり、商品又は役務の類否の認定は、その区分の制限を受けるわけではない。商標法第19条第6項には「類似する商品又は役務の認定は、前項の商品又は役務の区分の制限を受けない」と規定されている。つまり、同じ区分に属する商品が必ずしも類似する商品又は役務とは限らない（「混同誤認の虞に関する審査基準」5.3.2参照）。また、既に社会や産業の分業の細分化が進み、単に抽象的な概念だけで商品又は役務の類否を判断することができないため、各関連要素を統合し、一般の社会通念、市場の取引き状況及び各種の産業の性質を考量した上で、個別の案件ごとに適切な判断をしなければならない（最高行政裁判所の「108（2019）年度判字第374号」判決文の主旨参照）。

3、係争商標出願の指定役務である「マイレージプログラムの管理」と、引用商標の指定役務である「広告宣伝物の企画及び制作、ショーウインドーの装飾、ディスプレイデザイン」は、共に商品・サービス分類表の第35類の広告サービスの提供グループに属するが、上記の条文と実務見解によれば、単に商品又は役務の区分だけで類似していると認定することはできず、各産業の特性について、個別の案件ごとに適切な認定を行わなければならない。

4、係争商標出願の指定役務である「マイレージプログラムの管理」について、その中のフリークエントフライヤープログラムは、一般的に「マイレージプラン」或いは「マイレージサービス」と呼ばれ、航空会社が顧客ロイヤリティを高めるために、会員に提供する様々な特典、例えば、よく知られているのは、マイルの累積、座席の優先アップグレード、優先搭乗、空港ラウンジの利用などを指す。したがって、「フリークエントフライヤープログラム」役務は、航空会社又は航空連合が提供することがほとんどである。係争商標出願の提供する役務は、これらフリークエントフライヤープログラムについて提供される管理サービスに属する。一方、一般の広告企画業者は主に顧客に代わって広告を企画、制作、発表し、広告効果の評価をするなどのサービスは提供するが、航空会社のフリークエントフライヤープログラムの管理をサポートすることはない。両者は機能、用途、提供者などの要素において、一部販売促進プランの管理等広告の性質を有しているものの、一般の社会通念、市場の取引き状況及び各種産業の特性に基づけば、類似程度が高い役務に属さない。