産地団体商標及び地理名称
を含めた一般商標登録の衝突
1.はじめに
1993年台湾商標法改正するとき、証明標章及び団体標章を増設し、2003年に団体商標及び産地証明標章の規定を増設。2011年商標法改正するとき、新たに産地団体商標を増設した。しかし、これより先、2007年7月25日に発布された「証明標章、団体商標及び団体標章審査基準」は「産地団体商標」に対して関係するガイドラインを、産地団体商標の出願人がコントロールする団体商標の使用方式を説明するほか、なおその規定する区域範囲及びその指定商品又は役務が当該地理環境によって具備された特定の品質、名声またはその他特性を含むべきである。しかし、2011年の商標法は初めて条文の中にはっきりと定めるとともに正式に「産地団体商標」という用語を新設した。
2.団体商標登録種類の類型及びその特色
台湾商標法における団体商標は一般団体商標及び産地団体商標に分けられる。一般団体商標は商品・役務は特定の団体会員に由来することを指している。産地団体商標は商品・役務は特定の会員に由来することを指すほか、かつ当該商品・役務は特定の品質、名称又はその他の特性を有する。このとき、団体商標の出願人は当該地理名称を含めた標識又は当該地理区域を支持する標識をもって産地団体商標を登録出願することができる。
団体商標及び一般商標はともに商標である。台湾商標法94条に「証明標章、団体標章または団体商標はこの章に別段の定めがある場合を除き、その性質により、この法律で商標に関する規定を準用する」とある。換言すれば、団体商標はその団体性及び団体性から派生された差異、例えば出願人の資格、登録要件又は譲渡、使用許諾等規定を除き、その他商標の一般規範の出願登録の手続き、登録できない事由、権利期間及びその更新、異議申立及び無効審判事由並びにそれらの手続き、取消審判手続き及び権利侵害救済等については共に準用する余地がある。
産地団体商標の目的は商品又は役務を保護することにある。当該地理環境の自然要素又は当該地域の伝統的又は特殊の製造過程、産出方法、製造技術等人文要素と関係する状況があるからである。若し団体商標の使用を指定する商品の具する特性又は品質は地理環境と関連がない場合は即ち産地団体商標の定義に合致しない。理論上、商標権の保護範囲は制限されるべきである。但し、それが依然商標権の独占性及び排他性を有するため、既有の第三者に対して商標権の効力が及ばされるか否か並びに商標侵害の判断は94条の準用条項または関係規定の不当解釈により、とくに産地団体商標が一定の名声を具することにより「著名」とみなされたとき、過度の保護を与えて全体の公益に対して不利な影響を及ぼすことになる。例えば、桃園県復興郷農会が所有する「拉拉山(ララサン)水蜜桃及び図形」に類似する産地団体商標を使用して「拉拉山(ララサン)米」商品又は「拉拉山(ララサン)米行」の営業主体に使用される場合、若し前者が著名であると認定すれば、94条の70条の準用により(侵害と見なす規定)、同一又は類似する商標の非類似産品又は役務への使用を阻止する可能性がある。但し、産地団体商標は商品・役務が特定の会員に由来することを指示することと特定地理区域と相い連結することで、非類似の商品又は役務は本当に産地団体商標の識別力または名声を減損せきるか否か。ひいては営業主体に使用されるため、消費者に混同誤認させるかどうかは本当に想像しがたい。産地団体商標という特殊種類の商標に一般商標に等しい権利を与えるべきか否かは実に議論する空間がある。
もう一方若し産地団体商標登録以前に、既に同一地理名称を使用する一般商標登録または産地証明標章登録があったとき、団体商標の出願はいかに衡量すべきか。若しくはその併存登録を許すべきか。而して産地団体商標登録後、若しその他同一又は類似する商標登録がある場合、一般商標規則にもとづいて混同誤認の判断認定を行うべきかどうか。若しくはその他の考量があるべきかについても考量を要する点であろう。
3.地理名称を含めた一般商標登録が衝突を発生する可能性
若し一般商標は先に登録された場合、考慮すべき問題は主に地理名称を含めた一般商標登録が産地団体商標に対して発生する可能の影響にある。たとえ商標法30条1項8号により、商標が若し「公衆にその商品または役務の性質、品質または産地について誤認誤信させるおそれがあるものは登録できない」とあるが、しかし、その産地を誤信誤認するおそれがなく、一旦その登録を許可された後、既に登録された一般商標はその他地理名称を使用する商標に追い落とす反応を発生する可能性がある。
商標法30条1項8号の規範目的は商標構成要素の図様文字等がその指定する商品又は役務との不実の関係を制止し、消費者が誤信誤認の状況の下、商品と役務の来源をはっきりと識別することができないことを避けることにある。従って、わが国実務上、地理名称を使用する商標に対し、消費者をして商品の来源または産地について容易に誤認誤信するため、ずっと厳しい認定基準を採られている。例えば最高行政法院は2009年度判字第780号太武山商標登録事件に関し、このように認めている。即ち係争する商標出願人は係争商標をもって商品の産地を暗にほのめかして消費者にその酒類産品は金門に由来することに誤信させて旧商標法23条1項11号(現行商標法30条1項8号)の規定に違反するとしてその登録を許さなかった。この条文に関して実務では今までずっとこのように認めている。誤信誤認させる可能性さえあれば足り、実際に混同誤認の結果を発生することを必要としない。それから当該産地は「夙に著名な商品を大量に産出することに限らない」、ただ「地理名称の性質及び消費者の認知をもって判断及び考慮の要素」とすればよろしい。
然るに、この類の地理名称を含めた一般商標は若しその商品は確かに当該地区に由来するとき、とくに当該地区の「夙に著名な商品を大量に産出する」場合、若しその後当該地理名称をその他の産地団体商標またはその他商標を登録するとき、直ぐ問題が発生する。例えば、知的財産法院2013年度民商訴字第32号金門高梁商標侵害事件。この事件は商標侵害紛争であって商標登録争議ではないが、この事件から地理名称を含めた一般商標は同一地理区域と関係する商標と衝突が発生する可能性をはっきりと見ることができる。
この事件は「金門KINMEN」、「金門」、第1139405号「金門高梁酒KINMEN KAOKIANG LIQUOR」(高梁酒KAOLIANG LIQUORは専用しない)、「金門酒廠(酒廠は専用しない)」等商標を所有する金門酒廠実業股份有限公司は金門皇家酒廠股份有限公司が「金門」と同一又は類似する商標を酒類商品及び酒類役務、商品の包装、看板、ウェブページ、広告若しくはその他類似する表徵とすることの使用禁止を主張している。
本案の争点は文字「金門」が登録できない状況であるかどうか。被告が係争する文字図案が関係消費者に混同誤認させる虞れがあるかないか。及び商標権の効力に拘束されるか否かをめぐっている。知的財産法院はこのように認めている。「係争商標と『金門酒廠』商標は共に『金門』二文字を使用しているが、しかし、わが国の酒類商品は歴史悠久の専売制度に基づいて発展してきたもので、欧米諸国酒類生産区域の特色がなく、伝統的に登録され、若しくは認定された「酒類地理標示」がなく、而して『金門高梁酒』は原告が1952年最初にその生産製造する高梁酒商品において使用され、長期的に専売され、広汎に販売使用されてきたもので、既に相当の識別力及び知名度を有し、商品の来源を単一的に指示する効能を有すると認めている。また、被告が『金門高梁酒』を登録する前、当該酒類の具有する特定の品質、名声又は地方特性を表す地理標示であることを挙証できなかったため、2003年商標法23条1項18号の登録できない事由がない」と認めた。
現在商標主務官庁は産地団体商標登録に対し、出願時に「産地名称+商標名称」以外、別に商標図様にその他識別力を有する図形または文字を増加し、産地団体商標の識別力を高めるよう建議している。例えば鹿谷凍頂烏龍茶に関し、鹿谷郷農会が所有する商標及び鹿谷郷公所の所有する証明標章は図案の構図の相違により、商標が非類似と認められたため、鹿谷郷農会の後願である商標の登録を許可された。また、例えば先願商標の「枋山特産超級甜Super Sweet及び図形」を、新鮮な果物等商品を指定している。後に、屏東県枋山郷農会は「枋山マンゴ及び図形」をもって枋山に産出するマンゴを指定している。両方の図案は共に産地「枋山」文字及びマンゴ図形を含めているが、しかし、なおその他の図形及び文字を含めているため、類似する程度が低いと認められ、故に後願である団体商標の登録を許可された。この二つの例について、客観的事実にもとづいて普通の知識経験を有する消費者がたとえ普通の注意を施して人に与えた全体的印象は確かに類似しない、若しくは前後二つの例の二つの商標は互いに類似しないと認めることもできる。但し、一般消費者は上記図形文字の表徴について果たして両商標の商品又は役務は同一の出所に属するか、又は同一ではないが関連がある来源に属するかを判断することは確かに容易なことではない。従って産地と関係ある商標の判断、とくに混同誤認の虞れ、ひいては著名団体商標の判断についていかに一般商標の基準を採用すべきかはさらに念入りな考量を有すべきかと思われます。 |