IPニュース | 商標


『PHILIP B』商標権不存在確認訴訟の
判決からみる並行輸入品問題

【事件概要】 

 原告の哿鑫国際株式会社(以下、原告という)は201617日に『PHILIP B』公式サイトで係争商標「PHILIP B」の図案及び「逆さ花束のデザイン図」の図案を有する真正品を仕入れた。その後、「菈点蔵Jeela's Boutique」ウェブサイト、台湾ヤフオク、PChomeストア、PChome24時間ショッピングなどのプラットフォームにおいて米国から輸入した当該ブランド商品を販売した。

  被告の紅創意有限会社(以下、被告という)は係争商標「PHILIP B」の図案の台湾の商標権者である。被告は、米国のPHILIP B社の同意を得た後、2013年と2014年に「PHILIP B」の図案について台湾で商標登録出願して商標権を取得した。被告は、その商標権を保護するために、上記の各ショッピングプラットフォームに対し、原告の販売する米国メーカーの真正品が被告の保有する台湾の商標権を侵害していると通告した。 

 それに対して、原告は2016年に権利侵害行為不存在確認訴訟を2回提起し、原告の行為は商標法第36条第2項の規定により保障されていると主張した。即ち、原告は「真正品の並行輸入の正当性」及び「商標権の国際消尽論」を強調し、被告には商標権を行使して商標権侵害行為を訴える権利がないと主張した。第一審と第二審の判決を経て、知的財産裁判所は105年度(2016年)民商上字第14号民事判決書において、当該事件の国内外の係争商標権者が同一人でないこと、また原告に対して権利を行使できない商標権者は米国のPHILIP B社であって、台湾の商標権者である被告ではないため、輸入商品を販売した原告の行為は商標法第36条第2項の規定により保障されるものではないと判断して、20168月の第一審、20172月の第二審のいずれも原告敗訴の判決を下した。当該事件は現在、最高裁判所に上告中である。 

【当該事件の争点及び知的財産裁判所の判断】 

 当該事件の主な争点は、真正品の並行輸入行為については、原則的に、商標法第36条第2項の前半部分で規定される商標権の国際消尽論が適用されるため、商標権者は真正品を並行輸入し販売する業者に対し再び権利を行使することができないのに、当該事件の係争商標の商品にそれが適用されないのは何故かという点である。  

 商標法第36条第2項の規定によると、商品が国内又は国外において最初に販売されまたは流通され、且つ商標権者が報酬を得た場合、当該商標権は最初の販売時に消尽したため、商標権者は最初に販売した商品に対し重複して商標権を行使することができない。 

 ただし、当該事件の係争商標権者は国内と国外でそれぞれ異なっており、そのうえ、台湾の商標権は属地主義を採用しているため、原告がたとえ米国のPHILIP B社の公式サイトから真正品を入手して台湾で販売したとしても、当該商品の台湾への輸入行為及び販売行為は台湾の商標権者(被告)の同意を得なければ、行うことができない。そのため、台湾の商標権者(被告)にとって、当該係争商標の商品に「権利の消尽(the principle of exhaustion)」または「ファースト・セール・ドクトリン(First Sales Doctrine)」の適用問題が存在していない、即ち原告の輸入及び販売行為は被告の保有する商標権を侵害することになるのである。

Top  
 
 
  11th F1., 148 Songjiang Rd., Taipei, Taiwan | Tel : 886-2-2571-0150 | Fax : 886-2-2562-9103 | Email : info@tsailee.com.tw
© 2011 TSAI, LEE & CHEN CO LTD All Rights Reserved
   Web Design by Deep-White
Best viewed with IE8.0 or higher with 1024*768 resolution