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中国 二重商標権侵害に対する判決

 

【出典:中国知識産権報】

 中国杭州の「西湖龍井」は地理的表示であるとともに、既に第30類の茶葉商品の証明商標として登録されている。商標権者の許諾を得ずに、無断で「西湖龍井」の地理的表示及び証明商標の図を含む包装を使用して茶葉を販売した場合、いわゆる「二重」商標権侵害に該当することになる。つまり、一つの行為で地理的表示と商標権を同時に侵害したことになる。

判決番号:(2015知法商民終字第2

《裁判要旨》

 商品流通市場において、販売者が商標登録人の許諾を得ずに、無断で地理的表示及び商標図を用いて商品を包装し且つ販売した場合、その行為の性質は「二重商標権侵害」であると認めるべきである。つまり、権利侵害製品を製造すること及び販売するという二つの権利侵害の累積であり、販売者の賠償責任免除の抗弁は適用されない。

《事実の概要》

原告:杭州市西湖区龍井茶産業協会(以下、「龍井茶協会」)

被告:広州市種茶人貿易有限会社(以下、「種茶人社」)

証明商標:登録番号第9129815号「西湖龍井」、指定商品・役務区分の第30類茶葉

事実:被告は原告の許諾を得ず、販売する茶葉商品の包装に無断で「西湖龍井」の文言の標章を印刷して使用した。原告はこれが商標権の侵害に当たるとして、法院に販売の即時差し止めと損害賠償及び訴訟費用の支払いを求めた。

法院の一審判決:

1.当該製品は証明商標を侵害している:被告は権利侵害疑義製品の出所が9129815号商標の使用管理規則において指定された地域範囲であることを立証できないため、権利侵害疑義製品は原告の商標専用権を侵害する商品である。

2.販売行為は証明商標を侵害している:被告は、当該茶葉の出所が合法であることを立証できないため、即時権利侵害を停止し、損失について賠償すべきである。

3.法院判決:被告は原告の第9129815号「西湖龍井」登録商標権を侵害する茶葉の販売を即時停止するとともに、原告の経済損失に対し人民元(以下、同じ)4万元の賠償金を支払わなければならない。

  被告は一審判決を不服とし、広州知的財産法院に控訴した。二審判決は次のとおり。

1.被告の行為の性質:被告は原告の許可を得ず、「西湖龍井」の標章を無断で茶葉包装に使用した。この行為は商標法上、権利侵害製品を製造する行為に該当する。つまり、被告の権利侵害行為の様態は権利侵害製品の「製造」と「販売」の二つの権利侵害が累積したものである。

2.被告は製造し販売した権利侵害疑義製品の包装上に、原告の「西湖龍井」の地理的表示/証明商標に類似した商標を使用して、原告の商標専用権を侵害した。

3.被告は、販売する権利侵害疑義製品の茶葉が西湖龍井茶生産地域由来であると主張したが、茶葉の産地が事実であったとしても、権利者の許可を得ずに無断で「西湖龍井」と同一又は類似の証明商標を使用する権利はなく、原告に対し、依然として該証明商標の使用を申請し、管理規則に規定された手続きを履行する必要がある。これらを行わない場合、登録商標の専用権侵害に該当する。

4.二審の法院は控訴を棄却し、原判決を維持する判決を下した。

【裁判官の分析】

 本件は、地理的表示/商標専用権の侵害紛争である。争点は、「権利侵害疑義製品の茶葉の産地出所が本件の権利侵害認定に影響を与えるか否か」、「販売者が茶葉を包装した後販売したことは、どのような性質の行為であるか」である。

一、地理的表示/証明商標の法律制度の特徴

1.地理的表示:ある商品がある地域由来であることを示し、該商品の特定の品質、信用又はその他の特徴が、主に当該地域の自然的要素又は人文的要素によって決められることを表す表示をいう。(商標法第16条)

2.証明商標:ある商品又は役務が監督能力のある組織によって管理され、該組織以外の団体又は個人がその商品又は役務において使用し、該商品又は役務の原産地、原料、製造方法、品質又はその他特定の品質を証明するのに用いる表示をいう。(商標法第3条第3項)

3.地理的表示、証明商標は権利の形成、商標の使用など段階において普通の商標とは異なる特殊性を有する。このため、事件審理においても普通の商標とは異なる特徴を表す。

 (1)地理的表示は法律に規定された形式を満たさなければ登録されない。地理的表示が表示される商品の特定の品質、信用又はその他特徴は、当該地理的表示に示される地域の自然要素及び人文的要素と一定の関連性が存在していなければならない。

 (2)証明商標は権利行使において特殊な規則を有する:証明商標登録人は、自ら提供する商品に当該証明商標を使用してはならず、当該商標の使用を管理監督する責任を負う。証明商標登録人は他人が該商標を使用することに同意するか否かに対し自由決定権がなく、条件を満たせば、証明商標権者は、他人の使用に同意する義務を有する。逆に、条件を満たさない場合、証明商標権人は、他人の証明商標使用に同意する自由はない。

 (3)使用の分類上、地理的表示/証明商標の使用同意は排他性、独占性が存在しない。このほか、地理的表示/証明商標の使用者は、証明商標の使用及び管理規則の規定の特定条件を満たし、且つ、証明商標の登録人に申請をして、証明商標管理制度で規定された手続を履行しなければならない。

4.本件は、地理的表示/証明商標の使用によって生じた紛争であり、事件に係る行為をどう正確に位置づけするかが鍵となる。二審の法院は、「被告が主張する茶葉の産地が事実であったとしても、商標登録人の同意なく無断で「西湖龍井」と同一又は類似する証明商標を使用する権利はなく、依然として原告に対し該証明商標の使用を申請し、管理規則において規定された手続きを履行する必要があり、これらを行わない場合、登録商標の専用権侵害に該当する。事件に係る茶葉が「西湖龍井」商標の使用管理規則に指定された地域範囲を由来とするか否かについては、単に事実問題に過ぎず、該事実が真実、虚偽のいずれであっても本事件の商標権侵害の認定に影響を与えるものではない。」とした。

二、本事件の販売者が商標権を「二重」に侵害したとする法的分析

 二審の法院は、被告が同意を得ずに無断で「西湖龍井」の標章を茶葉包装に使用し販売した行為性質を深く分析し、該行為には権利侵害製品の「製造」と「販売」の二種類の様態が含まれ、販売者による「二重」商標権侵害に該当し、「重い方を選択して処罰する」べき、つまり、製造者による権利侵害(販売者による権利侵害ではない)の責任規範も適用すべきとした。

 ブランド商標を含む包装及び茶葉は、切り離された状況下においては、権利侵害に該当しないが、販売者がそれらを組み合わせたとき、権利侵害商品に該当する。そのため、ポイントは行為者の「包装」行為であり、その包装の行為により、初めて権利侵害製品が造り出され市場で販売されることになるのである(そのため、製造者による権利侵害をもって論じなければならない)。行為者が商標登録者の同意を得ずに前述の行為を行ったことが故意か、過失かに関わらず、普通の消費者に混同誤認を十分に生じさせる虞があり、商標登録者と消費者の正当な利益を損害するものである。判断する上で、本件は、事件に係る行為の「製造」様態が見落とされやすいが、これが最初のポイントである。

 次に、他人の登録商標の標章を不法に印刷し販売した包装箱/包装袋は、権利侵害の大元であり、「商標法」及び「商標印刷作製管理弁法」はいずれもこれに対し明確な管理規範を有しており、他人の登録商標の標章を偽造し、無断で製造し、又は偽造し、無断で製造した他人の登録商標の標章を販売することは、いずれも他人の商標専用権を侵害する行為に該当する。司法機関は、工商管理部門に供給元からこの種の行為を抑止することを建議し、これに対する積極的な回答を得た。

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