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アップルが中国での「iPad」商標権訴訟で敗訴
 
2011年12月5日、深圳市の中級人民法院は一審で、唯冠科技(深圳)がiPad商標権を侵害したとするアップルの訴えを棄却する判決を下した。その結果、アップルは中国でiPad商標を使用することができなくなった。
 
唯冠科技グループは1989年に台湾で設立し、1997年に唯冠国際名義で香港で上場し、中国、香港、台湾、アメリカ、イギリスなど7地区に子会社を設立した。唯冠科技(深圳)は唯冠国際が全出資した子会社である。唯冠は主に、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、液晶テレビや関連部品の研究開発と生産に従事している。2000年に唯冠科技(台北)は欧州連合(EU)、韓国、メキシコ、シンガポールなど8カ国でiPad商標の登録出願をし、次々に登録許可を得た。2001年に唯冠科技(深圳)は、中国でiPad商標の登録出願をし、同年に登録許可を得、自社が研究開発した液晶ディスプレイなどの電子製品上に指定使用した。当時アップルはまだタブレット端末iPadを発表していないかった。
 
アップルが2006年にiPad発表を計画したとき、初めてiPadの商標権が唯冠科技グループの所有であることが分かった。アップルは商標権所有の確認を求める訴訟を起こしたが、イギリスで敗訴し、唯冠にiPad商標権があることが確定された。アップルは中国で商標が連続して3年使用されていないことを理由として、唯冠のiPad商標を取消すよう求めたが、この案件は現在まだ審理中である。2009年、アップルと唯冠の間で、唯冠科技(台湾)が各国のiPad商標を3.5万イギリスポンドでアップルに売却するとの協議が成立した。
 
しかし、唯冠科技(深圳)は「iPadの中国での商標権は3.5万イギリスポンドの譲渡協議の中には含まれていない。従って、中国でのiPadの商標は依然として唯冠科技(深圳)が所有しており、唯冠科技(台北)には中国のiPad商標を売却する権限はなく、アップルは中国市場で合法的にiPad商標権を所有したことはない。」と表明した。
 
アップルは唯冠科技(深圳)の上述の内容に納得できず、2010年4月から、中国で唯冠科技(深圳)に対しiPad商標権の訴訟を起こした。原告のアップル(米国)及びIPアプリケーションデベロップメント社(IP Application Development Limited:英国)は、被告の唯冠科技(深圳)がiPad商標権を侵害したとし、深圳市中級人民法院に「iPad」商標権はアップルの所有であるという判決を下すことを要求し、且つ、唯冠科技(深圳)に対し調査費用、弁護士費用及び関連損失として計400万人民元の賠償を請求した。
 
深圳市中級人民法院は2010年4月19日に受理し、2011年2月23日、8月21日、10月18日の3回に渡り法廷で審理を行った。最終的に法院は「アップルがもし他人の商標の取得を望むなら、中国の法律に従い、商標権利人(唯冠科技(深圳))と譲渡契約を結んで、登録手続きを行うべきである。本案件商標はアップルと唯冠科技(台北)の間で譲渡契約が結ばれてはいるが、唯冠科技(深圳)を拘束する権限はない。従って、アップルの訴訟請求はは事実と法律の根拠に乏しく、棄却の判決を下す。アップルは依然として上訴できる。」とした。
アップル側は「唯冠科技(台北)とiPad商標譲渡の協議を行ったが、これは「グループとしての取引」に属するものである」と主張した。しかし、法院は「唯冠科技(台北)と唯冠科技(深圳)はそれぞれ異なった独立法人であり、アップルが譲渡を締結したのは唯冠科技(台北)であるため、唯冠科技(深圳)に対しては拘束力がないと判断した。」と認定した。
 
次に、アップルは、唯冠科技(台北)がiPad商標の譲渡契約を締結したことは、「表見代理」が成立すると主張した。しかし、唯冠科技(深圳)は、だれにもiPad商標の譲渡について授権したことはないと反論した。深圳の中級人民法院第一審の審理では「表見代理は契約の相手がいない又は当事者が不明確で、一方の当事者が代理人には標的物を処分する権利があると信じ、該代理人と契約を締結するものである。本件の譲渡契約は唯冠科技(深圳)とアップルで締結されたものではなく、契約には明確な相手がいる。また唯冠科技(深圳)は、唯冠科技(台北)とアップルの交渉又は譲渡契約の締結に如何なる委託も授権も行っておらず、アップルが締結したことは、アップルの過失であり、表見代理が成立する余地はない。アップルが他人の商標の取得を望むなら、より注意を払うべきであり、中国の法律の規定に基づき、商標譲渡契約締結及び商標譲渡登録手続きを行うべきである。しかし実際の状況はそうではない。故にアップルの訴えを棄却するものである。」と判決が下された。
 
司法の判決のほかに、行政の法執行の面において、唯冠科技(深圳)の述べるところによると、「唯冠科技(深圳)は2011年1月になって初めて北京市交渉局に、アップルがiPad商標を使用し商標権侵害をしたと告発したので、現時点で工商局はまだ最終的な処罰を決定していない。」とのことである。
 
アップルが一審で敗訴した後、唯冠科技(深圳)は現在すでに広東地区においてアップルが授権する販売店に対し訴訟を起こし、アップル販売店に商標権侵害を止めるよう求めている。法院はすでに受理し、近日中に開廷される。
 
アップルは、新たな場所に戦場を移すことを選び、2010年5月20日香港法院に、当該商標譲渡契約に違約紛争が発生したとして、唯冠国際、唯冠科技(台北)、唯冠科技(深圳)に対し、民事訴訟を起こした。この案件の審理結果はまだ出ていない。
 

 

 

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