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知的財産裁判所 台湾業者が台湾で登録の「農夫山泉」商標に敗訴の判決

 

中国の有名な飲用水ブランドの一つ「農夫山泉」の文字商標が、2003年に台湾で登録出願しようとした際に、その商標が2002年に既に台湾業者により台湾で先取り登録されていたことが分かった。中国の農夫山泉会社は該台湾業者が商標権を侵害したとして、知的財産局に異議を申立て、知的財産局は「農夫山泉」は中国において有名商標であることから、台湾業者の商標登録取消の裁定を下した。台湾業者は行政訴訟を提起し、台北高等行政裁判所で2005年、異議申立て不成立の判決が下され、台湾業者が商標権を維持することになった。次いで、中国の農夫山泉会社は不服として、再度台湾知的財産裁判所に行政訴訟を提起し、一審判決で、台湾の「農夫山泉」商標取消判決となった。台湾業者は不服の場合、この案件を上訴できる。

   台湾業者は2005515日に「農夫山泉」文字商標で、当時商標法施行施行細則第49条が定める商品及びサービス分類表第32類の、サイダー、炭酸水、炭酸飲料、ソーダ水、鉱泉水、山泉水、運動飲料、アルカリイオン水、沙士、野菜ジュース、ミルクティー、包装飲料水、純水、カップ包装水、フレーバー水、活性水、水(飲料)、アイソトニック飲料、鉱泉水用調整品、飲料用調製品などの商品に指定使用し、尚且つ図形にある「山泉」は専用の範囲に属しない声明をし、知的財産局に登録出願して、審査により第01045230号商標として登録が許可された。

中国の業者が台湾で商標登録をしようとした時、上述の事実が発覚したため、2003514日に「農夫山泉」文字商標(以下「係争商標」)は当時の商標法第37条第714号の規定に違反するとして、異議申立てをした。該案の審査の期間、商標法は20031128日に改正法が施行され、同法第90条の規定により「本法改正施行前に既に出された異議申し立てで、まだ異議裁定がでていない案件は、本改正法施行前及び本改正法施行後の規定の何れにも違法事由がある場合に限り、その登録を取消す。その手続きは改正後の規定により行う。」とされた。なお、該案件の先願異議主張の条項は改正後、商標法第23条第1項第1214号となっている。

知的財産局は審査を経て、係争の商標は改正前の商標法第37条第14号及び現行商標第23条第1項第14号に違反しているとし、2004726日付中台異字第920578号商標異議審定書で「係争第1045230号『農夫山泉』商標の登録は取消すべきである。」との処分を下した。台湾業者はこれを不服として、訴願を提起したが、経済部で2005113日付経訴字第09406120240号訴願決定により訴願が却下された後、次いで行政訴訟を提起し、台北高等行政裁判所は2006216日、94年度訴字第789号で訴願決定及び原処分を何れも取消す判決を下した。その後、まもなく台湾業者は係争商標を個人名義から台湾農夫山泉株式会社に移転し、また知的財産局は200652日に移転登記を許可した。

その後、知的財産局は前記台北高等裁判所判決より審査をやり直し、20101129日付中台異字第960489号商標異議審定書で「異議不成立」の処分を下した。中国の業者は不服として、訴願を提起したが、経済部の2011323日付経訴字第10006097600号で訴願が却下された。それに対し中国の業者は依然不服として、知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。

知的財産裁判所は審理を行った結果、次のように認定した:係争商標は改正施行前の商標法第37条第7号及び現行商標法第23条第1項第12号の規定に違反しておらず、理由は以下の通り。

1.二つの商標は近似を構成する商標であり、且つその近似度が高い

係争商標「農夫山泉」と異議申立て商標「夫山泉」はいずれも単純な中国語文字より構成されており、その違いは最初の文字「農」が繁体字であるか簡体字であるかの違いだけである。観念上、読み方が何れも同じであり、普通の知識経験を持つ消費者が買い物をする時に、普通に注意して、時間と場所を異にして隔離的観察をし、続けて称呼した場合に、二つの出所が同一又は同一ではないが関連があると混同誤認させる虞があり、近似を構成する商標に当たり、且つその近似性も高い。

2.二つの商標が同一又は類似の商品に使用指定

係争商標が使用指定している鉱泉水、包装飲料水、カップ包装水などの商品は、異議申立て商標が使用する鉱泉水、瓶詰め飲料水等と比べると、同一又は類似の商品である。

3.商標の先天的識別性が高い

異議申立て人が証拠として提出した商標(以下「証拠商標」)「夫山泉」は既存の文字の組み合わせからなる文字商標であり、且つ、直接的に明らかに使用指定する商品と関連の情報を表示している。本案件の台湾業者及び中国業者以外に、これを商標としていたり、又は登録使用を出願している企業はなく、従って、異議申立て商標の先天性識別性は低くない。

4.証拠商標は非著名商標

係争商標が2002515日に登録出願した時、中国の業者が提出したアメリカ国家検査測定実験室の検査測定報告、栄誉証明書、評価証明書、商品品質検査免除証明書などの資料は、ただ、中国の業者の会社運営規模、商品販売、税金の納付完了および広告費支出の状況を反映しているだけである。また、中国及び日本、オーストラリアの登録資料は証拠商標が著名であるかどうか参酌する要素の一つであると認めるが、実際の使用又は広告資料にあわせて初めて関連事業者又は消費者の証拠商標に対する認知度に反映することができる。

中国の業者が異議申立ての段階で提出した証拠(浙江省市場流通作業チームが交付した証明書、浙江省の著名商標証明書、2002年度監視測定報告、中華全国情報商業センターの証明及び証明書、1998年四川人気ブランド証明書、1998年浙江省食品飲料展覧会栄誉証明書、2000年~2002年のACネルソン販売量統一表、19992001年度の瓶詰め飲用水市場分析などを含む)は、証拠商標の中国又は特定の省、市における市場占有率、知名度又は販売状況を証明することはできるが、上記の証拠資料は何れも中国での使用に限られた資料でしかなく、両岸三地(台湾、中国、香港マカオ)は経済貿易の往来が密接ではあるものの、証拠商標が表彰する鉱泉水、瓶詰め飲用水などの商品は一般生活に必要な飲料商品であり、単価が低く、代替性も高く、市場は常に新商品が現れ、同業者の競争は熾烈を極める特性を持つに加えて、証拠商標の商品は台湾地区で宣伝、販売又は公告されたことがない。従って、台湾国内の消費者にとって証拠商標が広く知られているとは言えない。現在ある証拠に基づくと、係争商標が台湾で登録出願した時に、証拠商標が、中国において台湾にまで及ぶ知名度を確立し、また、台湾国内の関連事業者又は消費者に著名と言える程度まで知られていたという客観的な証拠に乏しい。

中国の業者が訴願段階で提出した上記の証拠もまた、証拠商標の知名度が、係争商標が登録出願したときに、既に台湾の関連事業者又は消費者に著名といえる程度まで知られていたと証明することは出来ない。

関連消費者の二つの商標に対する認知度の分析で、証拠商標が既に台湾の関連事業者又は消費者に著名商標であると認識されているとするのが難しいのは上述の通りである。一方、台湾の業者は係争商標を登録する前に、既に中国時報、自由時報、台湾日報などの各紙又は雑誌に公告を掲載し、また「創業搶鮮誌」の「新新加盟ブランド紹介」という特別企画で紹介されており、中国の業者が証拠商品の台湾地区における宣伝、販売及び公告の関連資料を提出していないこと等を斟酌して、知的財産裁判所は、この二つの商標のうち、係争商標が台湾消費者に比較的よく知られていると認める。

総合的に上記の各項要素で判断し、知的財産裁判所は、係争商標は改正前の商標法第37条第7号及び現行の商標法第23条第1項第12号の規定を適用しないと認定している。

最終的に、中国の業者は「海峡両岸知的財産権保護協力協定」により、台湾は著名(馳名)商標の適切な保護処理を行い、悪意の先取り登録行為等を共同で防止するべきだと主張した。しかし該協定では、商標登録取消に関する行政訴訟において、同一の取消理由で提出した新証拠は知的財産案件審理法第33条第1項の規定により依然として斟酌されなければならないとしている。ただ、上記の協力協定が2010912に発効したこと、また中国の業者の主張する証拠商標が2003年に中国地区で著名商標の認定を受けた事実は、何れも係争商標が登録出願した後である。従って上記協力協定によって、本裁判所が、係争商標が改正前の商標法第37条第7号及び現行商標法第23条第1項第12号の規定を適用しないとの認定に影響することはなく、中国の業者のこの部分の主張は理由にならない。

改正前の商標法第37条第14号及び現行の商標法第23条第1項第14号の本文の規定は、他人が創作、使用する商標を盗用し先取り登録することを避けるものである。証拠商標は1996年に既に中国地区で登録しており、本件係争商標と証拠商標は極めて近似性が高いことは、既に上述した通りである。台湾業者は199676日から2003115日までの計6年余りの期間、中国に24回頻繁に往来し、その停留時間は少ない場合で数日、多い場合には40日も達することから、台湾業者が地縁の関係から証拠商標の存在を良く知っていたと認定せざるを得ない。中国の業者と台湾の業者が何れも飲用水関連事業に従事し、同業の競争関係にあることを考えれば、双方に業務往来は無いが、改正施行前の商標法第37条第14号及び現行商標法第23条第1項第14号の規定を構成していると思われ、その商標登録を取消すべきである。

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