インターネット犯罪の管轄権に関する問題は、最近、台湾高等裁判所が、2007年度の上易字第361号の判決で、インターネットは伝統的犯罪地の認定と異なることを認め、インターネットが、道路、言語、有線‧無線放送等人類の過去各種発展のシステムと異なり、コンピュータの国境を越えて快速で繋がるネットシステムにより、各地の人々または機関間の連絡距離を縮めながら、人類の活動領域を拡大し、新規のバーチャル空間を生み出した。よって、ネット犯罪の管轄権の問題は争議を生み、また、伝統的犯罪の概念で認定することは不可能である、とした。
ネット犯罪の管轄権の認定は、学説上説、広義説、狭義説、折衷説およびネット管轄裁判所を専門に設置する説の四つがある。
一、広義説:単に、ネット上にホームページを設置して、情報または広告を提供し、どこからでもコンピュータでこのホームページにアクセスするだけで、該裁判所が管轄権を取得することができるとする。こうする事は、世界のどこでも犯罪地になり、各国の司法審判権の問題にかかる上に、当事者と裁判所のどちらにも不便である。
二、狭義説:行為者の住居、またはサイトのサイバーの設置位置等、伝統的な管轄を強調するが、これは柔軟性に欠ける上、実際の需要に適合しない。
三、ネット管轄の裁判所を専門に設置する説:目下のところ、世界各国でネット犯罪専属の管轄裁判所を設置しているのは、実際には少数で、台湾は今のところまだ設置していない。ゆえに、この説を採用しても実利的でない。
これにより、現在のところ、各国のネット犯罪における管轄権の通例は、折衷的な見解を多く採用している。一方で、現行の刑事訴訟法管轄権の伝統的な認定を尊重することで、当事者および裁判所を煩わせないし、又一方で、その他の具体的な事件を斟酌することもでき、例えば、サイト、電子メールを設けたサーバーの所在地と、資料を伝送するサーバー放置地及びその他実際の交易地などに関する事情など、総合的に認定する。
係争案件の原審は、被告の住所、住居、および所在地まで全て嘉義であり、犯罪の場所、および使用した銀行口座も嘉義だが、ネットのサイトのサーバーがアメリカにあることから、台北地方裁判所は、審判権がなく、管轄違いとの判決を下した。台湾高等裁判所は、「被告が中華電信、和信社のネットワーク設備で外部と繋がり、またその提供したバーチャルハードディスク、関連ファイル及びサービスも中華電信と和信社のネットワーク設備を介したもので、且つこの二社のネットワーク設備の設置場所は、どちらも台北市であり、台北地方裁判所が管轄権を有するはずである。そして、今後の案件審理、資料調査及び証人召喚などにおいては、台北地方裁判所は、比較的便利である台北地方裁判所が管轄権を有すると認定したほうがよい。台北地方裁判所が管轄違いとして、嘉義地方裁判所へ移送すると判決する事は、理にかなわない。」とした。