ドイツ企業、アディダスと台湾の旅東貿易会社、將門(jump)は、商標に関し長年訴訟争いを続けていたが、台湾最高行政裁判所は、先日ついに該案の原審を覆し、「原審(台北高等行政裁判所)は、アディダスが提出した普及促進の証拠を調査せずに、該商標が將門の商標と、市場に長年併存しているかどうかを判断するのは、明らかに違法であり、原審の調査やり直し、アディダスの勝訴を見直すよう要求する。」と認めた。また、原審の台北高等行政裁判所は、4月24日に即刻、知的財産局がアディダスの商標を取消した処分が違法ではないとの判決を下し、こちらもアディダスの敗訴とした。
本案の争点は主に、アディダス(adidas)の商標と將門のJump商標は、消費者に混同誤認の虞を生むかどうか、併存しているかどうか、である。
商標法第23条第一項第13号に「他人が同一または類似する商品または役務について登録商標または先出願商標に同一または類似し、関係消費者に混同誤認させるおそれがあるものは、登録できない。」と規定している。上記の規定に違反して商標を登録した場合は、同法第50条第1項規定により、利害関係人または審査官は、商標専門責務機関に、その登録の評定をするよう申請又は提起することができる。評決を経て案件の評定が成されたものは、同法第54条の規定により、その登録を取消さなければならない。
次いで、同法第30条第1項の規定には、通常、善意の、且つ合理的な使用方法で、他人の商標登録申請日前に、同一または類似する商品または役務において、相同または近似する商標を使用するものは、他人の商標権の効力による拘束を受けない。言い換えれば、善意で、合理的な先の使用を主張することができ、後に登録した商標と併存することができる。
本案を分析すると、台湾最高行政裁判所は、「商標の近似や産品の類似が、二つの商標に混同誤認の虞があることにはならず、企業がその商標の善意かつ広域な普及に努めているかどうか、また、消費者の商標に対する熟知の程度もまた、考慮する必要がある。」即ち、「商標が善意で長期にわたり普及されており、且つ、知名度を証明できれば、近似していても登録可能である。」と認めた。判決理由から再度見直すと、当時、台湾最高行政裁判所は、「該二つの商標は確かに近似を構成しているが、商標法第23条第1項第13号を引用しておらず、台北高等行政裁判所が、長年併存しているという証拠を調査しなかったことを理由として、差し戻し判決で、改めてアディダスの勝訴としていた。
台北高等行政裁判所は、一審判決で、アディダスと將門の商標が近似しており、且つ、消費者に混同誤認させる虞がある、と認めた。また、第一回の差し戻し審判の結果も、依然として、先の審判廷の見解を維持し、併存の問題はないと認定した。主な理由として、「アディダスは、既に創立60年で世界的地名度を有する企業であるが、早期の商標は三本の直線で、横線でも斜め線でも、全て等しい長さの平行線であった。(現在使用の商標のデザインとは異なる。)また、三つ葉になったり、adidasの文字と組み合わせて再派生した商標もある。アディダスは、他の商標は台湾で登録しているが、早期の頃は、三本線の商標のみ登録していて、その登録日(1998年3月)は將門(1986年7月)より遅い。その上、アディダスは、当初將門の商標に異議を提出したことから、当初から將門の商標が既に台湾国内市場に出回っていたことを承知していたのは明らかであり、アディダスは、当時、該商標の台湾での使用を、重要視していなかっただけなので、第30条の併存の要件に当てはまらない。よって知的財産局が、アディダスの商標登録を取消すのは、違法ではない。」ことを挙げている。
台北高等行政裁判所は、「すでに第1回の差し戻し審判決で、アディダスの商標は、將門の出願時に、善意で且つ合理的に先に使用をしていた事実は存在しないことを詳細に説明し、商標法第30条を適用できない」と認定した。将来、アディダスは、その他の新しい主張を持って上訴するかどうか、観察するに値する。