台灣青啤(台湾青島ビール)株式会社は(以下台灣青啤とする)台湾の三洋維士比グループに属し、又、中国の青島啤酒の台湾における代理商でもある。数年前、膨大な資金を投資し、屏東に民営企業一の年生産量十万トンを誇る大型観光ビール工場を建設した。「台青」とは「台灣青啤」を省略した呼び名で、「台灣青啤」は「台灣青島啤酒(台湾青島ビール)」に由来する。2004年に「台青」を商標として智財局に登録出願したところ、知財局は、審査の結果「台青」は、既に登録済みの「台灣啤酒 TAIWAN BEER」の商標に近似し,消費者が混同誤認する虞があるとし、却下された。台灣青啤側は、これを不服とし上訴、台北高等行政裁判所は、先日、台青の勝訴とし、知財局は商標と登録を許可するべきであるという判決を下した。
裁判では、「台青」の商標デザインは、単に「台青」の二字を楷書したものであるのに対し、「台灣啤酒 TAIWAN BEER」は中国語、英語を並べて、直線と波線の組み合わせで構成されており、一見して両者間の区別がつく。しかし、訴願機関は、「台青」の台湾語の発音が「台灣生ビール」の意味をもち「台灣啤酒」との近似である、とした知財局の原処分を認め、台灣青啤の訴願を却下した。これを受け、台灣青啤は裁判所に行政訴訟を提起した。
台北高等行政裁判所2006年度訴訟第3437号判決によると、商標の審査における主要要素は、「外観、概念、読音」であり、その主な字や図案における識別性が比較的弱い場合、全体の感覚より判断する。又、「台灣啤酒」は、単に地名に飲料の種類を加えただけであり、商標識別性がない、と裁判官は認めた。裁判官は、両商標は構図も配色も全て「趣旨を大きく異にする」ため,何時も、どこでも距離をおいて観察しても、まったく誤認しがたい、とした。発音の問題については、「青」という字が台湾語の発音が生、新鮮」の意味をなすが、直接「生ビール」と解釈するのは、やはり無理がある上に、「生啤酒」は台灣菸酒株式会社だけが製造しているわけではない。又、消費者は、「台灣啤酒」をすでに認知しており,台灣菸酒が登録した「台酒」または「台啤」等の類似商標を連想したり、観念を結びつけることがあっても、「台青」と混同誤認するには至らない。以上によって裁判官は、知的財産局の敗訴とした。