「スタートアップ企業向け積極型特許審査試行作業方案」と
「産業協力特許審査面接試行作業方案」の紹介
台湾知的財産局(TIPO)が2022年4月に発表した統計資料によると、2021年の特許の初審時の最初の審査通知までの平均期間は8.7ヶ月であった。もし出願人がより短期間で特許権を取得したい場合、例えば、PPH(特許審査ハイウェイ)、米国の「Accelerated Examination」や「Prioritized Examination (Track One)」、日本の「早期審査」や「スーパー早期審査」など、各国の特許庁が提供する各種早期審査制度を利用することができる。TIPOは、各国との間で実施しているPPHとAEP(Accelerated Examination Program)に加えて、2021年から2022年の年末まで「スタートアップ企業向け積極型特許審査試行作業方案」と「産業協力面接特許審査試行作業方案」を試行した。この2つの試行作業方案は、一部を改正して2023年も継続される。以下に簡単に紹介し、最後に2つの試行制度の比較を表にまとめた。
「スタートアップ企業向け積極型特許審査試行作業方案」は、研究開発力のあるスタートアップ企業の特許出願を促進し、そして、特許取得の可能性の早期確認と特許権の取得を支援することを目的とするものである。スタートアップ企業の定義は、台湾の公司法または外国の法律に基づき登記されて8年未満(改正前:5年)の企業である。具体的な実施内容は、①TIPOは、出願人の申請を受領してから1ヶ月以内に検索報告書と審査意見の概要といった面接用資料を提供する、②出願人は、上記の面接用資料を受領してから1ヶ月以内に、TIPOと積極型面接(審査官から拒絶理由が告知されるほか、補正のための肯定的なアドバイスも積極的に提供される)を行う、③出願人は、積極型面接後1ヶ月以内に意見書または補正書を提出する、④TIPOは、意見書または補正書を受領した後、1ヶ月以内に特許査定書または審査意見通知書を発行することである。つまり、TIPOによる面接前の情報提供と面接でのアドバイスの提供により、出願人はより短期間で拒絶理由を克服し、原則として4ヶ月以内に審査結果を受け取ることができる(実務的に約3ヶ月)。
「産業協力特許審査面接試行作業方案」は、スタートアップ企業に限らず、出願内容に係る技術者が面接に参加することにより、審査官が先端科学技術に係る特許出願の技術内容を迅速に把握し、審査の効率化及び品質の向上を図るとともに、出願人の早期権利取得のニーズに応えることを目的とするものである。先端科学技術とは、例えば、マイクロLEDディスプレイ、3nm半導体製造プロセス、人工知能、ブロックチェーン、5Gなどが含まれるが、これらに限定されない。この方案の適用は、審査官が主動的に出願人の意向を尋ねるほか、出願人が本方案の適用を希望する旨の意思表示を行うことも可能だが、最終的には審査官が職権で適用の可否を判断し、出願人に面接を通知することになるので、面接に関しての政府料金が不要になる。そして、面接の範囲は技術的内容の説明が中心になるので、後知恵の可能性を排除するため、審査官は面接前に文献検索や審査などを行わない。また、出願の技術的な範囲が広すぎて、面接の時間内に十分な説明ができなくなることを避けるため、出願案件は原則として10件までとする。今回の改正では、面接に参加できない外国出願人のために遠隔テレビ面接の要点も明記された。
上記2つの方案はまだ試行段階なので、関連する規定の多くは原則的なものに過ぎないが、いずれも面接による審査の迅速化の効果を狙うものである。そして、2つの方案の目的、手続、効果は異なるものであり、既存のPPHとAEPを組み合わせて、出願人はニーズに応じて適切な方案を選択することができる。
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スタートアップ企業向け
積極型特許審査試行作業方案
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産業協力特許審査面接
試行作業方案
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試行期間
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2023年12月31日まで
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2024年12月31日まで
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出願人適格
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設立日から出願日まで
8年未満の事業者
(改正前:5年)
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制限なし
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技術分野
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制限なし
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審査官が個別に判断する
先端科学技術
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まとめ審査
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出願案件ごとに申請
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原則として10件以下
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面接前の審査意見の提供
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面接用資料
(検索報告書、審査意見の概要)
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なし
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面接の範囲
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面接用資料を中心に意見交換
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出願案件の技術的内容の說明
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審査期間
(最初のOAの発行まで)
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原則として4ヶ月以内
実務的に約3ヶ月
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規定なし
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面接参加者
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無限制
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出願内容に係る技術者が
参加する必要がある
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政府料金
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不要
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不要
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