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2021年台湾企業の知的財産管理に関する実態調査及び発展動向

2020年から、台湾証券取引所が主導するコーポレートガバナンス監査には、監査項目の1つとして知的財産管理が正式に盛り込まれている。台湾企業の知的財産管理体制の整備を推進する為、評価基準に「会社は経営目標と連動した知的財産管理を計画し、会社のホームページ又は年次報告書で実行状況を開示して、少なくとも年に一度は取締役会に報告しているか?」との指標が追加されている。もし企業が台湾知的財産管理システム(Taiwan Intellectual Property Management System, TIPS)又は類似システムを導入して認証されていれば、ポイントが加算される[1]

コーポレートガバナンス監査指標の改定と同時に、長年にわたり知的財産産業を促進してきた財団法人資訊工業策進会(Institute for Information Industry)科技法律研究所知的財産センターは、台湾知的財産産業の健全な発展の重要な参考になるよう、2013年から作成する「台湾国内企業の知的財産管理に関する実態調査報告書」を一般に公開した。この報告書は2年に一度の頻度で台湾の株式公開企業を調査したもので、先日、最新の2021年調査報告書[2]が公開された。

この研究報告は、台湾の株式公開企業(上場企業:954社、店頭公開企業:790[3])の中の320社に対しアンケート形式で調査した結果を基に作成されたものである。すべての業界を対象としており、社内の管理職又は知的財産管理専門部署のベテランがアンケートに回答した。具体的な質問項目は、企業の知的財産戦略、社内配置/予算の管理、知的財産出願の現状と経験、そして今後の発展ニーズと困難点の合計4つの角度から構成され、それぞれ調査して分析が行われた。以下の内容は報告書の要点をまとめたものである。

 

(図1) アンケートの質問項目の構成

1.    企業の知的財産戦略

台湾の経済は輸出指向型である。報告書によると、海外進出している企業は68%を占め、その業務のうち海外販売が77%と最も高い割合を占めている。一方、企業が認知している知的財産リスクは競合他社に侵害されることに集中しており、過去知的財産に関する紛争が発生した企業は50%を占める。その為、9割以上の企業は、知的財産権がビジネス経営にとって重要であり、それによって他社との訴訟の可能性を減らせるし、同時に研究成果を保護して競争力を維持でき、製品とサービスの価値を高められると考えている。

 

(図2) 知的財産に関する紛争が発生した企業の比率の経年変化

2.    社内配置/予算の管理

知的財産活動について、現在、94%の台湾企業が知的財産管理に経費を割り当てており、このレポートの調査以来最も高い結果となった。同時に、84%の企業が社内で知的財産に関するトレーニングを行っていることから、企業が知的財産管理を益々重要視していることがわかる。そして、調査によると84%の企業が専任担当者を配置している。注目に値するのは、過去の調査結果では、企業の知的財産管理事務は知的財産権を取得することに集中していたが、現在では、訴訟管理や市場と競合分析やライセンス契約と取引の処理や知的財産に関するトレーニングなど細微な管理事務が大幅に増加した点である。管理事務が過去よりも複雑になったことは、企業の知的財産管理が専門化、多様化の傾向にあることを意味している。

 

(図3) 企業内部におけるトレーニングの提供状況

 

3.    知的財産出願の現状と経験

知的財産権の所有状況とグローバル戦略の調査結果によると、商標権を所有する企業は全体の91%を占め、特許権を所有する企業は全体の79%を占め、ターゲット地域に既に進出している企業は全体の86%に達している。但し、所有している知的財産権を商品化し、他社とライセンス契約を結んでいる企業は僅か26%であった。その要因は、36%の企業がライセンス契約より独占的に使用する方が良いと考えていることにある。他に、ライセンシー探しが困難であること、そしてライセンス契約に対しての認識が低くて逆にリスクを招くかもしれないことも要因として挙げられた。

 

(図4)知的財産権のライセンス契約を結んでいる企業の比率の経年変化

4.    今後の発展ニーズと困難点

全体的に見ると、今回アンケートを受けた企業は、知的財産権の中で営業秘密を、重要性が最も高いが同時に難易度が最も高い知的財産権であると考えている。営業秘密をすでに所有している企業では、営業秘密の管理に疑問を持っている企業が76%に達し、特に、営業秘密が漏えいされた場合に自分たちの権利と利益を保護できなくなることを懸念している。また、専門的な人材の不足、そして知的財産管理業務が知的財産法務部署に限られて全面的に管理できないという2つの問題は、過去の調査では企業にとって困難でも重要でもないと考えられていたが、今回の調査では、両方とも重要性と難易度が高い問題になっている。その為、アンケートを受けた企業は、今後政府から知的財産管理戦略のガイダンスと助成金、営業秘密のタイムスタンプ、産学研究の連携、そして重点技術又は分野への支援が強化されることを望んでいる。

今回の報告書の分析結果を総合的に見ると、海外進出を軸にし、高まる知的財産リスクに直面している台湾企業にとって、知的財産の管理は避けられない問題であるだけではなく、企業経営レベルの重要課題になっている。とはいえ、現在の台湾企業は、知的財産に対する考え方と実際に行った知的財産活動の状況から見ると、意欲はあっても実力が伴っていないように思える。その原因は専門家の不足により環境がまだ整っていないか、又は政府からの支援を待っていることにあるのかもしれないが、実は企業の経営、研究開発、知的財産を等しく重要視して、知的財産を戦略的に開発し、研究開発と知的財産の相互補完が実現できれば、リスクをチャンスに変え、無形資産から企業価値を生み出すことができる。

 

 


[2] 財団法人資訊工業策進会科技法律研究所知的財産センター台湾国内企業知的財産管理に関する実態調査報告書20222月)[https://www.tips.org.tw/body.asp?sno=BGCHDC#460]

[3] 金融監督管理委員会証券先物局、2021122日までの統計データ、

[https://www.sfb.gov.tw/ch/home.jsp?id=1010&parentpath=0%2C4%2C109]

 

 

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