台湾 知的財産局が「専利法一部条文改正草案」を公告
台湾知的財産局は2020年12月30日に「専利法一部条文改正草案」(以下、改正草案という。専利とは特許、実用新案、意匠の総称である)を公告した。国際基準に合わせるために、日本、米国、ドイツ等の国の立法例を参考にして、現在の台湾の専利救済制度を大幅に変更する。この改正草案では、160条を超える現行の専利法のうち、33条を改正、30条を新設、10条を削除し、2012年以来最大の改正となる。今後、知的財産局は改正草案の内容について各業界に向けて公聴会を開催する予定である。
今回の改正草案のポイントは以下のとおりである。
Ø 独立した専利救済案件の専門審議部門の設置
知的財産局は、外国の専利救済制度を参考にして専利救済案件を専門的に審議する「複審及び紛争審議会」を設置すると同時にその関連規定を制定する。「複審及び紛争審議会」は、その名のとおり、以下の複審案件及び紛争案件について専属的な管轄権を有する。
複審案:
一、拒絶査定を不服とする拒絶査定複審案
二、特許権存続期間の延長出願に係る延長複審案
三、訂正案
四、その他専利に関する申請及びその他の手続きに関する処分を不服とする複審案
紛争案件:
一、特許権に対する無効審判案件(強制実施許諾案件においてこれを準用する)
二、特許権存続期間の延長に対する無効審判案件
前述の拒絶査定を不服とする拒絶査定の救済方式は「複審」となり、現行の「再審査」手続きに取って代わる。また、複審案は、知的財産局の「複審及び紛争審議会」に係属するが、訴願のレベルと同等であり、既に審査段階を過ぎているため、現行では訴願段階で分割出願することができないことを考慮して、複審審議期間中は分割出願することができないこととした。
Ø 審議制度及び手続きの強化
専利救済案件における手続保障を強化し、審議手続きをより周到で厳格なものにするため、複審案又は紛争案件の審議は、3人又は5人の合議体で行い、且つ口頭審議、予備手続、審議計画のメカニズム、審議中の適度な心証開示、審議の中間決定及び審議終結通知などを導入する。
このほかに日本、韓国及び中国の立法例を参考にし、前置審査制度を複審案に導入する。拒絶査定に対して補正を伴う複審が請求された場合、原審査官1名を指定し前置審査を行わせ、拒絶理由が解消された場合は、直ちに特許査定とする。一部の案件で合議審査を免除することで、審査効率が向上し且つ適度な案件のスクリーニングという目的が達成されることが期待される。
Ø 専利救済手続きの改革
現行の救済制度において、知的財産局が行政処分の性質を有する査定を下した後、それを不服とする場合、出願人、権利者又は無効審判の請求人は、まず訴願法に基づき知的財産局の直接の上位機関である経済部に対し訴願を提出しなければならない。訴願の結果に更に不服がある場合、行政訴訟法に基づき行政訴訟を提起することができる。救済効率を向上させるために、今回の改正草案では、複審及び紛争審議会の審議結果に不服がある場合は、訴願手続きを免除し、専利法の規定に基づき直接、知的財産及び商業裁判所に対し、複審案や紛争案件に係る訴訟を提起することができるとし、そしてこの2種類の訴訟では、行政訴訟手続きを適用せず、民事訴訟手続きを適用することとした。また、知的財産及び商業裁判所の下した判決に対する上訴審では、弁護士強制制度を採用する。
Ø 真の専利権の帰属に関する救済手段
現行の規定によると、専利権の権利帰属に関する紛争について、当事者は、直接普通裁判所に対し訴訟を提起し勝訴の確定判決を得た後、知的財産局に権利者の名義変更登録を行うことができるほか、専利法に基づき知的財産局に対し無効審判を請求して、真の権利者でない者が所有する権利を取り消した後、同一の発明で出願を行って権利者となることもできる。しかしながら、後者の場合、知的財産局は知的財産権を主管する行政機関にすぎず、司法調査の権限を有している裁判所のように、法定の証拠方法及び証拠調べ手続きによって権利帰属の事実を確認できないため、困難に遭遇することが多かった。これについて、今回の改正草案では、本質的に私権の紛争である専利権の帰属の問題については、無効審判請求事由から削除し、当事者の紛争解決を、民事訴訟ルートのみに限定した。
Ø 意匠のグレースピリオドを12か月に緩和
意匠出願を奨励するために、今回の改正草案では、意匠の新規性及び創作性喪失例外のグレースピリオドが、6ヶ月から特許及び実用新案と同じ12ヶ月に延長される。
Ø 経過措置
旧法の適用範囲は、新法施行前に進行中又は審決済みの再審査案件、新法施行前に審決済み又は処分済みの案件である。
新法の適用範囲は、新法施行前にまだ審決されていない案件、訴願又は行政訴訟で取消され知的財産局に差し戻された案件である。 |