中国 華為がサムスンを
特許侵害で訴えた裁判 一審判決で勝訴
【出典:国家知識産権局、中国知識産権報】
2018年1月11日、深圳知的財産権法廷は、華為技術有限会社(以下「華為」という)がサムスン(中国)投資有限会社(以下「サムスン」という)による特許侵害を主張した2つの事件について華為の訴えを認める判決を下し、2つの事件とも華為が勝訴した。
この2件の特許訴訟は原告が2016年5月に深圳市中級人民法院でサムスンなどの被告に対して提起したものであり、1年の訴訟攻防を経て、華為が2件とも勝訴判決を獲得した。
【争点】
1. 標準必須特許のライセンス協議で合意に達しなかった場合、責任はどちらにあるのか?
2. 技術問題:サムスンは上記2件の特許侵害を構成するか?
【法院の認定】
一、双方のクロスライセンス交渉では、サムスンに明らかに責任があり、華為にはない。
1. 手続き面:サムスンは交渉過程で、標準と非標準の特許を一括交渉せず、仲裁も受け入れず、サムスンには交渉を成立させる意思がなく、悪意を持って交渉を長引かせたことは、FRAND原則に違反している。華為は交渉過程において、いくつか問題はあったものの、即時にそれをはっきりさせており、FRAND原則に違反しておらず、明らかな責任はない。
2. 実体面:サムスンは明らかにFRAND原則に違反し、華為はFRAND原則に違反していない。サムスンと華為は世界の標準必須特許において相当な実力を有しており、しかも華為の中国における標準必須特許の実力はサムスンより強いにもかかわらず、サムスンが華為に要求したロイヤリティは華為がサムスンに要求した金額の三倍であり、それぞれの標準必須特許の実際の実力と乖離している。
二、技術の調査と認定の問題において、技術の比較をした結果、サムスンは華為の2つの係争特許を実施し、しかも、サムスンの抗弁理由は全て成立しない。
【法院の判決】
サムスンなどの被告の特許侵害の停止を命じる。ただし、裁判後、協議が成立した場合、または原告が同意した場合、被告が継続して特許を実施する可能性を保留する。さらに事件受理費1,000人民元を共同で負担する。
【分析】
サムスンは、2016年6月21日に上記の2件の係争特許について同時に中国復審委員会に対し無効審判請求を提出した。復審委員会は2017年1月12日に係争特許201010137731.2号の特許権有効を維持する審決を下した。サムスンが復審委員会に提起した2件の無効審判請求がいずれも認められず、訴訟において華為の特許侵害主張に直面しなければならなくなったことが、最終的に敗北した要因の一つである。
もう一つの重要なポイントは、深圳知識産権法廷が華為の差止請求を認めて、サムスンに対し特許侵害行為を停止するよう命じたことである。標準必須特許の特許権者が法院から差止命令を獲得するのは容易なことではない。ライセンス交渉担当者は、全ての交渉プロセスにおいて、世界のFRAND原則の最新の動向、実務上の運用について把握していなければ、逆効果になる可能性がある。したがって、この訴訟は参考として重要な価値がある。
また、深圳知識産権法廷はサムスン敗訴の判決を下したが、賠償金はなかった。これは標準特許の特殊性を考慮し、双方に合意に向け交渉を継続するよう促すためであるが、交渉をすることは華為にとって有利である。というのは、法院は、サムスンが交渉に消極的すぎであることには責任があり、また、華為とサムスンの通信分野における標準特許の実力は拮抗していて、中国では華為の実力がサムスンより勝っているにもかかわらず、サムスンの華為に対するロイヤリティが、華為のサムスンに対するロイヤリティの三倍というのは、華為には値段を上げる余地があると考えたからである。
このほか、法院は、例えば、3G端末の累積ロイヤリティ料率を5%、4G端末の累積ロイヤリティ料率を6%-8%とし、特許を保有する会社は全特許における自社の割合に応じて料金を徴収することができるとした、携帯電話業界における標準必須特許の料金徴収基準を示した。例えば、華為が、3G通信規格における特許の割合が5%で、4G通信規格における特許の割合が10%である場合、この割合でロイヤリティを徴収することができる。法廷は、また、4G特許の料金は、4G端末の販売価格に応じてではなく、4Gの貢献として、4G端末と3G端末の差額を料金率の基礎とすべきであると判断した。これは、中国の法院が標準必須特許のロイヤリティをどのように徴収するかを初めて明確に示したケースであり、本件は参考として重要な価値がある。 |